天草の西海岸で出会った、手作りのオーガニック椿油

リフレッシュ! 極上旅

広大な面積を持つ熊本・天草は、地域によってさまざまな景色や食、アクティビティーなどの楽しみがあります。エリア北東部の大矢野島(上天草市)からスタートした天草の旅の後半は、南西部の下島(天草市)へ移動。まずは、椿つばきの原生林が息づく西海岸を目指しました。出会ったのは、絵に書いたような絶景と、地元の人たちがコツコツと作る素晴らしい特産品。ここまで足を運ばなければ知ることができないものでした。

いるだけでパワーをもらえそう! 大海原に映える椿の原生林

目指したのは、天草下島の西海岸に位置する西平にしびら椿公園。ここには、約2万本もの椿が自生しています。その原生林の向こうは、大海原と水平線。以前に見たその風景が忘れられず、いつかまたゆっくり訪れてみようと思っていた場所です。

ヤブ椿の原生林を抜けると、「大ヶ瀬・小ヶ瀬」と呼ばれる岩礁がある海を一望。ここは夕日の観賞ポイントでもある

天草は野生のイルカが泳ぐ美しい海で知られていますが、有明海、八代海、東シナ海と三つの海に囲まれているだけに、その風景もさまざま。なかでも、この西平椿公園は、森と海と空のコントラストが絶妙です。

一帯に自生しているのは、樹齢100年を優に超えるヤブ椿の大木。緑がうっそうと生い茂る春から秋にかけても、花が咲き乱れる冬も、素晴らしい景色を見られます。訪れた9月上旬は、椿油の原料となる実の収穫シーズン。まんまるの実がたくさん、立派な木になっていました。

椿油といえば、伊豆大島産や長崎の五島列島産が有名ですが、ここ天草・西平でも28年前から「天草椿油」が作られています。自生の椿の木のみ、除草剤も農薬もいっさい使わない、オーガニック。大木に登って実を摘むところから、採種、搾油、濾過ろか、不純物の除去、油の瓶詰めに至るまで、すべて手作業だといいます。しかも、10人ほどの少数精鋭で。

「西平カメリアクラブ」で完成するのは、年間550キロ・グラムの椿油。摘んだ実の約23%しか油にならない

椿油作りに携わるのは、地元の人たちが結成した「西平カメリアクラブ」。椿を望む公園の一角にある小さな工房におじゃますると、おかあさんたちが、熟した実から種を取り出しているところでした。

「私が子どもの頃は、秋には椿の実がどの家庭の縁側にも山積みされとってね、夜になると、家族みんなでこうやって種ば取ったものですよ」と、一人の方が教えてくれました。そのお話に感心しながらも、私の目が思わずくぎ付けになったのは、その方の黒々とした美しい髪です。おばあちゃん世代なのに黒髪は艶々として、白髪がとても少ないのです。聞けば、髪を染めたことは一度もないのだそう。これはもしや、椿油のおかげ?

実から種を取るのは、地域のおかあさんの役割。彼女たちの艶のある黒髪は、長年椿油を愛用しているおかげかも?

「昔から椿油はずっと使っとるよ。子どもの頃には、油の搾りかすばシャンプー代わりに使っとったねえ」と、おかあさん。

加えて、西平カメリアクラブ会長の白迫修一さんが「この辺りの人はみんな元気で長生きですよ。海風に含まれるミネラルのおかげで野菜は栄養豊富だし、イセエビもアワビも果物も豊富に取れる。そして、椿は椿油という特産品となって私たちの生活を助け、花は心を癒やしてくれますけんね」と、教えてくださいました。

椿の原生林のなかにあるアコウの大木。まるで巨岩をつかむようにそびえるその姿から、近年は話題のスポットに

「ここは都会のようにモノが豊富にあるわけではないけれど」と前置きしながら、「汗だくで実を摘むのも、毎年こうして集まって作業をするのも、とても幸せなこと」と白迫さん。椿油は地域の人々をつなぐ宝物でもあり、この美しい椿の森は、地域とともにあるのだなあと実感します。

この公園で椿の花が咲くのは、1月~3月初旬。天草の花見といえば、桜だけではなく椿も定番で、毎年3月には、西平椿公園で「あったか天草椿まつり」が開催されています。椿が満開となった頃、またここを訪れたいなあ。

体験型アロマ工房で、オーガニックの椿油を使ったアロマクラフトづくり

「天草椿油」の原料となる椿は自生しているもので、除草剤も農薬もいっさい使われていません。正真正銘のこのオーガニック椿油は、ヘアケアやボディーマッサージ用に使えるだけでなく、オリーブオイル感覚で料理に使えて便利。私は体のマッサージに愛用していますが、肌なじみが良くてべたつかず、取材で歩き疲れた日のお風呂上がりに重宝しています。

そんな丁寧に手仕事で作られる天草椿油をベースにしたアロマクラフト作りを体験できるのが、西平と同じ西海岸にある「ハイビーチ・リラックス」。セラピストのMihoさんが手がける、体験型のアロマ工房です。

天草椿油は50ミリ・リットル入りで900円(税別)とリーズナブル。「大江天主堂」近くの土産物店や物産館などで販売(容量や価格は変更する可能性あり)

お店が位置するのは、ウミガメが産卵に訪れる美しい白鶴浜のすぐそば。心地よい潮風を感じる環境のなかで、天草産のハーブを使った蒸留体験やアロマクラフト体験を楽しむことができます。

まずはハーブティーでリラックス。この日は、目の疲れに効果があるといわれるバタフライピーのお茶に、マヌカハニーとレモン、ジンジャー、アガベシロップをブレンド

私も天草椿油を使ったバーム作りにトライしてみました。椿油以外の材料は、ニホンミツバチが分泌する貴重な「蜜蝋みつろう」と、天草ヒノキの精油のみと、とてもシンプル。「コスメって、こんなに少ない材料で出来るんだ!」と驚かされます。

ヒノキの枝葉を蒸留した精油は、ヒノキの木の精油とはまた違った、柑橘類のようなさわやかな香り。リラックス効果があるヒノキの精油に、保湿力抜群の天草椿油を加えて、極上のオーガニック・アロマバームが完成しました。

アロマバーム作りは20分ほど。アロマクラフト体験ではほかに、ルームスプレーや化粧水、乳液、マッサージオイル、マウスウォッシュ、柔軟剤など、さまざまなものを作ることができる
香りづけに使う精油は、好みのものを選べる。このときに使ったのは、天草産ヒノキの精油

使用できるところは、顔、リップ、ボディー、ネイルと万能です。消費期限はないものの、保存料を使っていないので、なるべく早く使うのがベターとのこと。ちなみに、私は普段も持ち歩き、旅先にも持参しているので、あっという間に使い切りそうです。あれこれとコスメをそろえなくても、このバームひとつで全身を保湿できるから、とても便利。なにより、肌に直接つけるものだから、ナチュラルな素材は安心です。

「ハイビーチ・リラックス」の手作りルームスプレーは、それぞれにコンセプトあり

天草のいろいろな場所に出かけては、ハーブなどの素材を見つけ、精油づくりを楽しんでいるというMihoさん。東京に生まれ育ち、天草にひかれて移住してきました。以来、自然のなかに身を置くことの大切さを実感しているといいます。

彼女が天草の自然をイメージして作ったルームスプレーやフレグランスは、それぞれにコンセプトがあり、いろいろと試してみたくなります。私が愛用しているルームスプレー「1968」は、天草ヒノキが植林された50年ほど前から現在までのヒストリーをイメージしたもの。シュッとひと吹きするたびに、天草の澄んだ森の空気や、美しい海を思い出しています。

ハイビーチ・リラックス

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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