神話に彩られた霧島のスポットでパワーを充電!

リフレッシュ! 極上旅

その昔、神様が天上界から望んでいた「霧に煙る海に浮かぶ島」が土地名の由来といわれる霧島(鹿児島県霧島市)。神話が残る一帯には、全国的に有名な霧島神宮をはじめ、多くの神社が点在しています。霧島旅は、そんな神秘的で美しいパワースポットを巡るのも楽しみのひとつ。もちろん、近隣のおいしいものも欠かせません!

日本の歴史が始まったと伝えられる「天孫降臨」の地

老杉が茂る参道を抜けると、やがて絢爛けんらんな装飾と朱塗りがまぶしい本殿が視界に飛び込んできました。ここ霧島神宮は、「天孫降臨」の神話に登場する神様、瓊瓊杵尊ににぎのみことまつる神社です。

「天孫降臨」というのは、天上界から神が地上に降り立ったとされる神話のひとつ。神々がこの世を治めていたという時代、天照大神あまてらすおおみかみの命令で、孫の瓊瓊杵尊が、数人の神様と道案内の猿田彦命さるたひこのみこととともに高千穂峰たかちほのみねに降り立ち、ここから日本の歴史が始まったと伝えられています。

1年間を通して参拝客でにぎわう霧島神宮。坂本龍馬と妻のお龍が新婚旅行で訪れたという。創建は6世紀。現在の社殿は1715年に建立された

そんな神話発祥の地に、6世紀に創建された霧島神宮は、霧島山の噴火による焼失と再建を繰り返し、今から500年以上前に現在の場所へと移りました。今は南九州屈指のパワースポットとして知られ、年間を通して多くの参拝客が訪れています。

まずは、社殿の前庭にある樹齢約800年のご神木にお参り。新婚旅行でここを訪れた坂本竜馬も、姉の乙女に送った手紙のなかで、このご神木と対面して感動したことをつづっています。その堂々たる姿に圧倒されながら頭上に目をやると、なにやら不思議な形をした木のコブが。もちろん、人が手を加えたものではありませんが、その奇妙な形が手を合わせている神官に見えることから、有名になっているそうです。

高さ約37m、南九州のスギの先祖ともいわれている樹齢約800年のご神木。木のコブが烏帽子をかぶり、手を合わせる神官のように見える

社殿は、柱、はりなどすべてが朱漆塗りで、豪華絢爛なたたずまい。緑豊かな山を背景に、拝殿と幣殿、本殿が階段状に立っているため、全体が立体的に見え、それがまた美しさを際立たせています。くしくも、私が訪れた11月下旬は紅葉真っ盛り。赤く染まった葉と鮮やかな朱色の本殿、背後に広がる山の緑が、みごとなコントラストを描いていました。

駐車場近くにある池は、ほんのり硫黄の香り。池底には、湯の花がたまり、落ち葉と美しいコントラストを描く

朝一番で霧島神宮を参拝した後に立ち寄ったのは、パティスリー「ア・ラ・ミニッツ」。開店時間の11時に行くと、すでに長い行列ができていました。多くの人のお目当ては、注文を受けてからクリームを詰めるシュークリーム。開店からわずか1、2時間で完売してしまうこともある人気商品です。

霧島神宮の帰りに立ち寄りたいパティスリー「ア・ラ・ミニッツ」。定番はシュークリーム。バニラやティラミス、赤い果実とクリームチーズなどのほか、霧島茶の抹茶など、季節限定商品も人気

オーナーの深野浩伸さんは、パリのレストランでミシュラン一つ星を獲得した実力派パティシエ。帰国後の2017年、自然豊かな霧島高千穂牧場のすぐそばに、このお店を開きました。今はスイーツ作りから販売まで、すべて一人で切り盛りしています。

「ア・ラ・ミニッツ」のオーナー、深野浩伸さん。ミシュラン一つ星を獲得したパティシエはとても気さく

小さなお店は数人が入ればいっぱいになってしまいますが、裏側に山を見渡す屋外スペースがあって、緑を眺めながら、できたてのシュークリームを食べることができます。さっそく、買ったばかりのシュークリームを口にしてみると、サクサクの生地のなかにクリームがたっぷり。とくに、「赤い果実とクリームチーズのシュークリーム」は、カシスやフランボワーズの甘酸っぱさが口いっぱいに広がって、とても上品な味でした。

「ア・ラ・ミニッツ」を後にして車を走らせている途中、ふと目に飛び込んだのが、東京でもよく見かける焼酎「明るい農村」の看板です。私も時々飲んでいる銘柄ですが、霧島の地酒とは知りませんでした。

霧島町蒸留所のすぐ横を流れるのは、霧島連山がもたらす清らかな水(左)。昔ながらのカメつぼ仕込み。焼酎の元となるもろみがゆっくりと発酵し、やわらかな風味を育む

そこで、蔵元の「霧島町蒸留所」に立ち寄り、酒蔵見学をさせてもらうことに(通常、個人客は予約なしで見学可)。酒蔵は高千穂峰を一望し、傍らに霧島川が流れる気持ちのいい場所にあります。

店内では、いくつかの銘柄を試飲。ほかの地では、なかなかお目にかかれないレアな焼酎も

創業は1911年(明治44年)。当時から受け継がれるカメつぼによる仕込みと、地下105mからみ上げる仕込み水にこだわり、焼酎を作り続けています。見学ができたおかげで、ふだん飲んでいる焼酎のおいしさの理由を知ることができました。

歴史のドラマや裏話が垣間見られる神社

霧島神宮のほかにも、霧島には2019年のうちに訪れておきたい神社がありました。それは、19年の干支えと、イノシシにまつわる「和氣わけ神社」です。なぜイノシシかといえば、奈良時代末期から平安時代初期にかけて官僚として活躍した、和氣清麻呂わけのきよまろのこんな逸話が由来となっています。

和氣神社に向かう途中、「霧島峠茶屋」でひとやすみ。名物は、「龍馬ラテ」と「西郷どんラテ」

――769年、巨大な権力をもつ僧侶、道鏡の野望による危機から国家を救った清麻呂は、道鏡の怒りを買い、都を追われるはめに。さらに刺客から命まで狙われたが、突然現れた白いイノシシの群れに救われた。後に道鏡は左遷され、清麻呂はみごと、都の職務に復帰。新京建設を手がけたほか、自宅に学校を設けるなど、人々の生活向上に尽力した――。

まるで連続ドラマを思わせるようなストーリーの主人公、清麻呂公を祀る神社は今、学問の神、建築の神・交通安全の神として慕われています。拝殿の前で参拝客を迎えるのは、狛犬こまいぬならぬ“狛イノシシ”。その姿がかわいらしく、りんとしたなかにもほのぼのとした空気を感じ、心を和ませてくれました。

狛犬ならぬ狛イノシシに迎えられる和氣神社。神代からの歴史を誇る鹿児島神宮は緑が多く、いるだけで癒やされる場所

霧島の寺社めぐりで最後に訪れたのは、「鹿児島神宮」。大隅国(現在の鹿児島県東部、種子島、屋久島を含む一帯)の一の宮でもある格式高い神社です。1756年に現在の建物に整えられました。

古事記に登場する「海幸彦・山幸彦」にゆかりがあるとされ、壮麗な雰囲気にあふれています。なかでも目を奪われたのが、拝殿の天井に描かれた240枚の格子状の植物画。ただ美しいというだけではありません。そこには、メロンやバナナ、カボチャなど、建築当時の日本にはなかった外国の植物が描かれているのです。

本殿の天井に描かれた植物画は必見

鎖国時代に建てられた建物になぜ?? その理由は、薩摩藩が琉球を通して貿易を行っていたからだと言い伝えられています。そんな歴史の裏話が垣間見られるのも興味深く、江戸時代の繊細なボタニカルアートに見入ってしまいました。

霧島神宮
ア・ラ・ミニッツ
霧島町蒸留所
和氣神社
鹿児島神宮

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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