難関突破の神社と白山信仰の古刹…北陸・小松でパワーアップ!

リフレッシュ! 極上旅

石川県小松市は、自然景観やドラマチックな歴史物語を持つ古刹こさつや、多彩な食文化などに恵まれた街。古都・金沢の陰に隠れがちですが、関東方面からのアクセスもよく、個性的な施設や場所が点在しています。まずは、小松空港からすぐ近くにある、二つのパワースポットを訪ねました。

歌舞伎にも語り継がれる、安宅住吉神社

兄の源頼朝に追われて落ちのびる義経と、家来の弁慶ら一行。山伏にふんして安宅あたかの関所を通る際、関守である富樫の厳しい尋問にあった。弁慶は、その危機を乗り切るべく、あり合わせの巻物を広げ、即興で「勧進帳かんじんちょう」を読み上げる。なおも疑いがかけられると、弁慶は主君である義経を打ち据えた。主従の姿に感動した関守の富樫は、二人の素性を知りつつも、温情で通行を許可する――。

歌舞伎十八番の一つ、「勧進帳」のストーリー。その舞台となった場所が、小松市の「安宅住吉すみよし神社」社殿のすぐ裏にあります。

歌舞伎で有名な「勧進帳」由来の地(写真:伏見早織)

この神社こそ、全国唯一、難関突破の御神徳を授かることができるパワースポット。義経一行が関所を越えたことから、難関を乗り越えるときの守り神として親しまれています。歴史は古く、奈良時代の782(天応2)年の創建と伝わり、江戸時代の1647年(天保4)に、現在の地へ遷座されました。

安宅住吉神社は小松空港から車で約12分とアクセスも至便。巫女さんによる無料のガイド(祈祷や行事があれば対応できないこともあり)にもひきこまれる(写真:伏見早織)

多くの人が求めるのが、難関突破のお守りと絵馬。社殿横には、全国から訪れた多くの人が願いを書いた絵馬が鈴なりになっていました。私も絵馬を購入し、キャリアアップを目指して転職活動中の友人にプレゼント。友人は見事に難関を突破、現在、新しい職場で活躍しています。

義経と弁慶、富樫の3人の銅像

この神社を訪れる楽しみは、難関突破のご利益だけではありません。境内に残されている「勧進帳」ゆかりの宝物ほうもつも必見です。そのひとつが、弁慶が読み上げたと言われる勧進帳の写し。安宅の関での出来事から2年後の1189(文治5)年に東大寺の僧が書いたもので、歌舞伎の舞台で使われる勧進帳の基になっているのだそうです。

境内に立つ弁慶の像(左)と、弁慶が植えたと伝わる松(写真:伏見早織)

明治時代に奉納された押し絵に描かれていたのは、山伏に扮した義経と弁慶一行が子どもたちに扇を与え、安宅の関を避ける道がないか尋ねているシーン。間近で見ると、物語がアリアリと描かれていて迫力がありました(本殿内の撮影は禁止されています)。

自然崇拝を感じながら古刹を散策

小松の旅で訪ねたもうひとつの寺社が、717年創建の「那谷なた寺」。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で一つ星の認定を受けている古刹です。境内に入ると、なんともいえない神々しい空気! お寺というだけではなく、自然が身近にぐっと迫る環境そのものが、気持ちを引き締めてくれるのです。

自然智を象徴する自然景観、「奇岩遊仙境」。奇岩山の中腹には五穀豊穣と豊かな自然を願う稲荷神社がまつられている

もともとは白山を崇拝し、自然に敬意をはらう山岳信仰の場所だったこの地に、泰澄たいちょう法師がお寺を開創したのは717年のこと。以降、白山信仰の拠点として大きな力を持っていたこの寺は、幾度となく政権闘争に巻き込まれてきました。

南北朝時代の14世紀前半には、北朝に味方し、敵の南軍と戦い荒廃。さらに16世紀後半には、戦国大名・柴田勝家に占拠され、全焼してしまいました。江戸時代に入ってから、加賀前田家三代の前田利常に発見されて再建、みごとに復興したという、激動の歴史を歩んでいます。約650年前に焼失したお寺の遺跡が境内の池から発見されたというエピソードも、歴史あるお寺ならではです。

「大悲閣」と呼ばれる本殿。岩壁に寄って建てられている。中に入るとある母親の胎内を象徴した洞窟では、「胎内くぐり」を体験

もちろん、その歩みは単に歴史に翻弄ほんろうされただけではありません。荒廃していたにもかかわらず、鷹狩りに来ていたお殿様に偶然発見されたことや、明治時代の廃仏毀釈はいぶつきしゃく(明治維新の神仏分離によって起きた、仏教を排斥し寺などを壊す運動)の際も難を逃れたことは、奇跡的とも言われています。

仏塔の文化財の中で最も小さいと言われる那谷寺の三重塔。小さいからこそ意匠を間近に感じられる

そんな那谷寺は、昔から人々が自然に感謝し、手を合わせてきた場所。木造の本殿「大悲閣」は巨大な岩山の洞窟とつながり、国名勝指定の「奇岩遊仙境」は階段を上りながら岩山を体感することができます。境内を散策するにつれ、「自然そのものが生きとし生けるものにつながり、その中で人は生かされている」という「自然智」の教えを実感することができました。参拝を終えた後の、不思議と温かな気持ちは、今でも忘れられません。

北陸最古の温泉で歴史ロマンにどっぷりひたる

この旅で宿泊したのは、北陸最古の温泉といわれる粟津温泉です。この地にある旅館「法師」は、那谷寺を創建した泰澄が718年に開湯した宿。1300年の歴史を持ち、当主は46代目という老舗中の老舗です。

北陸最古の温泉地、粟津温泉郷にある、1300年の歴史を誇る旅館「法師」
四季折々の美しさを見せる庭園。ここでお抹茶をいただいて、ほっこり

名だたる著名人も訪れた歴史のあるお宿だけに、敷居が高く感じていたのですが、訪れてみると、とても温かな空間でした。ゲスト向けに館内歴史ツアー(不定期)も開催され、随所に刻まれた歴史を、スタッフのユニークな解説付きでたどることができます。

1300年にわたる歴史を知ることができる館内歴史ツアー

貴賓室「延命閣」は、明治時代に宮大工の手によって建てられた、総ひのき、御殿造りの建物。皇族や各界の名士が宿泊した施設は、眺めるだけでもその意匠を楽しむことができました。

国の登録有形文化財にも指定されている貴賓室

名湯でゆっくりとくつろぎ、翌朝に向かった那谷寺までは、車で10分弱。ちなみに、お宿の前にそびえる樹齢約400年の杉は、前田利常公が那谷寺参詣のための広い道を開き、両側に杉並木を整備した際の名残だとも言われています。明治時代に粟津が大火事に見舞われた際、この杉の前で火が止まったという逸話もあり、今も粟津温泉の守り神として大切にされています。

法師

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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