手作りがおいしい! 阿蘇で食べる、彼女のとっておき料理

リフレッシュ! 極上旅

 旅で食べることが楽しみな理由は、ただ「おいしいから」「食材が珍しいから」というだけではありません。その土地で愛される料理には、作り手や食べる人たちの思いやストーリーが秘められていて、ワクワクしてしまうのです。阿蘇の旅では、地元の女性たちが熱いハートで作る、とっておきの食に出会いました。

母と娘、阿蘇の自然が生み出す、やさしい料理

 コンニャクに切り干し大根、野菜の白和え、里芋の揚げ物、厚揚げ豆腐、漬物。どの料理もなじみがあるものばかりなのに、じんわりとおいしくて、なんだか体も喜んでいるみたい……。そんな気分にさせてくれたのは、「お食事処菜の花」。田中英美子さんと娘の美恵子さんが切り盛りする古民家レストランです。

 テーブルに次々と並べられる料理は、豆腐やコンニャクにいたるまで、すべて手作り。自家栽培の野菜は、畑の堆肥に野菜くずを再利用するなど、土づくりから手がけています。つまり、ここで食べられるものは、まるごと阿蘇の味ということ。

「お食事処菜の花」は予約制。2日前までに電話で予約を。予約は 昼、夜ともに5名から。グループ旅行におすすめ

 調味料だって手作りです。なかでも、無農薬栽培の柚子と自家栽培の唐辛子、麹と塩を使い3年間も熟成させた無添加の柚子胡椒は、スパイシーながらも風味が豊かで、これだけで日本酒が飲めるほどの逸品でした。

原木しいたけ(右)は、肉厚でホクホク!

 英美子さんが、このお店に先立ち、手作りの漬物を販売する「なの花工房」を立ち上げたのは、還暦を迎えたとき。軌道に乗った5年後、美恵子さんとともに、「お食事処菜の花」をスタートさせたのだといいます。

豆腐(左)も手作り
おなかいっぱい食べた後も、つい手が伸びてしまった、阿蘇産のお米を使ったおはぎとおにぎり

 「阿蘇は食材に恵まれた土地。だから、自分で料理も作って、みなさんに食べてもらいたくって」と英美子さん。畑仕事からレシピ考案、料理まで2人で手分けして切り盛りしています。夢を叶え、情熱をもって食に取り組んでいる母娘の姿はたくましく、キラキラと輝いていました。

地元で愛され続ける、阿蘇のお母さんの味

 「友だちや親せきが集まるときは、必ずあの店のから揚げがある」「あの天ぷらは週に一度は食べたくなる」と、出会った人たちが口々に話すのを聞いて、期待を胸に訪れたのは「吉田から揚店」。地図を頼りに行くと、住宅街のなかに、小さく素朴なお店がありました。

 「いらっしゃい!」と元気に迎えてくれたのは、吉田美代子さん。テイクアウトのつもりでうかがったのですが、東京から来たことを話すと、とても喜んでくださり、お店のイートインスペースに招き入れてくれました。

 さっそく揚げたてのから揚げと天ぷらを賞味。しょうゆ味の鶏のから揚げはカラッとして脂っこさがなく、明太子を入れた手羽先はほどよい塩加減で、サツマイモの天ぷらは風味が豊か。どれも優しい家庭の味です。驚いたのは、ナスの天ぷら。中に仕込んだ辛子味噌が熱々のナスの甘さを引き立て、まるでスイーツのような味わいでした。

「揚げたてのから揚げ、いっぱい食べて!」。「吉田から揚げ店」の美代子さんは阿蘇の名物お母さん。手羽めんたい(160円)やなす天(100円)、から揚げ(100グラム200円)など、リーズナブルなのにおいしい庶民の味

 小さなお店には、次から次へとひっきりなしにお客さんがやって来ます。味はもちろんのこと、昭和を思わせる懐かしい雰囲気や、よく笑い、楽しそうにお客さんと話す吉田さんにも、ひかれているのかもしれません。

 吉田さんは、子育てがひと段落した昭和50年代に、何かを始めようとこのお店を開いたのだそう。シェフの経験がない主婦が作る庶民の味が、これほど長く愛されているのもステキです。

 「食べきれなかったら持って帰ってね。冷えてもおいしいのよ」と、吉田さんがていねいに包んでくれた天ぷらは、その晩、東京に帰ってからおいしくいただきました。本当に、冷めてもおいしかった!

 食後に訪ねたのは、阿蘇神社近くの「阿蘇天然アイス」。その名のとおり、阿蘇の恵みがぎゅっと詰まったアイスクリームが食べられます。基本材料は、畑から直送される野菜や、とびきりフレッシュな阿蘇小国ジャージー牛乳で、乳化剤や着色料、香料は一切不使用。

冬は、柚子やイチゴ、甘酒などのフレーバーが登場する
石橋久美子さんがこのお店を始めたきっかけは、アレルギー症状のあった娘さんに食べさせようと試行錯誤した手作りのアイス。母の愛は今、阿蘇を代表するスペシャルなスイーツ

 完熟トマトや朝摘みのイチゴなど、ショーケースに並ぶフレーバーを見ていると、市場に来ているかのような気分になります。素材をそのまま味わえるヘルシーなアイスは、心身に栄養を与えてくれました。

 お食事処菜の花/なの花工房

 阿蘇天然アイス

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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