水田見渡す宿で朝ヨガ、鶴岡の原風景に浸る

リフレッシュ! 極上旅

2泊3日で羽越を巡る旅の宿泊地は、山形県鶴岡市。ここは、最初の目的地である新潟県村上市と、次の目的地の山形県酒田市の間にあって旅のプランが立てやすいというだけでなく、魅力的なお宿があるのです。田んぼの真ん中にある宿と、海を一望できる宿、異なる環境で、鶴岡の風景をゆったりと楽しみました。

水田の中のホテルで心地よく眠り、朝ヨガ体験!

青々とした稲の葉の香りと、満々と水をたたえる田んぼ。鶴岡を訪れた8月下旬、日本有数の米どころらしい風景の中に、「ショウナイホテル スイデンテラス」はありました。鏡のように空を映す一面の水田に現れた建物は、存在感たっぷり。それでいて、景観をそこねることなく、しっくりと周辺に溶け込んでいます。

設計は、建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を受賞した坂 茂氏によるもの

目を引く建物に対して、「ここが入り口なの?」と思うほど控えめなエントランスを入ると、柔らかな木の香りに迎えられました。吹き抜けの階段を上り、フロントやライブラリーなどがある2階へ。一面の窓に水田がキラキラと輝く空間はとても開放的です。

木と紙管しかんを多用した独特の建物は、世界的な建築家・ばんしげる氏による設計。以前、台湾で「台南市美術館2号館」と「紙教堂」という、坂さんが手がけた素晴らしい建物に出会い、すっかり見入ってしまったことがあります。ここでもまた、水田に調和した美しいたたずまいと意匠に、目を奪われてしまいました。

ライブラリーには、旅や自然などをテーマにした本が約1000冊そろう。ここで水田を眺めながら読むもよし、部屋でゆっくり読むもよし
木と紙管がふんだんに使われたインテリア。エコロジカルなのは見た目だけではなく、地下水を利用した水冷ヒートポンプエアコンを導入し、使い終わった地下水は、噴水のようなオブジェから湧き出し、水路を通って周辺の水盤に流れ、風景を作り出しています

建物は、フロントがある共用棟を中心に3棟の宿泊棟がつながる構造で、ほとんどが木造です。木の香りに包まれながら向かった客室は、シンプルながらも洗練された雰囲気。紙管を使用したヘッドボートやいすなど、独特なインテリアは目を楽しませてくれるだけではなく、機能面でも使いやすく、快適に過ごすことができました。

私がここで何より楽しみにしていたのは、部屋の中から眺める水田風景です。部屋から水田のサンセットが見られると楽しみにしていたのですが、この日はあいにくの雨。でも、雨が田んぼに叩きつける風景はハッとするほど美しく、見とれてしまうほどでした。秋には、黄金色の稲穂が広がる風景を楽しめます。

シンプルな内装ながら、紙管を使用したヘッドボートやいすがあるのも、目を楽しませてくれる

カエルの鳴き声を聞きながら眠りについた翌朝は、田んぼを見渡すテラスで朝ヨガを体験。呼吸を整え、ストレッチを約50分行います。日頃、ジムで行われる早朝のヨガクラスでは「時間が長いなあ」と思うことが多いのですが、ここの朝ヨガは気持ちがよかったせいか、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

上野昌代さんによる朝ヨガは10月まで開催。詳しくは公式ホームページで確認を

「出羽三山はパワースポット。このパワーを感じてヨガをしてみましょう」と指導してくれたのは、ヨガインストラクターの上野昌代さん。出羽三山で修験道を実践し、女性山伏としても活動している上野さんからも、パワーをもらえたような気がします(朝ヨガは不定期開催)。

目の前に海と水平線を眺める、和風旅館

鶴岡には、一面の水田風景もあれば、ダイナミックな日本海の風景もあります。そして、歴史ある温泉郷もあり。この街で滞在したもうひとつのお宿は、湯野浜温泉の「游水亭ゆうすいてい いさごや」、海が目の前に広がる老舗の旅館です。

お香の上品な香りに導かれて、ラウンジでほっとひと息

部屋に入ると、窓の外には海が! 海水浴シーズンを終えた晩夏のビーチと浅瀬の海は、とても穏やかで心が和みます。視線の先には水平線があります。窓際のソファからはもちろんのこと、畳に座ってくつろいだ姿勢でも水平線を眺めることができました。和室で足を崩して、ぼーっと海を眺めるなんて、なかなかぜいたくな時間です。

客室でのんびりと日本海を眺める、ぜいたくな時間

ひと息ついたら、温泉でリフレッシュ。眼下に海を眺める展望風呂や、プライベート感のある露天風呂は、さらさらとした泉質で、たまりにたまっていた夏の疲れを一気に癒やしてくれました。さすが、1000年も前から、厳寒の海で冷えた漁師の体を温めてきた名湯だけあります。

檜の露天風呂からも、海を一望

湯野浜温泉に泊まる楽しみといえば、夕日。ここは「日本の夕陽百選」にも選ばれている夕景スポットなのです。海に面した客室から絶景を眺めることもできますが、私は貸し切りのお風呂「ハイプライベート・スパ 漣」を予約。ひのき風呂とリビングがある個室で音楽を聴きながら、サンセットと温泉を独り占めしました。

サンセットを独り占めできる「ハイプライベート・スパ 漣」

湯上がりの楽しみは、料理です。ダイニングには、昭和の伝説的な美食家、北大路魯山人が手がけた器を飾るギャラリースペースもあります。さらに、魯山人の写し器(著作権認定済み)で庄内の食材を使った料理をいただくことができるのが「魯水の膳」プラン。目と舌で、存分に鶴岡の味覚を楽しむことができます。

この日のメニューは、アイナメやハタなど地魚の刺し身の盛り合わせ、岩ガキのわさびバター焼き、アワビの踊り焼きなど、天然の海の幸がたくさん。A4ランク以上の山形牛を使ったしゃぶしゃぶに至るまで、すべてがメインディッシュのような存在感でした。余白を生かした料理の盛り付けも、アート作品のようです。

お造りや岩ガキを、魯山人の写し器で満喫

「食材が素晴らしいから、あまり手をかけなくてもおいしくなるんですよ」と話す料理長は、自ら生産者のところへ足を運ぶことも多いのだそう。鶴岡の食の豊かさは、人と自然が共栄しているからこそ味わい深いのだと実感しました。

ちなみに、10月の海の幸の旬は、オバコサワラ。そして、秋の東北の味覚、芋煮のシーズンです。地域によっていろいろな調理法がありますが、鶴岡は里芋と豚と味噌を使う「庄内バーション」が定番なのだそう。晩夏の旬をいただいたばかりなのに、秋の鶴岡の味覚が気になってしまいました。

ユニークなクラゲの展示が大人気の「鶴岡市立加茂水族館」。見たことのない多種多様のクラゲたちに、思わず童心に帰って見入ってしまう

「游水亭 いさごや」で料理と温泉と絶景を満喫した翌朝は、近くにある「鶴岡市立加茂水族館」へ。「クラゲドリーム館」の愛称で知られるここは、クラゲの展示種類数でギネス世界記録にも認定されたことのある水族館です。初めてみるユニークな姿のクラゲに、童心に帰って楽しむことができました。

ショウナイホテル スイデンテラス
游水亭 いさごや
鶴岡市立加茂水族館
日本海きらきら羽越観光圏

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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