駅からちょっと足を延ばして、三島のアート&絶景スポットへ

リフレッシュ! 極上旅

 東京から新幹線でわずか約45分。駅を降りるとすぐ、湧水のせせらぎに出会える水の都・三島市は、徒歩だけで十分に旅が楽しめる街です。でも、さらに足を延ばせば、他の地にはない魅力的なスポットにも巡り会えます。冬も温暖な気候の三島で、週末の日帰り旅を存分に満喫しました。

知れば知るほど夢中になる! 名刀コレクションで知られる美術館

 三島の中心部から少し足を延ばしたところに、美しい庭園を持つ「佐野美術館」はあります。カフェやスイーツショップが集中する広小路エリアから15分ほどのんびり歩くもよし、地元で「いずっぱこ」の愛称で親しまれる伊豆箱根鉄道駿豆すんず線を利用するもよし。「いずっぱこ」利用の場合は、三島駅から最寄りの三島田町駅まで5分、そこから徒歩3分と交通至便です。

 「佐野美術館」は、陶磁器や金銅仏、日本画など東洋の工芸品を中心に、多くのコレクションを所蔵するアートスポット。写真展から世界の名作原画展まで、年間を通して様々な展覧会が開催されていますが、なかでも、日本刀のコレクションの素晴らしさで知られています。

展覧会の内容はバラエティー豊か。広々としていて鑑賞もしやすい。展覧会のスケジュールはHPでチェックを

 刀と聞いても、あまりピンとこないかもしれません。私もここを訪ねるまでは、「刀=一部のマニアのもの」とばかり思っていました。ところが、実際に目にしてお話を聞いてみると、その奥の深さは想像以上。すっかり魅了されてしまいました。

 鑑賞のコツは、正面だけでなく、斜めや左右からも見ること。光が当たるとふんわりと浮かび上がる「刃文」の美しさ、絶妙な弧を描く刀身の曲線美、さやの装飾……。機能を追求し、たくみの技が織り込まれた姿は、理屈を抜きにしても美しく、つい、じっくりと眺めてしまいます。

 「作者は身を清め、精神統一して刀の制作にとりかかったといいます」「刀には、由緒や持ち主の名が元となったニックネームが付けられているものもあるんですよ」。学芸員が語るそんなエピソードも興味深く、新しいアートのジャンルを知ることができました。

常設展示室は年に4回程度、テーマを決めて館蔵品を中心に展示。写真手前の国宝「太刀 銘 一」(個人蔵)は「REBORN 蘇る名刀」にも出品

 名刀は宝物であり、権力の象徴であり、それを持つ武将のステータスでもあったといいます。なにより、鉄でできているためびやすい刀がこれほど美しいのは、何百年も大切にされてきた証なのでしょう。

 佐野美術館では1月7日(月)から2月24日(日)まで、企画展として「REBORN よみがえる名刀」を開催。その名のとおり、戦や震災など様々な困難を潜り抜け、傷つきながらも「焼き直し」という手法で蘇った作品など約50の名刀が展示される予定です。

企画展「REBORN 蘇よみがえる名刀」に出品される「短刀 銘 行光(ゆきみつ)〈名物 不動行光〉(鎌倉時代 個人蔵)」

 ひとしきりニッポンの芸術を鑑賞した後は、敷地内にある回遊式の日本庭園へ。

佐野美術館に隣接する日本庭園。四季折々の表情が楽しめる

 自然の趣を生かした庭に日本家屋「隆泉苑りゅうせんえん」がたたずむ風景は、アートに触れ、刺激された心を、さらに豊かにしてくれました。

さらに足を延ばして、知られざる富士山の絶景スポットへ

 街の中心部の至るところから富士山の雄姿が望める三島。さらに郊外まで足を延ばせば、感動的な絶景に出会うことができます。

 絶景スポットの一つが、「山中城跡公園」です。山中城は戦国時代末期の1560年代、小田原に本城を置いた北条氏によって造られた山城で、その跡地が公園として整備されています。山城だけにずいぶん遠くにあるように感じますが、三島駅南口からバスでわずか約30分。街中ではなかなか見られない一大スケールの富士山の絶景を眺めるなら、ぜひ足を延ばしたい場所です。

 もちろん、絶景だけでなく、お城としても見ごたえがあります。石はいっさい使わず、土塁と堀だけで構成されている山中城には、天守閣も石垣もなし。でも、その武骨さがいい! 見た目こそシンプルですが、そこには築城当時の最先端技術が秘められています。

山中城は日本百名城に選定されている。春から秋にかけては季節の花々が咲いて武骨な城に彩りを添え、芝が枯れる冬は堀や土塁の姿がより浮き立ち、築城当時の様子を濃厚に漂わせる

 園内に入って目にするのは、凸凹に掘られた「障子堀」。堀の中に衝立ついたて障子に似た障壁を掘り残すことからそう呼ばれています。幾何学模様がアートにも見えるこのお堀こそ、山中城最大の戦略的特徴。現在は風化を防ぐために芝で保護されていますが、戦国時代は土(しかも滑りやすいローム層)がむき出しで、重いよろいを付けた武士が乗り越えるのは容易ではなかったはずです。

障子堀の左右は土塁になっている

 この「障子堀」がほぼ一定の間隔で連続している状態が、「畝堀うねぼり」。攻め込んできた敵は、細い畝の道上の部分を一列になって進むしかなく、城を守る側にとっては集中攻撃がしやすくなるというわけです。

 そんな最強の防御策が施されていたはずの山中城ですが、1590年、豊臣勢7万の攻撃を受け、北条勢4000は必死にに防戦しましたが、わずか1日で落城してしまったのだそう。富士山の大パノラマが見られると聞いて足を延ばしてみましたが、ここは歴史ロマンにも触れられる場所でした。

山中城跡公園から、三島の街を一望。その向こうに見えるのは駿河湾

 散策した後は、売店の茶屋で、名物の「寒ざらし団子」をいただきながら、バスを待ちつつひと休み。甘いみそダレをつけたヨモギ団子と抹茶塩をつけた白団子は、昔ながらの素朴な味で、戦国武将の夢の跡を見た直後に、ほっこりとした気分にさせてくれました。

干した米を冬の寒気にさらして上新粉を作ったことから名がついた「寒ざらし団子」は山中城跡の隠れた名物
山中城跡公園があるのは箱根連山の西南。一帯には箱根西麓三島野菜が育つ。車で訪れれば、パッチワークのような畑が見られることも
山中城跡公園のすぐそばには、石畳のある箱根旧街道が。ノルディックコースとしても認定され、売店でウォーキングポールを借りることも可能

 山中城跡公園は、江戸時代の東海道の一部、小田原宿から箱根山を越えて三島宿に至る箱根旧街道に位置しています。売店のすぐ裏には石畳が続いて、こちらも風情たっぷり。売店をスタート地点として山中城跡と林道を1周する約7.5キロの道のりは、ノルディックウォーキングのコースとしても人気を集めています。

佐野美術館

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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