寒いから美しい! 冬だけの絶景を探して、ひがし北海道へ

リフレッシュ! 極上旅

写真:武居台三

 「そこにしかない風景」は、「旅に出たい!」という気持ちを駆り立てます。この冬に訪ねたのは、北海道の東部「ひがし北海道」。厳冬の限られた時期、天候条件を満たしたときにだけ現れるという絶景を求めて、マイナス18度の海岸沿いを歩きました。

厳しい寒さと、母なる大河が生み出す自然のアート

 雄大な自然とおいしい食事、やさしい人々が大好きで、何度か旅している、ひがし北海道。梅雨のない爽やかな夏や紅葉に染まる秋。季節それぞれの景色に魅了されつつも、冬に訪れることはありませんでした。寒いのは苦手だし、雪にも慣れていないし、冬は比較的温暖な場所へと旅することが多いからです。

 寒さに弱い私がこの冬初めて、それも一番寒い時期に、ひがし北海道の旅を決行! 私を駆り立てたのは、「厳冬期だけ見ることができる絶景」でした。

 訪れたのは、十勝川の河口に位置する豊頃町。漁業が盛んな街ですが、厳冬期は氷が織りなす「ジュエリーアイス」と呼ばれる自然現象を眺めようと、多くの人が訪れます。

まだ暗いうちにホテルを出発。大津海岸に到着すると、ちょうど日の出の時間

 ジュエリーアイスは、十勝川の水が氷結したもの。これが太平洋に流れ出た後、波にもまれているうちに角が取れ、透き通ったクリスタルのような氷になるのです。流氷とちょっと似ていますが、流氷は氷の塊が層になって押し寄せたもので白い色をしているのに対して、ジュエリーアイスは透明。そのため、太陽の光をキラキラと反射し、時間帯によって、さまざまな表情を見せてくれます。

神秘的な光を放つ「ジュエリーアイス」。朝日が昇るとまた色を変える(写真:武居台三)

 私もその光景を一目見ようと、前日のうちに北海道入りし、まだ暗いうちにホテルを出発しました。拠点となる帯広市から目指す大津海岸までは、約1時間のドライブです。日の出と同時に到着すると、氷の塊が太陽に反射してキラキラと輝き始めていました。

厳しい寒さで海岸にもつららが(左)。河口には大きな氷の塊

 ジュエリーアイスの美しさもさることながら、私が感動したのは、朝日を浴びながらもうもうと立ち上がる海面の湯気。これは、風が弱く、海水温と気温の差が9~15度ある日の、日の出ごろに発生する「けあらし」と呼ばれる自然現象です。昼前には消えてしまうので、見ることができた私はとてもラッキーでした。その呼び名から嵐を想像してしまいますが、「けあらしが出ると、昼はよく晴れるんだよ」と、地元の方が教えてくださいました。

海面にもうもうと湯気が立ち込める「けあらし」も幻想的

 ジュエリーアイスが見られる時期は、およそ1月中旬から2月下旬頃まで。もちろん、天候にも左右されます。はるばる北海道まで行き、早起きして訪ねても、見られない可能性もあります。でも、そんな「約束されない絶景」であることも、ジュエリーアイスの魅力なのかもしれません。

寒さに震えた体を癒やす、地元のおいしいもの

 自然が織りなす絶景に、すっかり興奮したものの、このときの気温はマイナス18度。この時期にしては暖かいと地元の方は言いますが、30分も外にいると、耳や顔が痛くなり、分厚い手袋をしている手もすっかりかじかんでしまいます。

 早起きして、寒い中で体力を消耗したからか、まだ朝8時というのに、おなかがペコペコです。帯広市内に戻ってカフェで朝食を食べようかなあと思っていたところに見つけたのが、海岸近くにある「きいちゃん食堂」。まさかこんな早い時間から飲食店が空いているとは!

特産品の北寄貝がたっぷりと入ったラーメンと、温かく迎えてくれた“きいちゃん”。寒さで凝り固まった体が癒やされる

 「いらっしゃい、寒いでしょう、温まって」と迎えてくれたのは、店主のきいちゃんこと杉山君代さん。本来の営業時間は11時から15時ですが、この時期だけ、朝7時ごろからオープンしているのだそうです。「はるばる遠くから大津に来てくれる人がいるんだもの。おいしいものを食べてもらいたいからね」と、きいちゃん。出汁だしが利いているけれどあっさりとした「しおつぶ ホッキ入りラーメン」は、贅沢ぜいたくなほどに北寄貝ほっきがいが入っていて、忘れられないおいしさでした。

 大津海岸を後にして帯広に向かう途中、立ち寄ったのは、名物の「アメリカンドーナツ」が大人気を博しているという「朝日堂」。1941年創業の老舗の和洋菓子店です。

「アメリカドーナツ」はカスタード(手前)や生クリーム(左)、あん(右)など、種類もいろいろ。見た目よりはるかにあっさり、ふわふわ

 ドーナツの種類は、あん、カボチャあん、カスタード、生クリームなど全7種類。一見すると、グラニュー糖をまぶした普通のドーナツですが、手に持つと、軽くてふんわりとしていて、強く持つとつぶれてしまいそうなほどの繊細さです。生地はさくっとしていて、揚げてあるのに油っこさを感じません。いただいたカスタード味は、見た目よりはるかにあっさりして、甘さ控えめの上品なお味でした。

 アメリカンドーナツは、お店をリニューアルした際、2代目の現ご主人、岡本良一さんが考案したもの。添加物は使用せず、地元・十勝産の牛乳と卵が使われています。さくさくした食感の秘訣ひけつは、生地が膨らみすぎないよう発酵時間を調整していること。このため、油を吸いすぎず、あっさりと仕上がっています。

豊頃町のもうひとつの絶景、「ハルニレの木」。推定樹齢は約140年の巨木が雪に埋もれた河川敷に立つ

 甘いものが苦手な私も、こんなお菓子なら喜んでいただきます。ブルースが大好きで本場アメリカ南部を旅し、休日にはギターを奏でるのが趣味というご主人との会話も楽しくて、気づけばペロッと3個、たいらげていました。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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