鳥取は食の都!? ご当地で楽しむヘルシーなソウルフード

リフレッシュ! 極上旅

 鳥取の旅で驚かされたのは、食のおいしさ。有名な松葉がにや大山だいせんどりのほかにも、たくさんのおいしいものに出会えます。昔から家庭で楽しまれている食材には、女性にとってうれしいヘルシーなものがたくさん。鳥取は、食の都でした。

お殿様のアイデアに感服! 低カロリー高たんぱくの豆腐ちくわ

 鳥取の食材といえば、カニや和牛がおいしそう……と、漠然としたイメージしか持っていなかった私がすっかりはまったのが、豆腐ちくわ。その名の通り、原料の多くに豆腐を使ったちくわです。

木綿豆腐と魚肉のすり身を混ぜ合わせ、蒸し上げて作る「豆腐ちくわ」

 全国的にはあまり知られていないものの、鳥取市など県東部ではメジャーなこの食材。食卓に並んだり、おやつとして食べたり、お酒のつまみにしたりと、ごく身近な食べ物だそうです。昨今のヘルシー志向を受けて生まれたものだと思いきや、豆腐ちくわが生まれたのは約150年も前の、江戸時代末期のことでした。

 その頃はまだ漁港が開発されておらず、藩の財政も厳しかったことから、魚はぜいたくな食べ物だったといいます。一方で、名水に恵まれた土地柄、多くの豆腐店がありました。そこで、当時の鳥取藩主だった池田公が、城下の庶民に「魚の代わりに豆腐を食べよ!」と質素な食生活を推奨。魚のすり身よりも豆腐を多く使った、ユニークで斬新な郷土食が誕生したのです。

 以来、日常はもちろん、神社のお祭りや結婚式などにも欠かせない食材となった豆腐ちくわ。今でも食卓をにぎわせているのだから、これぞ本物のソウルフードです。

 そんなご当地食を作り続けているのが、創業は1865年(慶応元年)にさかのぼる「ちむら」。工場兼直売所の「とうふちくわの里」に入ると、いろいろなテイストの豆腐ちくわが並んでいました。

「ちむら」は老舗ながらアイデアは斬新! 味の決め手は、自社工場で作られる鳥取県産大豆100パーセントの豆腐

「豆腐7、魚のすり身3。この割合は江戸時代から変わりません。これが一番おいしくなるバランスなんです」と6代目の千村大輔さん。

 食べてみると、食感はふんわりと柔らかで、豆腐の味がしっかり。一般的なちくわと比べると少し大きいのですが、おなかにもたれず、あっという間に、3本をたいらげてしまいました。

 レモンにネギ、生姜しょうが、鳥取和牛、カレーと、いろいろなテイストがあるなかで、私が一番気に入ったのは、トマトとチーズ味。ワインにも合うし、オリーブオイルやバルサミコ酢をつけると、極上のおつまみになります。

店舗にはイートインコーナーも。豆乳を使ったジェラートは、さっぱりとしたおいしさ

 これほど地元で愛される豆腐ちくわが市外に出回らなかった理由は、賞味期限の短さにあります。豆腐も魚のすり身も日持ちしにくく、冷蔵で3~4日しかもたないうえ、冷凍すると風味が落ちてしまうのです。そんな儚(はかな)さもまた、ご当地食の魅力。この味を求めて旅したいなあと思わせます。

高濃度ラドンが湧く温泉地で食べる、イソフラボン2倍の納豆ごはん

 三朝みささ温泉で見つけたのは、三朝神倉かんのくら大豆。一般的な大豆に比べ、イソフラボンの含有率が1.5~2倍も多く含まれているといいます。

 サプリメントよりも食で栄養をとりたい私にとって、大豆食品は欠かせない健康食。スペシャルな大豆ならぜひ食べてみたい! と、三朝温泉でのランチは「ふるさと健康むら」でこの大豆を加工した納豆をいただくことに。

三朝神倉大豆で作られた納豆「神のつぶ」、豆腐「神のはな」、豆乳「神のしずく」は人気のブランド。三朝温泉の「ふるさと健康むら」で食べられる納豆かけごはん定食「神の食卓」(左)。500円とリーズナブルなうえに、納豆食べ放題

 大粒の納豆は、ふっくらとして大豆のうま味が凝縮したようなお味です。一緒にいただいた鳥取県産のお米「きぬむすめ」は、もっちりとしていて、納豆によく合います。ご飯を入れた三朝の白狼はくろう焼の器もぬくもりが感じられ、ランチをさらにおいしくしてくれました。

高濃度ラドンが空気中にも拡散する三朝温泉。ヘルシーな大豆料理が、さらにおいしく感じられる

 この三朝神倉大豆は、修行の地としても知られる三徳山のふもとにある神倉でのみ栽培されています。「神様がいる場所」という由来をもつ神倉で育った大豆を、世界屈指の高濃度ラドンが湧く三朝温泉で食べる……。なんだか、とても体にいいことをしているような気分にもなれました。

断崖絶壁に立つ投入堂(なげいれどう)で知られる三徳山。その裏に三朝神倉大豆が育つ集落がある

 もちろん、鳥取は海産物も魅力です。初めて食べて感動してしまったのが、クロザコエビ。鳥取をはじめとする山陰では、「モサエビ」と呼ばれています。秋から初夏にかけて取れるものですが、有名なカニとシーズンが重なっているため、隠れた存在になっているのだとか。

ぷりぷりとした食感と、ぐっとくる甘み。鮮度が落ちるのが早く、昔は漁師が船上で食べるものだったのだとか((c)Tottori Pref.)

 鮮度が落ちるのが早いため、県外への流通が難しく、現地でなければ食べられないこともあって、“幻のエビ”とも呼ばれています。あの弾力、あのうま味。これほどモノにあふれた東京でも食べることができません。また味わいに、鳥取に行かなければと思っています。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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