パリの小道に迷い込む!? 上海の旧フランス租界をぶらり散策

リフレッシュ! 極上旅

 日本から近く、アクセスもしやすい上海は、週末旅行にぴったりのデスティネーション。上海は広く、街の表情も場所によってさまざまですが、上海ならではの場所といえば、かつての外国人居留地である旧租界エリア。なかでも、西洋がかおる旧フランス租界は、女性におすすめの散策スポットです。

異国情緒漂う街で静かな風情を楽しむ

 素敵なフランス租界をさっそく散策! ――その前に、少しだけ歴史をおさらいしましょう。上海に租界ができたのは、19世紀半ばのこと。アヘン戦争でイギリスに敗れた清(現在の中国)は1842年、不平等条約である南京条約に調印しました。これを機に、イギリス、アメリカ、フランスは上海に租界を形成。黄浦江(ホンプージャン)沿いの外灘(ワイタン)はイギリスとアメリカの共同租界に、現在の淮海中路を中心にしたエリアはフランスの租界となったのです。

 ちなみに、この南京条約で香港はイギリスの植民地となっています(1997年に中国に返還)。上海の租界は植民地でこそなかったものの、中国の行政権が及ばない、税制上の優遇も保証された治外法権地域でした。すべての租界は1940年代に中国へ返還されましたが、当時の面影は今も残り、異国情緒を漂わせています。

 旧フランス租界で目にするのは、プラタナスの並木道に並ぶ、洋館やレンガ造りの民家。老房子(ラオファンズ)と呼ばれる古い洋館はカフェやバー、スモールホテルなどにリノベーションされ、隠れ家にいるような気分を味わわせてくれます。

プラタナス並木と南欧風の建物が連なる武康路
武康路の人気カフェ

 同じ旧租界地だった外灘はいつも家族連れや団体の観光客でにぎわっていますが、こちらは住宅街であることもあり、静かで、カメラ片手に一人歩きするのが楽しい場所です。

 フランス租界といっても「ここからここまで」と明確な線が引かれているわけではありません。散策の目安となるのは、通りの名前。1920年代建築の建物が並ぶ美しい「武康路(ウーカンルー)」、領事館をはじめとする重厚な建築が点在する「復興西路(フーシンシールー)」、老房子が並ぶ「思南路(スーナンルー)」など、それぞれに特徴があります。上海はどんなに小さな路地にも名前がついていて、これが旅人にはとても便利。地図が読めない(読まない)私でも、めったに迷子になりません。

上海っ子にも人気のスポットを探訪

 フランス租界のなかでも、その雰囲気が濃厚なのは「武康路」。地下鉄10・11号線「交通大学」から徒歩5分ほどの「武康大楼」あたりから、老房子や瀟洒しょうしゃな南欧建築が現れます。1924年に建てられた高級アパートメント「武康大楼」、その先には、激動の近代中国史を歩んだ女性政治家・宋慶齢(ソン・チンリン)の旧宅を利用した記念館など、歴史を物語る建物が点在しています。

形もユニークな「武康大楼」は、「ノルマンディー・アパートメント」と呼ばれた高級共同住宅。このエリアのランドマーク
武康大楼。古い建物を利用したカフェ(1、2階)

 この通りにある「武康庭(ウーカンティン)」は、オープンテラス席のあるレストランやカフェ、ブティックが入る複合施設。こうしたスポットは、流行に敏感な上海っ子にも人気で、休日はカップルたちでかなりの賑わいとなります。一方では、犬を連れて散歩をしている人がいたり、近隣に住む人たちがさりげないお洒落しゃれをしてティータイムを楽しんでいる様子も見られたりなど、上海の日常も感じることができます。

武康庭のユニークなオブジェ

 武康路と交わる湖南路や復興西路、五原路(ウーユェンルー)も雰囲気たっぷり。この一帯はチェーン店がほとんどなく、個人経営の小さなお店が多いのも、大きな魅力です。化学調味料を使わない上海料理店や、邸宅を利用したビアパブ、庭のある一軒家のタイ料理店、隠れ家のようなカフェなど、個性的なお店が目立つ看板を出すでもなく、ひっそりとたたずんでいます。

 フランス租界は、「このお店に入る」という目的で行くよりも、雰囲気を楽しんだり、独特の建物を写真に収めたりするのが楽しいエリアです。「食事をしたい」「お酒を飲みたい」「買い物をしたい」といった目的なら、1930年代建築の高級住宅をリノベーションした「思南公館(スーナンゴングァン)」へ。古い洋館を改装した複合施設というと「新天地」が有名ですが、こちらはそのラグジュアリー版で、超高級アパートメントホテルも併設しています。

1930年代建築の洋館をリノベーションした複合施設「思南公館」

 施設内にはブティックやレストランなどがあります。歩き疲れてしまった私は、「思南公館」のクラフトビアレストランでひと休み。窓の外に並木が見えるソファ席に座って冷えたベルギービールを飲むのは、至福のひとときでした。上海というと、エネルギッシュ、パワフルというイメージが強いけれど、こんなしっとりとした風景も、とても魅力的です。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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