昔も今も、旅先として不動の人気を誇る北海道。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、震源地を中心に甚大な被害があり、道内全域が停電になりました。しかし、その数日後には、ほとんどの地域で日常を取り戻しています。10月中旬、秋色に染まる北海道へ。そこで私を迎えてくれたのは、今までと変わらない雄大な自然でした。
世界三大夕日を堪能するサンセットクルーズ
北海道と一口に言っても、日本の国土の約5分の1を占める面積を誇るだけに、エリアによって、気候や風土はさまざまです。この旅で私が選んだのは、「ひがし北海道」。飛行機で簡単にアクセスできる所にありながら、ダイナミックな自然に包まれる、週末旅行にもぴったりの場所です。
2泊3日で計画した旅の前半は釧路へ。タンチョウが舞う釧路湿原、幣舞橋から眺める夕日、炉端焼き……と、この街にはたくさんの見どころやおいしい食べ物がありますが、私は何より港町風情が大好きです。潮の香りやカモメの鳴き声、夜になると水辺に映る街の灯りは、とても優しくて癒やされます。

釧路の風情を海上から楽しめるのが、クルーズ船の「シークレイン号」。サンセットクルーズ(5000円・税込み)では、複合商業・観光施設「釧路フィッシャーマンズワーフ」と港、外洋を約90分かけて巡ります。
このクルーズはアルコールとソフトドリンクがフリードリンクとなっています。ワインを飲みながら、夕日に染まりゆく空と海を眺めるのは、至福のひととき。デッキで風を感じながら海を眺めれば、絶景に包まれたような気分になります。
クルーズのスタートは日没1時間前。まだ辺りは明るく、海も太陽を反射してキラキラと輝いていますが、船が進むにつれ、次第に空がオレンジ色に。カモメが飛び交う灯台や水平線はフォトジェニックで、カメラを片時も手放せません。そして、今も稼動している現役の海底石炭採掘場や、貨物を積み下ろすコンテナのシルエットはとてもノスタルジックで、心に焼き付いています。
ちなみに、釧路はインドネシアのバリ、フィリピンのマニラと並ぶ「世界三大夕日の観賞スポット」でもあります。戦後復興期、世界中から来航する船の乗組員たちの間でそう呼ばれるようになり、いつしか口コミで広がっていったのだとか。けっして専門機関に認定されているわけではなく、人々がここを美しいと思い、伝えていったという背景もすてきです。
北の港町はグルメとお酒を満喫!
シークレイン号への乗船前に立ち寄ったのは、港の前にある「和商市場」。1954年に設立された、北海道のなかでも歴史のある市場です。建物のなかに、新鮮な魚介類や野菜、お総菜など、約60の専門店が並んでいます。

旅行者にとってうれしいのは、数百円で購入できる、少量の魚介類やお総菜です。甘エビに本マグロ、ウニ、タラなど、釧路に来たならぜひ食べておきたいものが購買欲を誘います。場内のイートインスペースでも利用できますが、私は食べ物の持ち込みができるシークレインで、絶景とともに味わいました。

下船後の楽しみは、もちろん炉端焼き。囲炉裏の端で魚介や肉、野菜などを焼き、それを長いしゃもじに乗せて提供する料理で、釧路の名物となっています。現在は、長いしゃもじは使わず、バーベキューのように目の前で食材を焼いて食べるスタイルのお店が多くなっていますが、食材の鮮度には変わりがありません。じわ~っとおいしそうな音を立てる干物やお肉が焼き上がるのを待ちながら飲むビールはたまりません。
食後にもうちょっと飲みたくなって出かけたのは、個性的な飲食店が所狭しと軒を連ねる「釧路赤ちょうちん横丁」です。リヤカーの屋台が集まって開いた共同店舗をルーツとする、道内最古の屋台村です。老朽化した建物は2006年にリニューアルされ、個性的な飲食店が並ぶスポットとして生まれ変わりました。
その名前からは、サラリーマンのおじさんたちでぎゅうぎゅうのお店をイメージしてしまいますが、女性一人でも気軽に入れるバルやカジュアルフレンチなどもあり、老若男女でにぎわっていました。

すっかり初日から大満足してしまった旅。北海道では、地震の影響を心配する人たちの宿泊キャンセルが相次ぎ、その数は2週間で94万人分にも上ったといいます。でも、実際は、旅を楽しめる環境はこれまでと何一つ変わってはいません。旅行各社が観光復興を応援するために発売したクーポン「北海道ふっこう割」を活用する旅行商品も登場。お得に旅をすることができる今こそ、道内各地を旅する絶好の機会となりそうです。
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