秋田・にかほ市から眺める名峰、鳥海山の絶景インスタスポット

リフレッシュ! 極上旅

 秋田県にかほ市のシンボルといえば、標高2236メートルの名峰、鳥海山。街のいたるところから見える雄姿は、迫力があって見とれてしまいます。一帯の自然は2016年、日本ジオパーク委員会によって、地球の成り立ちがわかる地形や地層などがある自然公園「鳥海山・飛島ジオパーク」として認定されました。そんな鳥海山の自然や絶景を堪能できるスポットをご紹介します。

神秘的なブナの木々が連なる、“不思議の森”を探検

 「不思議な森がある」と聞いて、興味津々で向かったのは、鳥海山麓の北側に位置する「中島台レクリエーションの森」。豊かなブナの原生林に鳥海山から湧き出る伏流水が流れ込み、国指定天然記念物「獅子ヶ鼻湿原」を形成しています。

 遊歩道が整備されたこの場所は、人気の散策スポット。多少の坂道はありますが、高低差が少ないので、旅では荷物になるトレッキング装備も必要ありません。私は最大限に森を楽しむべく、にかほ市の「観光案内人」を手配し、森を熟知したガイドとともに、1周(総延長5キロメートル)約2時間20分のコースを歩いてみました。

観光案内人と湿原を散策。異形ブナの成り立ちなどを詳しく教えてくれる
「中島台レクリエーションの森」は、遊歩道やつり橋が整備されていて歩きやすい

 なぜ、ここが不思議の森か。その理由は、歩き始めてすぐに気づきます。いたるところに、変わった形のブナの大木が茂っているのです。森と聞くと、すっと真っすぐに伸びた木々が並ぶ光景を想像しますが、一帯に見えるのは異形のブナばかり。太い枝が四方に広がり、まるでオブジェのように点在しています。

最大の見どころは、樹齢300年以上、幹回り約7.6メートルの巨木「あがりこ大王」
森に残る炭焼き窯の跡。ここから人々が暮らす村へ、炭が運ばれていった

 木々が独特な形をしている原因は、正確には分かっていないのだそう。江戸時代末期から昭和初期にかけて、この地域の人たちは、炭焼きのためにブナの枝を伐採していました。切られた枝が芽を出し、成長を続けたことから、切り口がこぶ状になったというのが有力な説。そうだとすれば、この絶景は人間と自然が共存していたからこそ生まれたもの。風景だけでなく、その成り立ちにも興味を誘われます。

口を開けた恐竜(左・中)や踊る猿(右)など、いろいろな形に見える異形のブナ

 桃源郷のような風景を見せていたのは、「出つぼ」と呼ばれる湧水地。鳥海山の雪解け水が、十数年かけてここに湧き出しています。なみなみと流れる透明な水と、びっしりと群生するこけ。その光景のみずみずしいこと! ここにいるだけでお肌も潤いそうです。別名は「クマの水飲み場」。この水は酸性が強く、それを知ってか、熊たちはまるで湯治場のごとく、ここに漬かって怪我けがを治すのだとか。

毎秒1.8トンを超える伏流水が湧き出る「出つぼ」
青白く神秘的な銀竜草。これを見るためにやって来る人も多い

 森をじっくりと見学すると、いろいろなものを発見します。ブナの形がライオンの顔や猿、ドラゴンに見えるのはとても面白いし、「森の妖精」とも呼ばれるツツジ科の多年草「銀竜草ギンリョウソウ」も神秘的。濃厚な緑の空気は心地よく、心からリラックスして森の散歩を楽しむことができました。「気持ちが落ち着くでしょう? 木漏れ日には、心を落ち着かせる作用があるんですよ」と、観光案内人の羽山みち子さん。日常を忘れ、癒やしの空間に包まれた時間でした。

海と渓谷を一望する絶景展望台

 鳥海山の絶景を、登山をせずとも眺められるスポットが、5合目に位置する「鉾立ほこだて展望台」。ここまで、車や乗り合い登山バス「鳥海ブルーライナー(6~9月は毎日運行、10月は第2週までの土・日・祝日運行。完全予約制)」で行くことができます。

 鉾立展望台に延びるのは、海抜ゼロから1150メートルまで一気に延びる山岳道路の鳥海ブルーライン。左右に緑が生い茂り、ドライブコースにもぴったりです。

鳥海山の5合目に位置する「鉾立展望台」からの絶景。西側には日本海が広がる

 展望台の西に見えるのは日本海と男鹿おが半島。東に広がるのは深い樹林の下を奈曽川が流れる奈曽渓谷。真っ白な残雪と濃厚な緑、青い空のコントラストはまるで絵画のようです。

東側には緑の渓谷が。ちょこんと山頂が見えているのは、鳥海山最高峰の新山

 ちなみに、山麓にある水田は、かつて潟湖せきこが存在していた場所。淡水と海水が入り混じる汽水湖に島々が浮かび、訪れた人々は景色を楽しむため、小舟で島巡りをするのが人気だったといいます。松尾芭蕉もその絶景を眺めるべく、「おくのほそ道」の旅に出たと言われるほど。ところが、芭蕉が訪れてから百十数年後の1804年に起きた象潟地震で一夜にして湖底が隆起し、現在の陸地となったのです。そんな鳥海山の歴史は、展望台のすぐ近くにあるビジターセンターで詳しく知ることができます。

 自然が作り出す景勝地に魅了されるにかほ市。この街を旅するなら、歩きやすいスニーカーで行くことをオススメします。

●観光案内人予約
●にかほ市
●にかほ市観光協会

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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