シカゴは、まるで全体が巨大な建築博物館のような街。名だたる建築家たちが自由な発想で創り出したモダニズム建築から、世界最古の鉄骨高層ビルまで、あらゆる建造物が林立しています。そんな建物群を、クルーズやサイクリングなどのアトラクションとともに楽しめるのも、シカゴならでは。建物に出会うにつれ、いつしかその魅力に引き込まれます。
知識ゼロでも楽しくなる、建築協会公認のリバークルーズ
巨大なアート作品のような高層ビルや、映画のセットのようにかわいらしい消防署……。シカゴの建物を見ていると、そのひとつひとつにどんなストーリーがあるのだろうかと、想像がかきたてられます。

そんな建築群を眺められる、とっておきの特等席といえるのが、両岸に連なるビルを川面から悠々と観賞するリバークルーズ。いくつもの船会社が就航していて、その内容も多岐にわたります。私が利用したのは、「シカゴ・ファースト・フェリー」。唯一のシカゴ建築協会公認のクルーズ船です。

この船を選んだ理由のひとつは、シカゴ川の3本の支流すべてに入っていくため、主要な建築のほとんどを見られること。もうひとつは、専門知識を持つボランティアガイドによる説明があることでした。建物をただ漠然と眺めるのではなく、背景や建築のエピソードなどを含めて、街を感じたかったのです。
下層部が逆三角形の形をした「150ノースリバーサイド」、トウモロコシのような形の「マリーナ・シティ」、鉄とガラスでできたクールな「IBMビル」、すごいだろうと言わんばかりに存在感を放つ「トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー」など、有名なものを含め、50以上の建物を見ることができました。
ガイドの説明はすべて英語ですが、外国人客も多いためか、ゆっくり、はっきりと話してくれます。1871年に起きたアメリカ史上最悪の大火事、それをきっかけに進んだ「木造建築禁止」の一大開発、地元新聞社の呼びかけにより復興を志して全米から集まった建築家たち。さらには、1900年代前半に大流行したアールデコ様式から、世界一を競う超高層ビルの建設ラッシュ……。説明を聞いていると、ひとつひとつの建物に、当時の人々の思いが込められているのだなあと実感します。

不思議なのは、これほどの高層ビルがあるのに、コンクリートジャングルを思わせず、さわやかな印象を受けること。名建築家たちは、そのあたりも計算して街づくりを進めたのでしょうか。
高級住宅街から湖畔のビーチまで、街を走り抜ける自転車ツアー
近頃、旅先でよく見かけるのが、自転車ツアーです。ライセンスも要らず、路地にまでスイスイと入って、素顔の街を見られる自転車は、一歩進んだ観光をしたいという旅行者にぴったりのアトラクションなのでしょう。自動車の運転が苦手な私も、すっかりはまっています。
ここシカゴでも、自転車ツアーは観光客に大人気。私は「ボビーズ・バイク・ハイク」が主催するツアーに参加しました。ビジネス街から高級住宅地、ミシガン湖畔までを網羅する約3時間のツアーです。

この日の参加者は11人。歩道ではなく、さっそうと大都会の車道を大所帯で走ることができるのは、シカゴの交通ルールのなせる技です。
安全であるのはもちろんのこと、坂道が少なく、ほとんどがフラットな地形なので、想像以上に走りやすく快適です。曲がるときや止まるとき、手を使って後ろの人に伝えるハンドサインも、チームプレーをしているようで、なんだか新鮮。ちなみに、自転車にはそれぞれ名前がついています。私が乗った自転車の名は「ビアンカ」でした。
クルーズ船では川沿いの有名な建物を堪能しましたが、一方、自転車ツアーで通り抜ける住宅街の建物も、なかなか見ごたえがあります。「ゴールドコースト」と呼ばれる高級住宅街には、ヨーロッパを思わせる瀟洒なアパートメントやコンドミニアムがずらり。なかでも、雑誌「PLAYBOY」を創刊した実業家、ヒュー・ヘフナーが所有していた建物は、ひときわ存在感を放っていました。
さらに相棒のビアンカを走らせ、オールドタウン地区へ。ここはもともと、ドイツからの移民が多く暮らしていたエリアだけに、欧風の雰囲気が漂っています。石畳の通りにはかわいらしい家々が並び、摩天楼とはまた真逆の、ゆったりとした時間が流れていました。

衝撃的だったのは、後半に走ったビーチの風景。ミシガン湖畔には、約42キロの人工ビーチが整備され、誰もが無料で利用できるのです。家族でキャンプをしたり、海を眺めながらジョギングしたり、恋人同士が肩を寄せ合ったり。すぐそこに見える高層ビル群と、こんな自然が共存しているのは、なんともうらやましい環境です。

シカゴ・ファースト・レディー
ボビーズ・バイク・ハイク
シカゴ観光局
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