マカオのホテルで楽しめる、貴重なアートコレクション

リフレッシュ! 極上旅

 この十数年で、カジノタウンからエンターテインメント都市へとイメージを一新したマカオ。さらに近年は、アート旋風も巻き起こっています。街をあげてのアートイベントもさることながら、注目したいのは、ホテルのパブリックスペースがアート空間となっていること。館内には、世界でも有数のコレクションが展示されています。

パブリックスペースで芸術を満喫

 かつては干潟だった場所を埋め立てた一帯に、ホテルやカジノ、ショッピングモール、シアターなどが一体化した「IR(統合型リゾート)」が林立しているコタイと呼ばれるエリア。世界に名だたるデラックスホテルがずらりと建ち並ぶその景色は、近未来的で壮観です。

 その光景はまばゆいばかりですが、私がプライベートでこのエリアを訪れることは、なかなかありませんでした。なぜなら、ポルトガルの風情が残る街中からはやや離れているし、人の息吹が感じられるオールドタウンに愛着があるから。でも、「IRでアート鑑賞」という楽しみができた近頃は、コタイを訪れるのも楽しみの一つとなっています。

タイパの展望台から眺めたコタイ。5つ星ホテルは13軒、それ以上の5つ星デラックスが3軒ある

 IRで先陣を切ってアートを手がけたのは、「ウィン・パレス」です。エントランスを入り、まず目にするのは、巨大なステンレス彫刻。可憐なチューリップがモチーフながら、キラキラと輝くその存在感に圧倒されてしまいます。作者は、ニューヨークを拠点に活躍するジェフ・クーンズ。今年5月にニューヨークで行われたクリスティーズのオークションでは、別の作品が約100億円(存命のアーティスト作品としては史上最高額!)で落札された、注目のアーティストです。

「Turips(作:ジェフ・クーンズ)」。一見すると軽そうだが、2.5トンものステンレススティールで作られている

 館内へと歩を進めると、至るところでアートを見つけます。廊下に置かれていたのは、世界に二つしかないといわれる中国・清朝時代の花瓶。こんなふうに、金箔陶芸の傑作が惜しげもなく飾られていることに驚かされます。さすが、「ウィン・パレス」のオーナーであるスティーブン・ウィン氏は世界指折りの現代美術品コレクターというだけあります。

「巴克勒公爵花瓶」。世界に2つしかない清朝の壺。もうひとつは、イギリスのバッキンガム宮殿にあり、エリザベス女王が所有しているのだそう

 世界に数個しかない美術品もあれば、優しい気分になれる作品も。花をモチーフにした空間デザインが施されている「ウィン・パレス」には、生花やプリザーブドフラワーを使ったアートがあちらこちらに飾られています。

花のアートは、フラワーデザイナーのプレストン・ベイリーによるもの。専任のフローリストが6週間に1度、花を入れ替えている

 エントランスロビーから廊下、レストラン……どこにいても花が目に入らない空間はないほど。エレガントな花の香りに包まれる館内は、カジノホテルのイメージとは一線を画す優雅さにあふれています。

北京の紫禁城よりすごかった! MGMコタイの美術品

 美術館さながらの作品が点在しているのは、「MGMコタイ」の館内。ガラスと鉄でできた天井下に広がる広大な空間には、世界最大の常設屋内LEDスクリーンがあり、世界中から集めたデジタルアートを披露しています。ここでひときわ存在感を放っているのは、中国人のコンテンポラリーアーティストによる作品です。中国の歴史を歴代の通貨で表した作品は、かなりインパクトがあります。

「千年(作:王開方)」。作品が置かれたロビーは建設費用3700万米ドル以上、高さ37メートル、広さはテニスコート30面に相当

 VIPゲスト用のエメラルドロビーを飾るのは、清朝時代に紫禁城(旧王宮)で使われていた絨毯じゅうたん。中国歴代最高の名君とされる康熙帝こうきてい(1654-1722年)の治世に織られた絹の絨毯には、龍や鳳凰、花が表現され、それぞれに意味が込められています。世界に300枚あるうちの28枚がここに集結しているのだそう。北京の紫禁城でも見られなかった至宝を、マカオのホテルのロビーで、しかもこれほどの至近距離で鑑賞できるなんて、思ってもいませんでした。

北京の紫禁城に飾られていた絨毯のうち、28枚が「MGMコタイ」のエメラルドロビーに展示されている

 「MGMコタイ」には、マカオをモチーフにしたアートも展示されています。近寄ってじっくりと見入ってしまったのは、マカオの象徴的な風景をコラージュで表現した作品です。一見すると絵画ですが、よく見ると、中国寺院の「媽閣廟(マアコッミュウ)」を表した作品には経典が、「聖ポール天主堂跡」を表した作品には賛美歌の楽譜が張り付けられています。作者の薛松(シュエ・ソン)は、燃やした紙や灰を使い、“破壊から再生へと輪を描く人生”を表現している、個性的なアーティストです。

「澳門八景系列(作:薛松)」。有名なマカオの景勝地が作品に

 「MGMコタイ」内のスターバックスの壁には、コーヒー豆の産地を表した作品が飾られていました。大航海時代の海運国を思わせる絵柄が、マカオらしさたっぷり。見慣れたコーヒーチェーン店とは思えないほどです。

 これらの作品は、誰でも気軽に鑑賞することができるし、より詳しく知りたければ、作品の解説に添えられたQRコードで情報を読み取ることも可能です。また、ホテルの宿泊ゲストには、英語による無料のア―トツアー(1日4回。開始15分前までにコンシェルジェで申し込み。所要時間40~60分)も開催。専任のスタッフによる作品解説を受けることができます。

「スターバックスMGMコタイ店」にて。スターバックス・リザーブ・コーヒー・エクスペリエンス・バーもあり。店舗はパブリックスペースに開けているので、通りがかりに作品を見ることもできる

 こうしたアートを見つけながら広い館内を歩くのも、なかなか楽しいもの。そしてなにより、敷地が広いのでいい運動になります。夏の日中は、涼みながらホテルでアートを鑑賞するのもいいかもしれません。

ウィン・パレスのアートコレクション
MGMコタイのアートコレクション
マカオ政府観光局

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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