呉ならではのミュージアムと地元で愛されるスイーツ

リフレッシュ! 極上旅

 明治時代に日本海軍の拠点である鎮守府が置かれ、日本トップクラスの産業技術都市となった呉市。当時の歴史を今に伝えているのが、市内にあるいくつかのミュージアムです。「歴史を学んでみよう」と、勉強するつもりで訪れた施設は、想像以上の面白さ! 展示物の迫力に圧倒され、好奇心が大いにかきたてられたのでした。

戦艦「大和」からのメッセージ、平和をかみしめる

 戦艦大和やまと。詳しく知らなくても、名前は聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。第2次大戦中、「絶対に沈むことのない最強の艦」を目指し、日本海軍が当時の最高技術を結集して建造した戦艦です。

 戦艦大和の建造は、設計者にさえ全体像が明かされないほど秘密裏に行われました。その工程はベールに包まれ、終戦まで日本中の多くの人がその存在を知らなかったと言われています。

 このミステリアスかつ壮大な戦艦が造られた地が、呉。「大和ミュージアム」(呉市海事歴史科学館)では、戦艦大和の忠実な再現模型を展示し、その歴史やストーリーを紹介しています。展示室に入るとまず目に飛び込んでくるのは、迫力ある戦艦。本物の大和を10分の1の大きさで忠実に再現しています。模型とはいえ、細かい部分まで精緻せいちに作り込まれていて、かなりリアル。

全長26.3メートル、10分の1サイズで再現された戦艦大和

 戦艦大和の建造は最高軍事機密だっただけに、残された写真は少なく、設計図もほとんどが戦禍で消失したり、戦後の混乱で紛失したりしています。どうやってこれほどまでに忠実な模型が作れたのかといえば、絹に記されて残っていた47枚の設計図や、潜水調査の際の水中映像などを元に完成させたのだそう。戦艦大和を造り上げた技術もすごいけれど、再現したワザもすごい!

細かい部分まで忠実に再現。その精巧さにも感心しきり

 大和が歩んだ生涯を紹介する展示室からは、当時の時代背景がありありと浮かび上がってきます。一般的に、船が完成した後の進水式はおめでたいものとして華やかに行われるものの、トップシークレットの大和はひっそりと行われたこと。食べるものにも窮する時代、建造費に国家予算の3%も費やされたこと。巨大な冷凍庫と冷蔵庫を要した豪華な造りから、ほかの艦艇には「大和ホテル」と羨望されていたこと。そして、無敵の不沈艦と言われながらも、世に出てわずか3年3か月後、アメリカ軍の猛攻撃を受け、壮絶な最期を遂げたこと……。大和の歩みを知るにつれ、当たり前のように感じている平穏な毎日が、かけがえのないものなのだと痛感しました。

 もちろん、悲しい戦争の話だけではなく、戦後、こうした戦艦を造る技術がどうやって復興に生かされたのかも展示されています。こちらも必見。

知られざる歴史のエピソードを学べる、ボランティアガイドによる展示解説ツアー

 これほどまでに引き込まれたのは、ボランティアガイドによる展示解説ツアーのおかげ。タブレットで図解や写真を見せながら、地元で語り継がれるエピソードを交えて解説してくれるので、とても胸に響くのです。ここを訪れるのなら、ぜひ、ボランティアガイドによる展示解説ツアー(10時と14時に開催。所要約1時間)を利用することをおすすめします。

 「大和ミュージアム」と並んで人気を集めているのが、「てつのくじら館」(海上自衛隊呉史料館)。潜水艦と掃海艇(機雷を除去する艇)をテーマにした珍しい施設です。

 この史料館の目玉のひとつは、中に入って見学できる本物の潜水艦。2004年まで海上自衛隊で使用されていた潜水艦「あきしお」の中に入ることができるのです。操舵そうだ室に魚雷発射準備室……、それらは初めて目にするものばかりで、まるで映画かドラマを見ているかのよう。深く静かな海の中では、きっといろいろなドラマがあったのだろうなあと、想像が膨らみます。

2004年まで活躍した潜水艦「あきしお」の中を探検気分で見学

 「てつのくじら館」では、機雷(船舶を無差別に攻撃する兵器)を除去する掃海艇についても詳しく解説展示しています。そこで初めて知ったのは、今でも戦時中に埋められた機雷が発見されることがあり、除去・解体作業は続いているということ。「潜水艦の中を見られるなら行ってみようかな」と気軽に訪ねたのですが、掃海艇が活躍しなくなる日が来ることを強く願った、濃厚な時間となりました。

●大和ミュージアム

●てつのくじら館

これぞ旅の醍醐味! 商店街でご当地スイーツの食べ歩き

 艦艇に潜水艦と、ふだんは触れることのない世界をのぞいた後は、市内のれんが通り商店街をぶらり散策。

 さっそく、地元の人たちでにぎわうお饅頭まんじゅう屋さんを発見。「びっくり堂」というお店の名物「びっくり饅頭」は、大型の大判焼き。焼きたては、表面はパリッとしているのに皮はしっとり、あんもたっぷりでおいしい! シンプルだけどしっかり手作りされていて、奇をてらわない素朴な和菓子は、ほっこりした気分にさせてくれました。

「福住」のフライケーキ。外側はサクサク、中はしっとり、ふっくら

 「おいしいからぜひ食べてみて!」と地元の人が勧めてくれたのが、「福住」の「フライケーキ」。食べてみると、カリッとした衣の中はふっくらとしていて、見た目よりあっさり。ケーキと名付けられていますが、砂糖をまぶしていない餡ドーナツのような和菓子です。昭和22年(1947年)創業の老舗らしい、どこか懐かしくなるようなお味でした。

「たまや」のアイス最中。米粉からできたパリッとした最中とあっさりしたアイスミルクが特徴

 もうひとつ、商店街の名物が、「たまや」で食べられる「巴屋のアイス最中もなか」。2017年秋に惜しまれつつ閉店した老舗の和菓子店「巴屋」のアイス最中を引き継いでいるのだそう。ジェラートのようなあっさりとしたミルクアイスを包んでいるのは、米粉から作られたパリパリの最中。歩き疲れた後は、こんなあっさりとしたアイス最中に癒やされます。

呉市で見つけた変わり種メロンパン。呉ではメロンパンといえばこれ

 ご当地スイーツで衝撃だったのは、「メロンパン」。ラグビーボール形で、生地はふんわりとやわらか、中には白餡のようなカスタードクリームが入っている菓子パンで、一般的なメロンパンとは形も味もまったく異なるのです。その名も「メロンパン」というパン屋さんで作られている、呉のソウルフードでもありました。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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