破格の値段で楽しめるグルメの宝庫、大津の商店街で美食三昧

リフレッシュ! 極上旅

 大津(滋賀県)の旅で宿泊したのは、町家を改装した「商店街HOTEL 講 大津百町」。旅好きがこのホテルに泊まる醍醐味だいごみといえば、商店街との近さです。酒屋さんでとっておきの地酒を教えてもらったり、お総菜屋さんで見たこともない郷土料理を探したり、老舗の漬物屋さんでは思いもよらずお土産を買いすぎてしまったり。名所旧跡に限らず、こんな日常にこそワクワクする時間があることを、再発見する旅となりました。

江戸時代から続く老舗の名物は宮内庁御用達!

 江戸時代、東海道五十三次最後の宿場町だった大津。当時、はるばる旅をしてきた人たちは、京都と目と鼻の先にあるこの街に滞在し、買い物をしたり、上洛するための身支度を整えたりしていたといいます。同時に、大津港は京都への物資運送の港としてもにぎわい、その繁栄ぶりは「大津百町」と称されていました。

 旧東海道と並行し、江戸時代に商店が軒を連ねていたのが中町通りです。ここには現在、アーケードの商店街が延びています。

路面電車が走る大津の街並み。素朴だけど個性豊かな商店街を歩くのが楽しい

 江戸時代ににぎわっていたといっても、今は普通の商店街なんだろうな……という軽い気持ちで散策してみると、想像以上にひかれるお店が。江戸時代から続く老舗が今も愛され、専門店の店先には珍しい特産品が並んでいます。おいしそうなものが見つかりそうな予感!

 まずは「丸二果実店」へ。店内のカフェスペースには、オーダーが入ってからミキシングするフレッシュジュースや、手作りの生クリームと果物をパンに挟んだフルーツサンドなど、果物好きにはたまらないメニューがずらり。昔ながらのミックスジュース(350円)や、南国フルーツを使ったトロピカルミックスジュース(400円)など、鮮度の良さに加えてリーズナブルな価格も果物店ならではです。

「どうぞ、なかでフルーツジュースが飲めますよ」という、おばあちゃんの優しい声にひかれて、大正元年創業の老舗店「丸二果実店」へ

 迷ったあげく、私は季節限定のいちじくジュースをオーダー。こっくりとした濃厚な味と甘い香りは、まさにいちじくそのもの。「砂糖は一切入れず、クラッシュアイスで濃さを加減しています。栄養分も豊富だし、お通じもよくなるから女性にはおすすめですよ」とお店の方が教えてくださいました。

作りたて、いちじく100%のジュース(500円)。プラス200円でハーフサイズのフルーツサンドが付く。テイクアウトも可能

 その数軒先で、ひときわ存在感を放っていたのは、漬物店の「八百与」。嘉永3年(1850年)創業の老舗です。名物は宮内庁御用達だった「ながらづけ」。長等ながら山麓の野菜を酒粕に漬けた漬物です。

六代目が味を守る老舗「八百与」。建物は江戸時代末期の建築、ケヤキの看板は明治時代のまま
宮内庁御用達だったという「ながら漬」。お手頃価格がうれしい
「八百与」の店内に残る貴重な資料。宮内庁御用達の許可証など、歴史を感じさせるものが飾られている

 当時と同じ製法で作る「ながら漬」は、ほんのりとした酒粕さけかすの香りと優しいお味。そのほかにも、店内にはたくさんの自家製漬物が並んでいました。スイカやピーマンなど、「こんな食材も漬物にしちゃうんだ」というものもあって、全部試してみたい気持ちに駆られます。お土産にするのはもちろんのこと、「いっそのこと今日は外食をやめて、これをおつまみに宿飲みしよう!」と決定。さらにお酒のアテを求めて、商店街の探検を続けました。

近江商人のスピリッツを感じながら、大満足の食べ歩き

 店先に並ぶ珍しい魚の名前に思わず目が留まったのは、川魚専門店の「タニムメ水産」。小アユの甘露煮や、大豆とえびを煮たえび豆煮、ウロリの佃煮つくだにこいの南蛮漬け、サバ寿司ずしなど、琵琶湖産の魚介を使ったお総菜がそろっています。こちらでは、琵琶湖でその日の朝に取れた魚を、昔ながらの手法で調理しているとのこと。まさにローカルの味覚は、旅先でしっぽりと飲むにはぴったりのおつまみです。

「タニムメ水産」は琵琶湖産の魚介を使ったお総菜がそろう。量り売りで少量だけ買えるのも、旅行者にはうれしい。「えび豆煮」は酒のあてにぴったり!(右)

 道行く人たちが次々と買い求めるのが、愛知県から直送した活うなぎを炭火で焼いたかば焼きと肝焼きです。たとえほかの産地のものでも、地元の人に愛されていれば、それは立派なローカルフードです。宿に帰って味わった肝焼きは、売り切れ必至も納得のおいしさでした。

 店頭でおいしそうな香りを漂わせていたのは、お肉屋さんの「元三」。こちらは明治35年(1902年)創業の老舗です。名物のコロッケはなんと1個37円! とてもリーズナブルでありながら、注文してから揚げるので、ホクホク、アツアツの状態で味わえます。

「元三」のコロッケは37円。ほかにも近江牛コロッケやミンチコロッケなども、地元で愛される定番メニュー

 これだけおいしいお総菜がそろったのなら、後は地酒があれば言うことありません。商店街探検の最後は、「滋賀のお酒を探すのなら……」と「商店街HOTEL 講 大津百町」のコンシェルジュが教えてくれた「小川酒店」へ。棚と冷蔵庫にずらりと並ぶ地酒に興奮しながらも、私は銘柄に詳しくありません。そこで、「スッキリとして甘くなく、風味があるお酒を」と伝えて選んでもらったのですが、これが好みにぴったり。宿飲みが思いのほか進んでしまいました。

「小川酒店」にずらりと並ぶ地酒。銘柄に詳しくなくても、親切にアドバイスしてくれる

 もちろん、「商店街HOTEL 講 大津百町」の近隣は、おいしい食事どころにも欠きません。私が1泊目の夕飯に利用したのは、旧東海道にある「おお杉」。お目当ては、こちらの名物「鰻のしゃぶしゃぶ」です。

 食べるまでは想像もつかなかった鰻のしゃぶしゃぶは、一口かんだとたんに上品な脂の旨みが広がって、たちまちとりこに。ちょっと鱧にも似ていますが、もっと甘みがあって、それでいてクセや臭みはまったくありません。たっぷりのワサビを載せると、脂とほどよく調和して、「鰻って、こんなにおいしかったっけ?」と思ってしまうほどのインパクトでした。

 この料理はお店のオリジナル。名前こそ「しゃぶしゃぶ」ですが、野菜を入れた鍋でじっくりと鰻を煮込んでいただきます。「鰻の甘みを味わうために試行錯誤して、たどり着いたのがこの料理でした」と、お店の大将。鰻のうま味がたっぷりとしみこんだ出汁だしでいただく雑炊まで、余すところなく味わいました。

「おお杉」の鰻のしゃぶしゃぶ。これを目当てに大津にやって来る人も多いという絶品料理

 初めて食べるローカルフードにたくさん出会うことができた大津の旅。料理はもちろんおいしかったけれど、それを作る人や売る人たちのさりげない気遣いが、旅を心地いいものにしてくれたのだと思います。江戸時代に大津百町で活躍した近江商人たちの「顧客第一主義」のスピリッツは、今でも大津の商店街に息づいているに違いありません。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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