台湾・台東で癒やし旅 田んぼ道をサイクリング、「金城武樹」で一休み

リフレッシュ! 極上旅

 風光明媚めいびな景色が都会に暮らす人たちにも愛されている台湾・台東。緑豊かな山や、青いグラデーションを描く海に目を奪われますが、ほかにも大人気の観光スポットがあります。それは、なんの変哲もない普通の木。でもここは、遠方からも続々と観光客が押し寄せる名所なのです。

金城武のCMロケ地が一大観光地に

 台東きっての人気スポットといえば、その名も「金城武樹」。2013年に台湾の航空会社、エバー航空のテレビCMでロケ地となった場所です。

 一帯はランドマークとなるような建物もない、のどかな田園地帯ですが、人気俳優の金城武かねしろたけしさんがこの木の下でお茶を飲むシーンがあったことから、一躍人気スポットとなりました。CM放送から5年たった今も、台湾全土から旅行者が押し寄せています。

 位置するのは、台東市内から車で1時間ほどの池上郷という街。一面の田んぼの中にある「伯朗大道」という道に、この木は立っています。

 伯朗大道は、自動車の進入は禁止されているため、「金城武樹」へと行く交通手段はサイクリングか徒歩のみ。近くの街道には駐車場付きのレンタルサイクルショップが何軒もあって、多くの観光客が自転車でお目当ての木を目指しています。私も自転車をレンタルして金城武の木へ。

田園風景の中を、多くの人が楽しそうにサイクリング

 自転車をこぐ視界に広がるのは、山並みと、緑の絨毯じゅうたんのように広がる水田。かすかな稲穂の香りも心地よく、どこか懐かしい風景に、ほのぼのとした気持ちになります。道の端に見える水路は米作りのためのかんがい設備。日本統治時代に、開拓民が地元の人たちと協力して造ったのだといいます。

水車と田んぼ。のどかな風景に心なごむ

 20分ほどでたどりついた「金城武樹」には、平日というのに、記念撮影をする人が何人も。1人ずつ、順番を守って譲り合いながら撮影している様子が、周辺ののどかな風景に溶け込んでいました。一時は観光客のゴミ捨てや騒音なども問題になったようですが、現在はマナーも守られているのでしょうか。

「金城武樹」は人々の撮影スポット。CMに似せて、急須をかたどったモニュメントも

 ちなみに、樹木の種類はアカギ。15年の台風で倒れたものの、地元の人たちや航空会社の尽力により、植え直されたといいます。田んぼも、観光名所の木も、地元の農家の方々が大切に守っているのでしょう。

 「それほど人気のスポットなら見ておこうか」という軽い気持ちで出かけてみましたが、観光地であることを抜きにして、土地の豊かさに魅了されました。

台湾で一番有名な駅弁と秘湯を満喫

 美しい風景を作り出す田んぼからは、極上のお米が生まれます。ここは台湾屈指の米どころ。空気がきれいであることはもちろん、雨が豊富で寒暖の差が激しい気候などが、おいしいお米ができる理由なのだそう。日本統治時代に改良を重ねているため、味や食感は日本のお米にも似ています。

 そのお米を使ったお弁当は、池上郷のご当地グルメ。街中では、たくさんの「便當(ビェンタン)」という看板を見かけます。便當はお弁当のこと。台湾語で発音すると「ベントン」といい、語源は日本語の「弁当」にあるとも言われています。

 池上駅で販売している「池上便當」は、台湾中の人たちが知る名駅弁。かつて、台東県の2大都市である花蓮市から台東市まで行くには、蒸気機関車でかなりの時間を要していました。ちょうど中間にある池上駅では燃料を補充するために一時停車をし、その間に売られていた竹の葉に包んだ簡素なお弁当が、台湾駅弁の元祖といわれています。

 「金城武樹」の近くには、この駅弁をテーマにしたユニークな博物館「池上飯包博物館」もあります。昔を再現したレトロな館内には、農機具やお弁当のレプリカを展示。もちろん、「池上便當」も販売されていて、醤油しょうゆ味の豚煮込みや、揚げたてのチキン、卵などを盛り付けたお弁当を、列車の車両を利用したイートインスペースで食べることもできます。

「池上飯包博物館」では、お弁当を買って昔懐かしい列車の車両で食べられる

 池上郷で遊んだ後は一路、温泉へ。台東県の温泉というと、知本温泉が有名ですが、ほかにも名湯はいくつかあります。私が訪ねた「丹堤温泉会館」は、池上郷から車で2時間弱(電車は池上駅から最寄りの金崙駅まで2時間弱)かかりますが、ここはぜひとも訪ねたかった場所。前回の記事でご紹介した金峰郷と同様、以前に取材で訪れて、そのお湯の良さと自然環境に、絶対に再訪したい! と思っていたところなのです。

「丹堤温泉会館」に到着すると、かすかに硫黄の香りが

 太麻里郷の山間に位置する「丹堤温泉会館」は、金崙温泉街の奥の湯にあって、秘湯感たっぷり。宿の付近にはかすかな硫黄臭が漂っていて、温泉情緒を感じます。

部屋のテラスには大きな半露天風呂が(左)。共同浴場に入りにくる日帰り客も多数。台湾では、水着着用で男女混浴が一般的

 客室は10室のみ。内装はシンプルですが、広さは十分にあるし、なによりすべての部屋に半露天風呂がついているのが贅沢! 私も夜と朝、部屋のテラスにある露天風呂を楽しみました。白濁したお湯は柔らかだし、鳥の鳴き声を聞き、青空を仰ぎながら入るお湯は極楽そのもの。これまで台湾の各地で温泉に入ってきましたが、こちらのお湯は格別でした。

●丹堤温泉会館

【オススメの関連記事】
台湾・台東県で伝統を守り、自然と共存する民族の文化に出会う

山と海に恵まれた台東県 台湾の原風景に癒やされる

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

JOURNAL HOUSE