霧島でヘルシー旅! ウエルネスを発信する話題のスポットへ

リフレッシュ! 極上旅

効能あらたかな温泉や豊かな自然が魅力の鹿児島県霧島市。ここは、発酵食品や薬膳など、ヘルシーなカルチャーを発信しているユニークな街でもあります。女性が気になるウエルネスなスポットを訪ねました。体にやさしくヘルシーな旅のお土産にも大満足です!

壺の中で育まれるナチュラルな黒酢

青空の下、桜島と錦江湾を背景にずらりと並ぶ5万2000個ものつぼ。壮大な眺めに思わず目がくぎ付けになってしまったのは、霧島名物の「壺畑」です。黒酢発祥の地として知られる霧島には数軒の醸造所があり、それぞれが、黒酢を製造しています。

「坂元のくろず」が育まれる壺畑。黒酢の原料は蒸し米と米麹、地下水のみ。壺ひとつひとつが、黒酢を造る小さな工場のようなもの

そのひとつである「坂元醸造」は、創業が江戸後期の1800年頃までさかのぼる老舗。壺の中では、200年以上にわたって黒酢が育まれています。訪れた日も、晩秋の清々しい空気と柔らかな太陽の中で、壺畑が圧倒的な存在感を醸し出していました。

原料は、蒸し米と米麹こうじ、地下水の三つだけ。屋外に置いた壺の中にこれら原料を入れると、発酵、熟成という過程をたどり、1年以上かけてまろやかでコクのある黒酢が完成します。薩摩焼の壺はなんと、江戸時代から使われているもの。壺の内壁には黒酢造りに欠かせない微生物がすみついているといいます。シンプルな製造工程ですが、微生物がハイテク工場にはかなわない絶妙な働きをしているのかもしれません。

壺の中でじっくりと発酵・熟成され、こはく色に変化した黒酢はとてもまろやか。醸造技師が毎日、一つずつ壺を見回り、ときにはかくはん作業もしながら、絶妙なタイミングで収穫時期を決める

黒酢作りに欠かせないのが、この地の温暖な気候と、醸造技師の経験と勘。すべての壺の中での発酵の状況や熟成の状態は決して一律ではないため、日々、醸造技師が手作業で発酵・熟成の過程を見守っています。かすかな発酵の音に耳を傾け、壺の中の液面色や味や香りを確かめる。畑で見た醸造技師の方々のそんな真剣な姿は、まるで子どもを育てているかのようでした。

「黒酢=ヘルシー」というイメージこそありましたが、生まれる環境がこれほど自然に寄り添ったものだったとは。ちなみに、ひとつの壺の中で糖化、アルコール発酵、酢酸発酵が自然に進行する壺造り製法は世界でも類がなく、なぜこのようなことが起こるのか、まだ学術的に解明されてない部分も多いのだそうです。そんな話を聞くと、壺畑の風景がいっそう美しく見えます。

「坂元のくろず「壺畑」情報館&レストラン」内にある、壺畑を一望するレストラン。「坂元のくろず」をふんだんに使った体にやさしい中華料理でランチを満喫

壺畑を見学した後は、畑を一望する敷地内のレストランで黒酢を使った料理のランチを。優しい味わいをかみしめながら、おいしいものはやっぱり、人の経験や自然が作るのだなあと実感しました。

コスメ探しの気分で楽しめるモダンな薬膳ショップ

天降あもり川沿いに宿が点々と立つ風情と泉質の良さに魅力を感じ、宿泊した霧島の妙見温泉。名湯を満喫した後は、近くにある薬膳ラボ&ショップ、「薬膳小町」に立ち寄ってみました。奥霧島の自然に抱かれたショップは、薬膳のイメージを覆す、シンプルモダンな外観。店内に入ると、耳に心地いいBGMと薬膳素材を焙煎ばいせんする優しい香りに迎えられました。

2019年6月にオープンした「薬膳小町」。薬膳素材を焙煎し、販売している

スパイスやハーブなど、薬膳素材と、それらを使ったお茶や食品がずらりと並ぶ店内は、海外のオーガニックコスメショップを思わせる雰囲気。これは気分が上がります! 取り扱っている食材の多くは、自社農園・無農薬で作ったもの。オーナーである国際薬膳師の永峯真一さんが、すべての商品の製造と調合を行っています。

モダンな店内には薬膳素材がそろう。少量で購入できて便利

うかがったときは、永峯さんが素材の焙煎を行っている真っ最中でした。ガラスの仕切りの向こうに調合・焙煎所が見える様子は、まるでレストランのオープンキッチンを眺めているようなワクワク感があります。薬膳というと敷居が高く感じますが、ここで作られる商品は親しみやすいものばかり。コーヒー豆の焙煎士でもある永峯さんが独自の技術で焙煎を行うことで、お茶は飲みやすく仕上げ、薬味はうまみを引き出し、新しい商品の開発を行っているのだそうです。

体を温めるもの、疲れをとるものなど、目的別にずらりと並ぶ薬膳酒(左)。サンザシや陳皮など薬膳素材を使ってお茶を作ることもできる(右・1人500円)

「薬膳は難しいイメージがあるかもしれませんが、昔から人々が生活に取り入れてきたものなんですよ。湯治場として愛されてきたこの場所で、温泉につかって、薬膳食材を食べて、体の中からケアしてほしいですね」と永峯さん。たしかに、私は寒い日にクローブやシナモンを入れたホットワインを飲むのが大好きですが、それも薬膳的な考え方なのかもしれません。

自宅で気軽に薬膳カレーや火鍋が作れる便利なキット(左)や、薬膳茶の素材(右)はお土産にもぴったり

薬膳をより身近に感じてもらおうと、店内には薬膳体験コーナーが設けられています。その日の体調に合わせて薬膳素材を選び、グラムを量り、ティーバッグにして持ち帰ることができる薬膳茶は、旅のお土産にもぴったりです。

まるで麹のテーマパーク! 老舗種麹屋のユニークな施設

旅の最後に訪れたのは、鹿児島空港のすぐ前にある「麹の里 バレルバレープラハ&GEN」です。味噌みそ醤油しょうゆなど発酵食品を意識的に取り入れている私にとって、発酵に使われている「麹」はとても気になる存在。ここは100年以上続く老舗の種麹屋が展開する施設と聞いて、ぜひ訪れてみたいと思ったのです。

「麹の里 バレルバレープラハ&GEN」は、見て、学んで、買って、飲んで食べて楽しめるスポット

訪ねてみると、そこはまさに麹のテーマパーク! 焼酎や甘酒の工場、チェコ産ホップを使った地ビールが飲めるブルワリーやチェコ料理のレストラン、麹で育てた豚肉を使った和食レストランまで、広大な敷地にいくつもの施設が点在しています。

一見すると関連性がないように感じる各施設を結び付けているのは、麹がもたらす「発酵」というキーワード。ビールも発酵食品のひとつ、そしてビールといえばチェコが本場というわけです。

なかでも私がかれたのは、焼酎工場「麹蔵」の展示コーナーでした。麹を作るために必要な「種麹」の基本的なことや機能性をテンポよく解説・展示しているだけでなく、麹の持つ知られざる可能性が紹介され、知的好奇心が刺激されます。どれも現在進行中の実験に基づいたもので、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。

ショップでは食品からコスメまで、さまざまな麹関連の商品を販売

ちなみに、この施設を展開する種麹屋「河内源一郎商店」の初代、河内源一郎さんが発見した画期的な麹菌は「カワチ菌」という学術名がつけられ、国内外の醸造や発酵食品に使われているのだそう。現在もその研究は脈々と受け継がれ、農学博士でもある3代目、山元正博さんが麹の可能性を追い求めています。

麹由来の天然成分を使ったフェイスマスクや基礎化粧品も販売(左)。和食レストランでランチ。黒麹を与え自社養豚場で育てた豚肉は、まろやかでしっとりした食感

その結果は実証され、サプリメントやドリンク、コスメなどに商品化されています。美肌にいいとされる発酵食品を使ったコスメだけに効果も期待できそう。思わず真剣にコスメを探していたところ、偶然にも、山元博士ご本人にお目にかかることができました。もうすぐ70歳という博士は、お肌がしっとりとしてつやつや、若々しいジェントルマン! そのお姿は、なにより説得力がありました。

坂元のくろず「壺畑」情報館&レストラン
薬膳小町
麹の里 バレルバレープラハ&GEN

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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