美しい洋館に秘密の階段!? わくわくドキドキ地下壕の探検

リフレッシュ! 極上旅

 明治時代、日本最先端の軍港都市の一つとして華やいだ広島県の呉。その中心にあったのが、1889年(明治22年)年に開庁した「呉鎮守府庁舎」でした。当時の建物は、現在の「海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎」に引き継がれ、建物の一部が一般公開されています。海上自衛隊、総監部……と、その名前を聞いただけでもタフでハードな雰囲気を想像してしまいますが、建物はとても美しく一見の価値あり。さらに、旧地下作戦室の見学にもワクワクさせられます。

レンガ石造りの美しい建物は呉のシンボル

 海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎は、地下1階、地上2階建てのレンガ石造りの建物。玄関ホールに足を踏み入れると、厳かながらもりんとした美しさに、はっとさせられます。

玄関ホール。階段に赤いじゅうたんが敷かれ、重厚で美しい雰囲気

 この建物のルーツは、日本海軍の拠点である「呉鎮守府庁舎」。以前の庁舎は戦時中の空襲で外壁を残して焼失してしまいましたが、1999年に、往時の姿を復元する改修工事が終了。その美しい姿は、今も呉市のシンボル的存在となっています。

 「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴 ~日本近代化の躍動を体感できるまち~」として、日本遺産にも登録されているこの建物。一般公開日(日曜日。事前予約制。海上自衛隊呉地方隊のホームページで要確認)には、普段は見ることができない建物の一部を、隊員の案内で見学することができます。

建物はイギリス積みのレンガ石造り。精巧なデザインに目が奪われる

 公開されているのは、美しい庁舎だけではありません。なんと、敷地内に残されている旧日本海軍の地下作戦室も見ることもできます。

 戦時中、米軍による空襲の被害を避けるため、庁舎の裏側の崖の斜面を切り開いて造られたのが、地下壕。この中には、呉鎮守府司令部が作戦を指揮した地下作戦室もありました。ドラマや映画のセットではない本物の地下ごうは、いわば、歴史の証人。地上にある入り口から中をのぞくと、知られざる空間に続く階段がのびていました。

いざ、地下の作戦室へ!

 2階建て構造になっている地下壕の1階にあるのが、旧地下作戦室。戦時中、空襲による被害を最小限にとどめるため、重要書類はすべてここで保管されていました。当時、作戦室の壁一面には西日本の地図が貼ってあり、米軍の戦闘機が襲来すると、地図上のランプが点滅し、瞬時にその進行方向を知ることができたといいます。

かつての地下壕の入り口。地下に通じる50段の急な階段が続く。現在は別の入り口から入り見学する

 作戦室は中まで入ることができません。その理由は、国家機密だから……ではなく、安全のため。天井がところどころ破れていて崩落しかねない状態であることから、入り口から内部を見る見学スタイルとなっています。案内してくださった隊員の方が、「この地下壕は当時の最先端の技術が駆使されている、土木建築的に貴重な建造物でもあります。本当は、いろいろ見ていただきたいのですが」と話してくださいました。

 このほか、一般公開はしていませんが、地下壕には会議室と発電機室、換気施設、排水施設、通信室や事務室、映写室、休憩室もありました。この充実ぶりはまるでオフィス! 通信室には、大本営、呉鎮守府管下の各要所などにつながる電信・電話線もひかれていたのだそう。

旧地下作戦室。地下壕の中で一番広く、幅約14メートル、高さは最大で約6メートルもある

 地下壕は、500キロ爆弾にも耐えられるよう、耐弾性を重視して造られています。実際、米軍機の爆撃により庁舎が外壁を残して焼失した際も、地下壕は無傷で、保管されていた重要書類も被害を免れました。

 とはいえ、戦争が終わり、平和が訪れると整備されなくなってしまった地下壕。そんな戦争の遺産を公開しようと海上自衛隊が決断したのです。公開前に調査をして地図を製作したのは、地元にある呉工業高等専門学校の学生と教員の方々でした。海上自衛隊の依頼で彼らが活動しなければ、この地下壕は朽ちて忘れ去られていたかもしれません。地下の作戦室と聞いて探検気分で訪ねてみたのですが、歴史を伝えることの大切さを実感する旅となりました。

●海上自衛隊呉地方隊

【オススメの関連記事】

呉ならではのミュージアムと地元で愛されるスイーツ

「日本遺産」の広島県呉市 街の歴史と物語に浸る旅

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

JOURNAL HOUSE