ここは東洋?西洋? フォトジェニックな上海を巡る

リフレッシュ! 極上旅

 東京から飛行機で約3時間半(復路は約2時間半)。日本から近く、便数が多い上海は、週末を使った旅がしやすい街の一つです。上海料理やびょう、庭園などの観光スポットが知られていますが、女性にこそおすすめしたいのが、オールドタウン巡り。高層ビルが立ち並び、交通やライフスタイルも機能的ですが、その一方では、異国情緒を漂わせる風景も息づいています。

上海オールドタウンの王道、外灘ははずせない

 この十数年で目覚ましい発展を遂げた上海。上海は高層ビルが林立する一方で、昔ながらの雰囲気の街並みも残り、近代的な都市風景と見事なコントラストを描いています。

 なかでも、フォトジェニックな風景を見せているのが、租界。19世紀から20世紀にかけて作られた外国人居留地のことをいいます。1842年に上海が開港、清朝(現在の中国)がアヘン戦争に敗北してイギリスと南京条約を締結……という歴史を授業で習ったことは、なんとなく覚えているのではないでしょうか。当時、上海にはイギリスとアメリカの共同租界、フランス租界、そして日本人居住区が存在していました。

外灘に並ぶのは、19世紀後半から20世紀にかけて建てられた建物

 旧租界地に並ぶのは、異国情緒を醸し出す西洋の建物。建物が重要文化財として保存されている旧租界地は、決してテーマパークではなく、現代の人々の暮らしも垣間見られる場所です。旅好きにとって、これほど散策にぴったりなところはありません!

 上海を代表する旧租界地といえば、黄浦江ホンプージャン沿いにある外灘ワイタン。英語で海岸通りを指す「Bund」から「バンド」とも呼ばれ、上海を代表する観光名所にもなっています。

 19世紀後半に欧米列強国の租界地として作られ、歴史の表舞台に登場した外灘は、上海が「魔都」と呼ばれた往時の姿をしのばせる場所。そのドラマチックな歴史は、数々の小説や映画にも取り上げられています。「東洋のマタ・ハリ」「男装の麗人」と呼ばれた悲運の女性スパイ・川島芳子や、日中両国で人気を博した女優・香蘭こうらんなど、当時、上海で知られた女性たちの名前も思い浮かびます。

八角形のドーム形の天井が美しい「和平飯店」のロビー

 ピラミッド型の屋根が特徴の和平飯店は旧サッスーン財閥ビル、アール・デコ調のホテル・上海大厦は旧ブロードウェーマンション……。歴史探索気分で建築物を眺めながら外灘を歩けば、かつての華やかな時代が目に浮かびます。観光地なので人は多いのですが、次々と現れる美しい建物を前に、ひとときもカメラが手放せません。

クラシカルな名門ホテルを見学し、レトロなレストランでランチ

 租界が築かれた当時、外灘には、商社や銀行が次々と進出し、豪奢ごうしゃな西洋建築が建設されました。その一つ一つ、どれをとっても、歴史を物語る貴重なものばかり。それらは今、銀行や政府の建物として使われているものもあれば、リノベーションを経てレストランやカフェになっているものもあります。

 ぜひ館内に入ってみたいのは、「和平飯店」。サッスーン財閥の本拠地として建てられたアール・デコ様式の建物を利用した名門クラシックホテルです。一時期は老朽化も否めませんでしたが、3年間の改装を経て2010年、当時の雰囲気を残しながらも最新機能を備えたホテルとして生まれ変わりました。

「オールド・マン・ジャズバンド」で知られるジャズバー

 ここは、各国のセレブに愛されたホテル。チャーリー・チャップリンに蒋介石、周恩来、モハメド・アリ……と、名だたる人々が時間を過ごしています。そう聞くとハードルが高く感じてしまいますが、パブリックスペースには観光客がちらほら。五角形のロビーには自然光が差すガラス張りの天井があって、つい見とれてしまいます。

 ロビー奥の中2階には、ホテルが歩んだ歴史を紹介する小さな博物館(入館無料)もあります。言葉は分からなくても、レトロなカテドラリーや、宿泊した要人の写真などの展示物は興味津々。歴史あるこの建物の窓から、近代的な街の風景が見えるのが、なんだか不思議な感じです。

「外灘6号」にあるイタリアンレストラン(左)、パブリックスペースからもフォトジェニックなスポットが見える

 歩き疲れたら、ぜひ歴史的建造物を改装したレストランやカフェへ。外灘には「外灘2号」「外灘3号」などと名付けられた複合ビルがいくつかあります。

夜になるとライトアップされる外灘。「魔都・上海」と呼ばれた頃を思わせる

 「外灘5号」は日清汽船を、「外灘6号」は旧中国通商銀行ビルをリノベーションした複合ビル。それぞれ、イタリアンレストランやバー、高級日本料理店などが入り、独特の雰囲気のなかで食事を楽しむことができます。窓の外に見えるのは、黄浦江の対岸にある浦東プートン地区。ノスタルジックな空間でおいしい料理を食べながら、近代的な上海を眺める。そんな時間はとても贅沢ぜいたくです。

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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