アパートメントに宿泊、洞窟温泉で癒やし…自由気ままな天草の旅

リフレッシュ! 極上旅

熊本・天草エリアの北東部に位置する上天草市からスタートした旅。天草には魅力的なスポットはたくさんありますが、前半は予定を詰め込み過ぎず、ゆったり、のんびりと過ごすことにしました。宿泊先は、別荘感覚の宿泊施設。洞窟のなかにお湯が湧く秘湯に出かけたり、海沿いのカフェレストランで夕日を眺めながらディナーを食べたり。旅先で思いのままに過ごす時間は、日ごろの疲れを忘れさせてくれます。

のんびりくつろげる、アパートメントタイプの宿泊施設

午前中はレンタサイクルで遊び、午後はのんびりと海を見て過ごすことに決めた旅の前半。今回、私が拠点に選んだのは、ホテルでも旅館でもなく、ゲストハウス(主にタオルやアメニティー、食事を提供しない素泊まり宿)ともまた違う、アパートメントタイプの宿泊施設でした。

海をイメージした爽やかなブルーの建物は、築50年の古い店舗をリノベーションしたもの。インターフォンや最新型の電子錠が完備されていて、セキュリティー面でも安心

「シークルーズハウス・ナビオ」は、シングルルームから3DKまで、四つの客室からなる滞在型の宿泊施設。ベッドルームやリビングルームのほか、キッチン(シングルルームを除く)が完備されています。

旅館のように食事の時間を気にする必要がなく、ゲストルームのようにトイレやバスルームが共有であることもなく、ホテルよりもリーズナブルで自炊もできるアパートメントホテルは、気ままに過ごしたいときにはぴったりの場所です。

機能面に加え、私がここを選んだ一番の理由は、ロケーションでした。すぐ目の前に合津あいづ港があり、海を間近に感じられるのは大きな魅力です。合津港は大規模ではありませんが、小さな漁船が停泊する牧歌的な風景に、旅情がかきたてられます。

目の前にあるのは、小さな港。向こうに見える赤い橋は天草五橋(あまくさごきょう)のうちのひとつ、5号橋(松島橋)

レンタカーを使わない旅だけに、アクセスも重要です。その点、熊本市中心部や、世界遺産がある天草下島と結ぶ「快速バスあまくさ号」のバス停から近いこと、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが徒歩圏内にあるのも、ここを選ぶ決め手となりました。

おなかがすいたら適当に食べればいい、眠くなったら潮風を感じながら昼寝しちゃえばいい、目が覚めたら海辺を散策すればいい……。そんなノープランの私を快適に迎えてくれたのは、とてもリラックスした空間でした。

広々としたリビング、使い勝手のいいキッチンや大きな鏡のある洗面台、レインシャワー(頭上から垂直に水が落下するシャワー)のあるバスルーム……と、設備は申し分なし。シンプルながらもセンスのいい家具を配した室内は、肩ひじをはることなく、普段着感覚でくつろぐことができます。

ベッドルーム2室(ツインベッド、ダブルベッド)とダイニングキッチンからなる5人定員の客室「セレナ」(写真左)と「マリソル」(同右)。このほか、7人定員の「エルミラ」と、上天草エリアでは貴重なシングルルームの「オリビア」がある。インテリアは客室によってさまざま

到着した日は、天候によるフライトの変更もあり、ちょっと疲れていたので、早めに就寝。アクセスがよく交通量が多い場所にあったので、「夜間はうるさいかな?」と少し心配していたのですが、防音ガラスと上質なベッドのおかげで、朝までぐっすりと眠ることができました。

ベッドルームが独立しているので、グループ旅行や三世代旅行でもプライバシーを守ることができる。上質なリネン類とベッドで、朝までぐっすり

翌朝、目が覚めて窓の外を見ると、晴れ渡る空と青い海! あまりにも気持ちのいい光景に誘われて、寝起き早々、合津港を散策してみました。帰りにご近所をぶらりと歩いてみると、魚屋さんや昭和レトロなスナックがあって、なかなかいい雰囲気。チェックアウト(~11時)は、客室の中にカードキーを置き、電話一本で済ませられるので、ギリギリまで時間を有効に使うことができます。朝食の時間に縛られず、思いのままに過ごせるからこそ、発見の多い朝散歩でした。

これこそパワースポット! 数々の逸話を秘めた大洞窟の秘湯へ

天草は知る人ぞ知る名湯の島。「シークルーズハウス・ナビオ」から車で20分弱のところにも、雰囲気よし、泉質よし、ロケーションよしの温泉があります。

「大洞窟の宿 湯楽亭」は、温泉好きをうならせる2種類の源泉を持つ温泉旅館。厳しい基準をクリアした「日本秘湯を守る会」の会員宿ですが、日帰り入浴も可能です。

住宅街を離れた海のすぐそばにぽつんと建つ宿に到着すると、玄関先でくつろいでいたニャンコが、「こちらにいらっしゃい」とばかりに、館内へと導いてくれました。看板猫が案内(?)するというアプローチが、いかにも秘湯らしくて気分が盛り上がります。

看板猫のゆなちゃんに導かれて宿の中へ。骨董アートを飾った館内は落ち着いた雰囲気

源泉かけ流しの温泉は、「白湯」と呼ばれる無色透明の単純泉と、「赤湯」と呼ばれる含二酸化炭素ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉の二つ。これらは泉質が大きく異なります。

泉質のよさもさることながら、誕生にまつわるエピソードが神秘的でひかれます。それは昭和45年(1970年)のある寒い冬の日、初代館主が見たこんな夢が始まりでした。

――庭の何もなかったところに、なぜか湯けむりを上げながら川が流れています。おかしいなと思って近づいてみると、見知らぬおじいさんがいて、その川で顔を洗い始めました。その川に手を入れてみると、なんとお湯。その瞬間、おじいさんは白蛇になり、川の流れに消えてしまいました――

その数年後、ふとしたことから地下水のボーリングに取りかかることになった初代は、この夢を思い出し、心配する周囲に反対されながらも温泉の掘削を始めたのだそうです。そして1年余りがたった頃、夢とまったく同じように、何もなかったところに温泉が湧き出したのだとか。

この温泉こそ、昭和52年(1977年)に開いた「白湯」。何の科学的データもないのに、夢を信じて実践に移すなんて、なんてエキサイティングでロマンチック! そんな初代の孫に当たる3代目のご主人は、子どものときに見た、みんなで懸命に掘削している様子を今も覚えているといいます。

弱アルカリ性で滑らかな白湯は飲泉も可能。湯上がり後のお肌はしっとり、すべすべに。入浴は、まずは赤湯で毛穴の汚れを取り、しっかり温まった後に白湯で保湿するのがおすすめなのだそう

もうひとつの「赤湯」は、平成8年(1996年)に湧出した温泉です。この赤湯にも、奇跡といわれるストーリーがありました。2016年に起きた熊本地震の影響でお湯が出なくなり、源泉を再掘削したところ、約2年後にみごと湧出。しかも、再湧出した赤湯には新たな成分(二酸化炭素)が加わり、日本最高クラスの炭酸水といわれるほど濃度も高くなっていたのです。この新赤湯は、家族総出で手掘りしたという、雰囲気たっぷりの洞窟風呂で味わえます。

赤湯と呼ばれる理由は、湧出当時は赤茶の黄金色をしていたため。湯面に白く浮くのは成分が豊富なお湯の証拠である湯の華
再湧出した赤湯は、雰囲気たっぷりの洞窟風呂でも楽しめる

初代の夢の話といい、赤湯が再湧出した話といい、強運を持つこちらの温泉。ゆっくり浸ればそのご利益がいただけそうな気がします。

「シークルーズハウス・ナビオ」に泊まり、温泉は「大洞窟の宿 湯楽亭」へ。食事は、自炊をするのも楽しいし、歩いて約20分の複合施設「リゾラテラス天草」にある全席オーシャンビューのカフェレストラン「プレートカフェ リゾラ」を利用するのも便利です。

「リゾラテラス天草」のカフェレストラン「プレートカフェ リゾラ」でいただくのは天草食材を多用した料理。盛り付けも美しく、女性に人気。ほかに、特産品がそろうマーケットやベーカリー、バーもある
「リゾラテラス天草」の目の前は海。ぜひサンセットタイムに訪れてみて

「プレートカフェ リゾラ」は、天草の風土を存分に味わえる場所。柑橘かんきつの一種「天草晩柑」100%のジュースや、天草産真鯛まだいのポワレなど、地元の特産品を使ったものが充実しています。そしてここは、天草では知られた夕日のスポット。オレンジ色に染まる天草4号橋(前島橋)と海を眺めながら、のんびりと夕食をいただくのは、至福のひとときでした。

シークルーズハウス・ナビオ
大洞窟の宿 湯楽亭
リゾラテラス天草

【オススメの関連記事】
リフレッシュ! 極上旅
エメラルドブルーに輝く海を独り占め! 天草で絶景サイクリング

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

JOURNAL HOUSE