町家で目覚め、ご近所を散歩 大津で体験する大人の旅

リフレッシュ! 極上旅

 琵琶湖畔にあり、比叡山や京都の観光地も近い滋賀県大津市。この旅で泊まったのは、これまでにないユニークな宿泊施設でした。アーケード商店街の中にある7軒の町家を改装して客室にし、商店街全体を「ホテル」に見立てた「商店街ホテル」です。滞在中、常に感じていたのは、建物のしっとりとした風情と、近隣のイキイキとした空気。初めて訪れたこの街で、「旅先で暮らすように過ごす」という時間を満喫しました。

思い思いに過ごす町家ホテルの時間

 「泊まることで街を活性化させる」というコンセプトにひかれて宿泊した「商店街HOTEL 講 大津百町」。7棟の町家の中から私が選んだのは、一棟貸し切りタイプの「丸屋」です。

 チェックインは、フロントがある「近江屋」で。ルームキーの代わりに渡されたのは、玄関の鍵を開ける暗証番号を記したレターでした。鍵を失くす心配がないことに加え、チェックアウト時にわざわざ別棟のフロントに立ち寄る手間がなく、これは便利なシステムです。

 私は旅先でデスクワークをすることもよくあります。2泊3日のうち、1日目は部屋で仕事をしながら過ごそうと決めていたので、長い時間を書斎スペースで過ごしました。2階のベッドルームにあるデスクはミニマムで無駄がなく、ちょうどいい使い心地。旅の途中、ちょっとパソコンを使いたいというときに、こんなスペースがあると重宝します。

「丸屋」のダイニングテーブル。グループ旅行なら、ここでプチパーティーもよさそう(左)。快適なデスクとチェアがある書斎スペース。ポータブルテレビやタブレット端末も完備

 少し休憩しようかな、と思ったときは、「近江屋」のラウンジへ。ここにはおいしいコーヒーやお茶、地元のお茶を練りこんだ手作りクッキーが置いてあって、ゲストは自由に過ごすことができます(午前8時半~午後9時)。夕方に行くと、うれしいことに冷えたビールも用意されていました。

 初めて泊まった場所なのにぐっすりと眠れ、疲れをとることができたのは、静かな環境と、寝心地のいいベッドのおかげ。ベッドは、国内外のラグジュアリーホテルでも採用されているアメリカ・シーリー社のものです。

バスアイテムはドイツのエコ・コスメ、タオルはオーガニックのものが用意されている
夜は寝心地満点のベッドでぐっすり

 築年数の古い町家を改築しているだけに、一番心配していたのは水回りですが、お風呂もトイレも最新式で、とても快適。「丸屋」にはヒノキのバスタブがあり、窓越しにさわやかな光を感じながら朝風呂に入るのは、とても幸せな気分でした。

町家の温もりに包まれて、のんびりと部屋飲みも楽しい

 「商店街HOTEL 講 大津百町」に泊まる楽しみは、町家を体験できることだけではありません。近隣の商店街で買い物をしたり、食べたり、飲んだりすることこそ、このホテルを選ぶ最大の醍醐味だいごみといえるでしょう。

 近隣をぶらりと歩くと、老舗のお漬物屋さんや、お総菜屋さん、地酒がずらりと並ぶ酒屋さん……など、心をくぎ付けにするスポットがたくさん。そこで、滞在2日目の夜は外食をせずに、「家飲み」ならぬ「宿飲み」をすることにしました。

商店街で購入したお総菜で部屋飲み! 快適なダイニングルームは活用度大

 お店探しは、「近江屋」にあるコンシェルジュデスク(午前10時~午後9時)で。「今日はのんびりしたいから、部屋で一人飲みしたいんだけど」という相談に、コンシェルジュはおすすめの地酒やおつまみを売っているお店を詳しくアドバイスしてくれました。旅先では外食が当たり前だと思っていたけれど、これは楽しい! 地元で人気の味をおつまみにして飲む地酒は、思わず進んでしまいます。

 一棟貸し切りタイプにはキッチンがあり、簡単な調理道具と電子レンジが備えてあるので、部屋で自炊することも可能。私は料理こそしませんでしたが、朝、起きてすぐに自室でコーヒーを飲めるのは、とてもうれしい環境でした。

一棟貸しタイプに用意されているコーヒーミルやティーサーバー

 朝食は、予約をすれば、「近江屋」に併設されたレストランでいただくこともできます。テーブルには、大豆とえびを煮たえび豆煮、赤コンニャク、地元の川魚専門店にオーダーした特製鰻茶漬けなど、郷土の食材がずらり。野菜や米は基本的にオーガニックで、化学調味料などの添加物も一切使っていないのだそう。近江地方の豊かな恵みは、優しいお味でした。

3日目の朝は、すぐ近くにある「丸二果物店」のアボガドサンドとひきたてコーヒーで朝食
専用レストランでいただく朝食は、地元の特産品がずらり。無添加の調味料が使われている

 朝食の後は、ゆったりとしたスペースで身支度をして、近隣の散策へ。1人で一棟貸し切りはぜいたく過ぎるかなあと思っていたのですが、滞在してみると、しだいになじんで、なんだか親せきの家に泊まりに来ているような気分に。地域の素顔に触れることができたのも、旅の温かな思い出となっています。

商店街HOTEL 講 大津百町

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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