神秘的な自然とアイヌ文化に触れる、阿寒摩周国立公園

リフレッシュ! 極上旅

アイヌコタン

 この秋、紅葉観賞の旅先に選んだのは、「ひがし北海道」。2018年9月に発生した北海道胆振いぶり東部地震の影響が心配されていますが、以前と変わらない大自然と環境のすばらしさを実感することができました。いくつかの旅行会社が観光復興を応援するために発売したクーポン「北海道ふっこう割」を活用する商品も登場。この秋冬は、北海道が注目のデスティネーションとなりそうです。

カムイが宿る北の大地で大自然にパワーをもらう

 釧路から阿寒湖までは車で1時間強。湿原で羽を広げるタンチョウや、草むらで飛び跳ねるエゾジカを車窓に見つけては歓声をあげる、楽しいドライブです。

 阿寒湖は、約15万年前の噴火によって誕生したカルデラ湖。雌阿寒岳と雄阿寒岳を望むダイナミックな景観や、数々の野生動物や特別天然記念物のマリモが生育する自然環境は、圧倒的な存在感で訪れる人を迎え入れています。

釧路から阿寒湖に向かう途中にある滝見橋。訪れた10月中旬はちょうど紅葉まっさかり。阿寒川と色づく木々のコントラストにうっとり

 ここは北海道有数の温泉地でもあります。湖畔には30軒ほどの温泉ホテルや旅館が並び、手湯や足湯がところどころにあって、湯煙の中のそぞろ歩きも楽しめます。にぎわう温泉街はレジャー感があり、それでいて雄大な自然に抱かれて秘境感もあり。そんな阿寒湖は、リフレッシュを目的とした週末旅行にもぴったりの場所。

周囲約26キロメートル、海抜420メートルに位置する阿寒湖。湖上には四つの島があり、それらを眺める遊覧船(所要約1時間)も人気(撮影:岡田ナツ子)
温泉街にあるほとんどの宿泊施設が湖に面し、部屋やお風呂から絶景を望むことができる。「ニュー阿寒ホテル」の屋上にある「天空ガーデンスパ」では、湖と一体化したかのような気分で温泉入浴を

 阿寒湖の魅力は、大自然だけではありません。ここに息づくアイヌの文化もまた、旅したくなる理由のひとつ。温泉街の一角には日本最大級のアイヌのコタン(集落)があり、伝統的な生活を守っています。

 阿寒湖周辺を散策して何度も出会うのが、アイヌ独特の文様や木彫りの作品。アイヌコタンはもちろん、通りやホテル内など、いたるところに展示されているのです。それらはただ美しいというだけでなく、力強さがあるものばかり。見ているだけで、パワーをもらったような気持ちになります。

温泉街のホテル「あかん遊久の里鶴雅」のギャラリーには、10月26日に亡くなったアイヌ民族彫刻家、藤戸竹喜氏の作品を展示。命が吹き込まれたような木彫りに圧倒される

 自然や動植物、生活道具などあらゆるものに神(カムイ)が宿るとして敬い、自然に感謝し共存するのがアイヌの考え方。日々、目の前のことばかり気にしてしまい、視野が狭くなりがちなこの頃、彼らの伝統的なライフスタイルに、生きるヒントがあるような気がしました。

見る人の心で湖面の色が変化する?! 神秘の湖

 阿寒湖が位置する阿寒摩周国立公園は、北海道で最も歴史のある国立公園のひとつです。9割以上が未開発地域として保護され、国立公園の中でも原始的な姿を残しているといわれています。

 阿寒湖から足を延ばしたのは、車で30分ほどの「オンネトー」。約2万年前の雌阿寒岳の噴火によってできた、周囲約2.5キロメートルの小さな湖です。その名は、アイヌ語で「年老いた沼」や「大きな沼」を意味します。

 手つかずの自然と聞くと、ワイルドでダイナミックなイメージを抱くものですが、ここで見られるのは神秘的で静かな風景。雌阿寒岳と雄阿寒岳に見守られ、ひっそりとある湖は、湖面に光をたたえ、エメラルドグリーンともブルーともいえない、なんとも複雑な色に輝いていました。

エメラルドグリーン、ダークブルー、コバルトブルー……様々な色を見せるオンネトーは「五色沼」とも呼ばれている

 オンネトーは、天候や風向き、見る位置によって湖の色が様々に変化することから「五色沼」とも呼ばれています。私は20年ほど前にも一度来ているのですが、そのときとも違って見えるのが不思議でした。もしかしたら、見る人の年齢や心によっても、湖面の色は変化して見えるのでしょうか。

 オンネトーは山奥にありながら、近年はSNSなどで発信されるようになり、有名な観光地となっています。とくに紅葉シーズンは大型バスがやって来ることもありますが、冬期(12月上旬~4月中旬)は周辺の道路が車両通行止めになることから、静けさを取り戻します。

 冬は、気泡を閉じ込めたまま氷結したオンネトーが格別に美しいのだとか。アクセスはスノーシューを履いて雪道をトレッキングするしかありません。でも、その姿を見るために、また訪れたいと思っています。

「動物注意」の道路標識は北海道名物。シカは夜行性なので、夕方以降のドライブで見かけることが多い(左)。地元のドライバーの間でよく使われている鹿避け笛。人間には聞こえない周波数を発することで、鹿との衝突事故を防ぐもの(撮影:岡田ナツ子)

 雄大な自然が息づく阿寒摩周国立公園はレンタカーが必須というイメージもありますが、「阿寒エアポートライナー」や「ひがし北海道周遊観光バス」など、便利なバスも運行されています。冬期も毎日運行しているので、ペーパードライバーや雪道の運転に自信がない人でも、安心して旅のプランが立てられそうです。

ひがし北海道トラベルラボ
北海道ふっこう割

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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