秋田・にかほ市へGO! 夏の絶景とごちそうを楽しむ週末旅

リフレッシュ! 極上旅

 「旬を迎えた岩牡蠣がきを食べにいこう!」。そう誘われて、6月下旬に旅をしたのは、秋田県にかほ市。県南部、山形県との県境にあり、山と海に抱かれた自然豊かな街です。誘われるまで街の名前さえ知らなかった私がここで出会ったのは、想像以上の絶景と、自然がもたらすおいしい食材でした。

マイナスイオンを浴び、カモシカに出会う

 秋田空港から車で約1時間。にかほ市に近づくと、山頂から日本海までなだらかな稜線りょうせんを描く名峰・鳥海山が目に飛び込んできました。到着して早々に見る絶景! 標高2236メートルの山頂から海岸線までの距離がわずか約16キロメートルという、世界的にも珍しい地形に目が奪われます。

 車の窓を開けると、気持ちのいい風が。秋田というと厳冬の印象が強いのですが、この辺りでは、冬もこの潮風のおかげで雪はほとんど積もらないといいます。

 この旅の一番の目的は、旬の岩牡蠣を食べること……ですが、羽田空港を出発して2時間で到着するアクセスのおかげで、ランチをするにはまだちょっと時間が早い。まずは、伏流水が織りなす風景が見られる「元滝もとたき伏流水」へと足を運びました。

「JALダイナミックパッケージふるさと応援割」でリーズナブルに旅ができる、にかほ市。到着したら、まずは朝の空気が気持ちいい「元滝伏流水」へ

 「元滝伏流水」は、鳥海山の溶岩の中に染み込んだ雨や雪が、長い年月をかけて湧き出す滝です。「平成の名水百選」にも選定されています。青葉の香り、ひんやりとした空気、葉擦れのサワサワという音……。苔岩こけいわに水しぶきがかかる滝の美しさもさることながら、そこに至るまでの散策道も、とても魅力的でした。

高さ約5メートル、幅約30メートルの岩肌一帯から湧き出す滝の水量は1日約5万トン

 ここには野生動物も生息しています。滝から帰る途中、木陰でモソモソと動く動物に遭遇。「もしかして、熊?」とドキッとしましたが、ちらりと顔を見せたのはカモシカ! これほど豊かな自然に出会える「元滝伏流水」ですが、駐車場から滝まで約10分と近いうえ、足元もフラットなので、気軽に歩くことができます。

 散策の後は、お待ちかねの岩牡蠣を。にかほ市には漁場がいくつかありますが、一番の人気ブランドが「小砂川こさがわの岩ガキ」です。鳥海山の伏流水で育まれた天然の岩牡蠣は、大きめで甘みが強く、味はこっくりとミルキー。「牡蠣=冬の食べ物」というイメージがありますが、この街の人たちにとっては、「夏といえば牡蠣!」なのだそう。そんな旬の味は、「温泉保養センターはまなす」の前にある漁協直売所や「にかほ市観光拠点センター にかほっと」で購入して、その場で食べることができます。

シーズンには県外からもこの牡蠣を目当てにやってくるという、「小砂川の岩ガキ」
岩牡蠣には地酒の飛良泉(ひらいづみ)がよく合う。暑い夏には凍らせて飲む「山廃 氷結生酒」が最高!

 鳥海山の伏流水を使った夏限定のおいしいモノは、スイーツにもありました。地元で愛されるお菓子屋さん「パティスリー 白川」の、伏流水を使った果実ゼリーです。パティシエの高橋徹さんが毎日、早朝に「元滝伏流水」へ通い、くみ取ってきた水が使われています。

鳥海山の伏流水を使ったゼリーは、にかほ市産のイチジク(手前右)のほか、近隣の木イチゴや桃、リンゴなど、バラエティー豊か

 口にすると、じゅわっと果実の甘みが広がって、とれたての果物を食べているかのよう。みずみずしくて、夏にぴったりのお菓子です。市内産のイチジク「ホワイトゼノア種」を使った「いちじくカシスゼリー」は、にかほ市ならでは。日持ちもするので、お土産にもぴったりです。

ノスタルジックな夕日を観賞したあとは、ヘルシーなフレンチを堪能!

 山と海に恵まれたにかほ市には、夕日の観賞スポットも多くあります。日本海に沈む夕日を眺めようと足を運んだのは、金浦このうら港。街中にある小さな漁港です。数ある夕日スポットからここを選んだのは、街の近くで、海と灯台のある夕景を眺めたかったから。

 港に向かう途中、いい香りを漂わせていたのは、持ち帰り専門の焼き鳥店「焼き鳥 カネトミ」。平日にもかかわらず、次から次へと老若男女のお客さんが買い求めにやって来て、順番待ちの列ができていました。旅先で、地元の人たちから愛される街角グルメを見つけたら、すぐに試してみたくなります。30分ほど待って購入、焼きたての焼き鳥を持って、そのまま港へ!

「焼き鳥 カネトミ」。地元の人たちから愛される街角グルメ

 夕日に染まる港は、釣り客の間を猫が闊歩かっぽしていて、ほのぼのとした雰囲気です。決して有名な観光地ではありませんが、日没はとてもフォトジェニック。夕日でシルエットを描く灯台と炭火で焼いた焼き鳥、こんな組み合わせも、なかなかオツでした。

観光スポットでなくても、絶景と絶品グルメがあり。焼き鳥を食べながら、金浦港で眺めるノスタルジックな夕景にほのぼの

 ディナーは、2018年4月にオープンしたばかりのフレンチ、「レメデ ニカホ」へ。「にかほ市内や近隣で取れた食材と、秋田ならではの発酵食文化を用いたフレンチ」というコンセプトが独特で、かれます。
 
 にかほ市に製造拠点を持つ大手電子部品メーカー・TDKがゲストハウスとして利用していたクラシカルな建物は、一見すると料亭のよう。こんな環境でフレンチをいただくなんて、ちょっとワクワクします。

 アラカルトメニューもありますが、この日は「シェフおまかせフルコース」をチョイス。シュー皮のなかに酒粕さけかすと地元牧場で作られたヨーグルトを入れたアミューズに始まり、にかほ産クレソンの冷製ポタージュ、枝豆あんとあわせて食べる自然飼育のフォアグラ、泡立てた味噌みそやキヌアを添えた地魚、イチジクのピューレをかけた比内鶏のパイ包み風など、9品の料理を堪能しました。

左上から時計回りに、にかほ産クレソンの冷製ポタージュ、シュー皮のなかに酒粕とヨーグルトを入れたアミューズ、泡立てた味噌やキヌアを添えた地魚、枝豆餡とあわせて食べるフォアグラ。どれもおいしい! (ランチ・ディナーともに予約制)

 土地の恵みのダイジェスト版のような贅沢ぜいたくなコースは、5000円(税別)。この価格で、このクオリティーのフレンチを楽しめて大満足です。シェフの渡邊健一さんは、東京の赤坂や銀座のレストランで活躍した後、約20年ぶりに帰郷。「豊かな自然や農産物など秋田の素晴らしさを、料理を通して届けたい」という思いから、このお店をオープンしたといいます。

 にかほ市で出会ったおいしくて新しいスタイルのフレンチに大満足の、旅先のディナーでした。

●パティスリー白川
●レメデ ニカホ
●にかほ市
●にかほ市観光協会

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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