旅に出たら、ランチとディナーもしっかり食べたいし、合間にカフェにも立ち寄りたい。そう思うのは、食いしん坊な私だけでしょうか。水の都・三島の楽しみは、近隣の自然が育てる食材を使った料理。東京から1時間以内で行けるから、ディナーでワインを満喫しても、十分に日帰り旅が可能です。
川辺の隠れ家で、優雅なランチタイム
三島市(静岡県)の街中を流れるのは、富士山の雪解け水がせせらぎとなって流れる源兵衛川。川の中には、飛び石やボードウォークが整備されています。キラキラと川面が輝き、緑の風が爽やかなここは、絶好の散策スポット。なにより、市街地の12月の気温は東京よりも暖かく、歩いてみたくなります。
ボードウォークをのんびりと歩いていくと、やがて石造りの小さな橋「時の鐘橋」が見えてきます。フォトジェニックなこの橋の下をくぐると現れるのが、「ディレッタント・カフェ」。川にせり出すテラスといい、隠れ家のようなひっそりとした佇まいといい、思わず誘い込まれます。

カフェと名前がついていますが、ここはワインも楽しめるイタリアン。メニューには、箱根西麓三島野菜や、隣町にある沼津港からシェフが買い付けた魚など、地元の食材がたくさん並んでいます。迷わず、ここでランチをいただくことに。
店内に入ると、モネやモディリアーニなどの作品とアンティークが飾られるアーティスティックな空間が広がっていました。といっても、スノッブで堅苦しい雰囲気はなく、木のぬくもりを感じる家具が暖かく迎え入れてくれます。

天気がいい日の特等席は、やっぱりテラス席。優しく差し込む木漏れ日や、木の葉が川面の風に舞う水辺の風景に癒やされます。

ランチ(11時半~14時)のメニューは、パスタランチと、メインディッシュが選べるコースの2種類があります。私は、地元の野菜やお肉を存分に楽しめるコースを選びました。三島の名物というと昔から鰻が有名ですが、郊外の畑で育つ箱根西麓三島野菜は近年、ブランド野菜として、地元はもちろん、首都圏でも人気を集めています。三島にイタリアンレストランが多いのは、そんな食材の豊かさも理由なのかもしれません。
エディブルフラワーを添えた彩り豊かな前菜は、野菜のほか、キッシュや押し麦のサラダ、豚肉のゼリー寄せなど、ついワインが欲しくなるものばかり。ディナーに来ればよかったな……と悔やんでいたら、「もちろんランチタイムもワインを用意していますよ」と、マダムがロゼワインを薦めてくれました。こんな環境なら、昼間から飲みたくなります。気づけば、テラス席で食べているお客さんは誰もがワイングラスを片手にしていました。

メインは、数あるセレクトのなかから、隣町の長泉町で育ったもち豚のローストをチョイス。10時間かけて低温でローストしたお肉は、見た目はとてもシンプルなのに、口にすると甘みがふんわりと広がって、きめ細やかな口当たりに驚かされます。野菜は脇役とは思えないしっかりとした味わいで、ロゼワインが進んでしまいました。
マダムお薦めのオーガニックワインを楽しむ
食材の個性や料理のおいしさもさることながら、ひかれたのはワインのチョイスです。ソムリエでもあるマダムが選んだワインは、オーガニックが中心。私が大好きな、南アフリカ・ステレンボッシュの名門ワイナリー「アサラ・エステート」のワインもありました。
このワイナリーのオーナーで醸造家のピート・ゴッケンズさんは、南アフリカの伝説の大統領、ネルソン・マンデラの専属シェフも務めた有名人。彼は、来日した際に三島も訪れ、「ディレッタント・カフェ」でワインセミナーを開いたこともあるのだそうです。
三島と南アフリカの意外なつながりに刺激され、食後は徒歩数分のワインショップ「ルカワイン」を訪れてみました。ずらりと並ぶオーガニックワインのなかに、ステレンボッシュ産を見つけ、これも三島旅のお土産となりました。

「ディレッタント・カフェ」が入るビルの3階には、ワインカフェ兼イベントスペースの「ワルツ」があり、時折イベントが開催されています。店内を少しのぞかせていただくと、飾られたオブジェや家具の一つ一つがいとおしくなるものばかりで、こちらも個性的でした。

地元の食材を食べながら、川の流れに癒やされ、ゆっくりと過ごしたランチタイム。ただ慌ただしく名所を訪ねるだけでなく、時間を慈しむという旅の豊さを、三島の旅で実感できた気がします。
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