おいしくて楽しい! 神戸の下町で心とおなかを満たす

リフレッシュ! 極上旅

 異国情緒を漂わせる旧外国人居留地や、洗練された港町が魅力的な神戸。でも、そんな風景のすぐ近くにも、思わず探検してみたくなるような「ザ・下町」が息づいています。なかでも、湊川にある「神戸新鮮市場」はミラクルワールド! 好奇心に誘われるままに、散策してみました。

西日本最大級の規模を誇る巨大商店街

 旅に出たときは、パンフレットやガイドブックでおなじみの建物や景勝地を見るだけでなく、その街の“素顔”ものぞいてみたくなるもの。知られざる風景はワクワクするし、そこにおいしいものがあれば、なおのこと引き寄せられてしまいます。そんなもくろみで訪ねたのは、湊川にある西日本最大級の商店街「神戸新鮮市場」。戦後から庶民の台所として発展し、親しまれてきた場所です。

 神戸市営地下鉄の湊川公園駅から地上に出ると、そこはミラクルワールドの始まり。南北約1kmのエリアに、3つの市場と2つの商店街が続き、飲食、物販、サービスなど計約500の店が軒を連ねています。その総称が「神戸新鮮市場」。規模と迫力は、都会の複合商業施設にも引けを取りません。

店内に瓶詰めされた自家製おかきが並ぶ「豆福」。お母さんが「これ、食べてって」と、次々と試食をすすめてくれる

 新鮮市場の中ほどにある「ミナイチ」こと湊川市場は、1918年(大正7年)に誕生した神戸初の公設市場をルーツとする老舗市場。1970年に10階建てのビルに建て替えられた際は、エレベーターを備えた当時最先端の市場として話題になったといいます。そんな時代に思いをはせながら散策するのも、なかなか楽しいもの。

「大貴かまぼこ」の名物「たまねぎコロッケ」は、ホクホクしたかまぼことシャキシャキした玉ネギのバランスがクセになる一品。1日1000個も売れるのだそう

 細い道の両側に所狭しと食料品店が立ち並ぶ「東山商店街」。歩いていると、純国産大豆と地下水を使うこだわりのお豆腐屋さん、味付けしたスルメを店頭で裁断するサキイカ専門店、50年間守り続ける糠床ぬかどこを使った漬物屋さんなど、足を止めてじっくり買い物をしたくなるお店が次々と現れます。

市場のなかでもディープゾーンと呼ばれるエリアで思わず立ち寄ってしまったのは、「稲田串カツ」

 そこかしこで誘惑するのは、おいしそうな香り。串揚げをつまんだり、蒲鉾かまぼこ屋さんでシャキシャキの「たまねぎコロッケ」を味見したり、お店の人とカウンター越しに会話を楽しみながら手作りの甘酒を飲んだり。歩いている間にすっかり、心も胃袋もすっかり満たされてしまいました。

レトロな空間に心地よくひたる

 神戸っ子の胃袋をつかんで放さないのが、市内随所に専門店があるソウルフード「お好み焼き」です。なかでもオススメなのは、お好み焼きをのりで包んだ「のり巻きお好み焼き」。

 その元祖と呼ばれているのが、1945年創業の老舗「お好み焼き ひかり」です。カウンターのほかにテーブルが1席あるだけの小さな店内は、地元のお客さんで大にぎわい。テイクアウトもできるので、ひっきりなしにお客さんがやってきます。

イチロー選手も愛した「お好み焼き ひかり」。名物「のり巻きお好み焼き」(下)

 初めて食べた「のり巻きお好み焼き」は、意外や意外、パリッと焼かれたのりと、ふんわりとしたお好み焼きが相性抜群。お店のおかあさんがチャキチャキと鉄板でお好み焼きを焼く様子を見るのも楽しい。気どらないこんな雰囲気や料理に、知らなかった神戸の一面を見たような気分になりました。

 お店の近隣も、ちょっと散策してみたくなるようなレトロな雰囲気が漂います。ビリケンさんで有名な松尾稲荷神社の近くには、メニューから店のたたずまいまで懐かしさいっぱいの喫茶店や、手書きの看板があって、まるで昭和にタイムトリップしたかのような街並みが広がっています。

懐かしさいっぱいの「喫茶ベニス」。コーヒーもおいしく、居心地は満点

 初めて訪れたのに、懐かしいこの雰囲気。決して演出されたものではなく、昔から変わらない世界は、とても居心地がよくて、ずっとそこにいたくなるほどでした。

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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