北陸の小京都、天空の城の麓、大野市で出会ったもの

リフレッシュ! 極上旅

豊かな自然や、歴史に彩られた独特の風景が楽しみな福井県の奥越前エリアで、「北陸の小京都」と呼ばれているのが、旧城下町の大野市です。名水が流れるスポットや400年も続いている朝市、そして、おいしい地酒。数時間の散策で、心をくすぐられるものに何度も出会いました。

地図を片手に城下町の酒蔵ホッピング!

山の上にお城が立ち、その麓に端正な城下町の風情が色濃く残る大野市。「北陸の小京都」の呼び名にふさわしく、しっとりとした雰囲気が漂っています。

標高約249メートルの亀山の上に立つ越前大野城は、街のシンボル

地図を広げると、街はみごとに碁盤の目状。お寺が集まる寺町通り、旧家が公開されている本町通り、灯籠が並ぶ石灯籠通りなど、通り名を読むだけでも興味が誘われます。まずは、和菓子屋や醤油しょうゆ屋などが並ぶ七間しちけん通りを歩いてみました。

この通りは、400年以上続く朝市で知られる場所。春分の日から大みそかまでの午前中(7~11時頃)は、農家のおばちゃんたちが自慢の農産物を出品する青空直売市でにぎわっています。

私は午後に訪れたため、朝市を見ることができず、ちょっと残念。でも、七間通りには、揚げたての里いもコロッケを売るお店や昔ながらの醤油屋さんもあって、ぶらりと散策するだけで楽しめます。

風情ある七間通りは、お土産探しも楽しいスポット。名物の里いもコロッケを食べながら、七間通りをぶらぶら

昔の日本家屋のようなどっしりとした外観が目をひくのは、「南部酒造場」。「花垣」という名酒で知られている、創醸百年の酒蔵です。歴史はありますが、酒蔵に併設する直営店は美しい酒器が飾られ、カジュアルで明るい雰囲気。人気の定番商品をいくつか試飲できるほか、利き酒師であるスタッフのアドバイスも受けられます。

酒器が飾られた店内は、ぶらっと入りやすい雰囲気。「花垣」は有名な銘柄

フルーティーで飲みやすい「特撰とくせん大吟醸」はメロン、すっきりと辛口の「純米大吟醸」はバナナに味が例えられていて、日本酒の知識に乏しい私も楽しく飲み比べることができました。試飲して迷いながら私がお土産に選んだのは、この蔵元でのみ販売している「純米原酒 茶木屋」。ワインのようなラベルに一目ぼれして購入したのですが、お米のうまみが凝縮していて、料理とともにおいしく味わいました。

街を散策していると、ふたたび風情ある店構えの酒蔵を発見! 正善町通りにある「源平酒造」は、創業が江戸時代の1673年まで遡る老舗中の老舗です。こちらは、料理の味わいが引き立つ日本酒が人気。キレのよい淡麗辛口のお酒には、根強いファンがいます。

江戸時代創業の「源平酒造」。たたずまいも雰囲気あり

このほかにも、街には老舗の酒蔵があります。酒蔵が多い理由は、酒づくりに欠かせない名水に恵まれているから。市内には、かつて殿様の御用水として使われていた「御清水おしょうず」や「本願清水」をはじめ、湧水地が点在しています。

古くはお殿様のご用水として使われていたことから、殿様清水とも呼ばれている「御清水」

散策中、「御清水」に立ち寄ると、名水をくみ上げにくる街の人でにぎわっていました。夏に冷たく冬に温かいという地下水は、さっぱりとした自然の口当たり。日々の暮らしのなかに名水があるなんて、うらやましい環境です。

天空の城と武家屋敷、歴史ロマンあふれる美しい街

城下町らしさを感じさせるのが、街中に残されている武家屋敷です。現在、2軒が一般公開されています。

「旧内山家」は、内山家の屋敷を解体して、復元・保存している建物。名所だからという理由でなんとなく訪れてみると、幕末の興味深い歴史に触れることができました。

内山家の七郎右衛門良休は、大野藩運営の商店「大野屋」を全国各地に開設し、巨額の利益をもたらした人。当時、多額の借金を負っていた大野藩の財政再建に大きな功績を果たした立役者です。今でいうショップの全国チェーン展開を成功させた手腕に感心させられますが、武士でありながら畑違いのビジネスに着手してしまう潔さとチャレンジ精神がかっこいい。歴史は、こうした話にひかれます。

旧内山家。母屋と渡り廊下でつながる数寄屋風書院の離れなどを見学できる。庭もみごと

「旧田村家」は、大野藩の家老を務めた田村又左衛門の屋敷を解体・復元した旧跡。近世の情景を残す武家屋敷はとても貴重なのだそうです。私が訪れた時は、期間限定で300個以上の風車が壁に飾られ、風情を醸し出していました。真っ赤な風車は手裏剣のようで、武家屋敷の雰囲気によく合います。

夏は風車が飾られ、SNSで話題に

ところで、街の至るところから見えるものといえば、中心部の亀山にそびえる「越前大野城」。織田信長のもとで活躍した武将、金森長近が1576年頃に建てたお城です。現在の天守は1968年に再建されたもので、内部には歴代城主の遺品が展示されています。

このお城を何より有名にしているのが、雲海に包まれ、浮かび上がる類いまれな光景。その姿から、「天空の城」とも呼ばれています。雲海の下がすぐ城下町だなんて、なんとも幻想的。雲海は、10月から4月末頃までの早朝、前日の湿度が高いことや風が弱いことなど、いくつかの気象条件を満たしたときにのみ出現します。

大野の冬の風物詩、「結の故郷 越前おおの冬物語」。冬の街を幻想的に染める

冬は雪で亀山が閉山することもあり、お城も12月1日から3月31日の間は冬季休館となりますが、冬季ならではの楽しみもあります。それは、お城をバックに花火を上げる「結の故郷 越前おおの冬物語」。今年も2月1日(土)と2日(日)に開催され、2日は冬季休業中の七間朝市も特別出店するのだそうです。

結の故郷 越前おおの冬物語

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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