街そのものがアートスポット! 知的好奇心を刺激するシカゴ

リフレッシュ! 極上旅

 アメリカの都市の風景と聞いて、まず思い浮かぶのが、最先端のカルチャーが生まれ続けるニューヨークや、太陽が降り注ぐ西海岸のロサンゼルスなどです。一方、都市名も位置する場所も分かるのに、はっきりとしたイメージを持っていなかった街の一つが、シカゴでした。「どんな旅になるのかな?」とちょっと心配しながら日本をたって、初めてのシカゴへ。そこには、アートに建築、ジャズやブルースなど、知的好奇心を刺激するアイテムがあふれていました。

肩肘はらずにアートを楽しめるスポット

 イリノイ州最大の都市にして、ニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐアメリカ第3の都市、シカゴ。高層ビルが林立する風景はほかの大都市とあまり変わりがありませんが、ひとつひとつが個性的な建築であることや、五大湖のひとつであるミシガン湖畔にあることが、この街を特徴づけています。

 シカゴへは、同市に拠点を持つユナイテッド航空の直行便が毎日運航しています(所要約12時間)。

 この旅のテーマは、アートと建築、音楽。まずは、人気のアートスポット、「シカゴ現代美術館」へと向かいました。市内にはアメリカ三大美術館のひとつとして有名な「シカゴ美術館」がありますが、あえてこちらを選んだのは、規模がコンパクトで短い滞在時間でもじっくりと鑑賞できるため。そして、芸術の知識がなくても直感で楽しめそうな展示があるためです。

シカゴ現代美術館。レストランやミュージアムショップも充実している

 1967年開設とそれなりに歴史がありますが、建物は外観、内観ともにスタイリッシュ。一面の白い壁に自然光が優しく反射する廊下や、芸術作品のように美しい階段、ユニークな形のソファやテーブルがあって、館内を歩いているだけでもワクワクします。

内装もコンテンポラリーアートそのもの

 訪れた日に開催されていたのは、コンテンポラリーフォトグラフィーの企画展でした。なかには70年代に撮影されたものもあったのですが、静物と光、人影、紙などの素材を絶妙に組み合わせた写真は、現代のSNSの投稿写真のよう。現代の風景の中に過去を仕込んだような作品は、見れば見るほど不思議で、写真に詳しくない私が、どんどん引き込まれてしまいました。

ボタニカルアートが天井を埋め尽くすイベントスペース
ザビエラ・シモンズ(左)やメラニー・シフなど、気鋭の作家の作品も展示

 もうひとつ、ここを訪れた理由が、館内にあるローカルに人気のレストラン。「マリソル」という店名は、60年代にニューヨークで流行したフレンチポップアートの有名なアーティストから付けられています。

ランチは併設のレストラン「マリソル」で。契約農家から取り寄せた野菜を大胆に盛り付けたサラダやサンドイッチ

 

 アーティストの名を冠したレストランだけあり、創作料理はどれも個性的。メニュー名からは想像もつかないようなユニークな調理法や盛り付けがされていて、運ばれてくるたびにテーブルでは歓声があがっていました。ただ奇をてらうのではなく、契約農家から仕入れる新鮮な野菜を使うなど、食材にも気を配っています。美術館鑑賞は、こうした食事タイムも含めて「楽しいなあ」と感じる時間でした。

巨匠の天才的なセンスに驚かされる名建築

 市内中心部から郊外にある「フランク・ロイド・ライトの邸宅とスタジオ」へと足を延ばしました。ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエと並び「近代建築の三大巨匠」と呼ばれ、「空間の魔術師」とも称される名建築家が暮らした家と仕事場が公開されています。

 ライトがこの建物を利用していたのは、1889~1909年の20年間。アメリカの大平原を彷彿とさせる彼の代表的な建築様式「プレーリースタイル」は、この時期に確立されたといわれています。また、自宅は家族のライフスタイルの変化に合わせて幾度も改築が行われ、それによって理想の建築様式を完成させていったとも。いわば、ここは巨匠の実験の場でもあったところなのです。難しい建築の話を抜きにしても、これは興味深いです。

フランク・ロイド・ライト・ホーム&スタジオ。世界各国から見学者が訪れる

 建物見学はガイドツアー(所要約1時間。ウェブサイトで予約可)への参加が必須。当初は「自由に見学したいのに」と思っていましたが、ガイドツアーがあったからこそしっかりと見学できる、充実の内容でした。ガイドは英語で行われますが、詳しい日本語の解説書があるので役立ちます。

 まずは自宅へ。無駄のないミニマルな設計、高低差を巧みに利用し空間を広く見せる工夫、家具の細部に施された細やかな彫刻……。ひとつひとつが綿密に計算されていることに驚かされます。ふすまのようにも見える天井の透かし彫りは、日本の美術に心酔していたライトらしいデザイン。彼は、浮世絵のコレクターでもあったといいます。

フランク・ロイド・ライトが暮らした家のリビングルーム。二つの出窓がガラス窓と並んで一直線の面を作り出すことで、広く見える効果が
ダイニングルーム。壁、床、天井、照明器具から家具にいたるまで、調和するように綿密な計算がされている

 隣接する仕事場はさらに、美しいというだけでなく、機能面でも優れた空間でした。ここに多くの建築士が出入りし、歴史に残る名建築を生み出していた時代がリアルに思い浮かびます。

ダイニングルーム。壁、床、天井、照明器具から家具にいたるまで、調和するように綿密な計算がされている

 ひとしきり名建築を楽しんだ後は、街中に戻って夜景散策をすることに。市民でにぎわう都心のミレミアム・パークを訪れると、なにやら奇抜な物体が……。これは、2006年に完成したパブリックアートの「クラウド・ゲート」。高さ10メートル、幅20メートルもある作品はひとつの大きな塊のように見えますが、168枚のステンレス板をつなぎ合わせています。

街を映し出す「クラウド・ゲート」。豆のような外観から、地元では「シルバービーン」と呼ばれ親しまれている

 鏡のような表面に映し出される、キラキラとした大都会の夜景。見る角度によって次々とその姿が変化していきます。まるで、多彩な街の魅力を映し出しているかのよう。ライドが活躍した19世紀から現代にいたるまで、アートにあふれているシカゴは、街そのものが美術館といってもいいかもしれません。

シカゴ観光局
ユナイテッド航空
フランク・ロイド・ライト・ホーム&スタジオ

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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