燃え立つ紅葉を楽しみ、写経や座禅で心静める 古都・鎌倉の小旅行

リフレッシュ! 極上旅

燃え立つ紅葉が幻想的な長谷寺

 紅葉が見頃を迎えた鎌倉。寺社の庭も色づき、しっとりと美しい風景を見せています。12月9日には、冒険ファンタジー映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」の公開も始まり、ますます鎌倉が気になるこの頃、秋色の古都を散策しました。

秋色に染まる庭園とライトアップされた紅葉にうっとり

 鎌倉を代表する紅葉の名所といえば、長谷寺。回遊式庭園にもなっている美しい境内は、一年じゅう花や緑が絶えることなく、「鎌倉の西方極楽浄土」とも呼ばれています。

 目の前に広がっていたのは、まさにその呼び名どおりの絶景! 観音山の裾野に広がる下境内と、その中腹に切り開かれた上境内からなる立体感のある風景に、色づいた木々が美しく調和しています。下境内にある二つの池、妙智池と放生池の水面みなもには木の葉が映りこみ、どこもかしこも、秋一色。

長谷寺のライトアップされた紅葉

 拝観は、まずは下境内から。「大黒堂」にまつられている「さわり大黒天」に触れて、開運を祈願。庭園を歩いていると、かわいらしい「良縁地蔵」や「なごみ地蔵」に出会って、気分が和みます。由緒あるお寺ですが、こんな“ほっこり”が随所にしかけられている長谷寺が、私は大好きです。

「さわり大黒」をなでなで。開運や財福の御利益があるそう
出会うと思わずニッコリしてしまう、和み地蔵(左)と良縁地蔵

 傾斜地を利用した散策路を歩いて、上境内へ。ご本尊の十一面観音菩薩像(長谷観音)が安置される観音堂や、源頼朝が42歳の厄除けに建てたという阿弥陀あみだ堂、鎌倉の街並みと海を一望する見晴台など、ゆっくりと見て回ります。

 上境内にある「観音ミュージアム」には、「十一面観音立像(前立観音)」をはじめとする貴重な文化財が展示されています。三十三の姿に変化して衆生を救済するという「三十三応現身像」は圧巻! 観音菩薩の教えを分かりやすくひもといた映像も斬新で、思わず引きつけられてしまいました。

長谷寺の観音ミュージアム「三十三応現身像」の一部(左)。あらゆる方向に顔を向けて衆生を救済するといわれる「十一面観音立像」

 この時期、長谷寺では夜間特別拝観(日没~午後6時閉門、同6時半閉山)も行われ、紅葉がライトアップされます。日暮れから次第に幻想的な風景へと変わる境内は、まるでファンタジー映画を見ているかのような美しさでした。

写経、竹林の抹茶 心を癒やす特別体験

 景観に思わず見とれてしまう鎌倉の古刹こさつ。日頃の忙しさを忘れさせてくれるのは、美しい眺めだけではありません。写経や坐禅など、さまざまな体験も、心を整えてくれるはず。

 臨済宗建長寺派の大本山である建長寺は、鎌倉幕府の執権・北条時頼により創建された日本で初めての禅寺。どっしりとした山門をくぐると、樹齢700年を超える柏槇ビャクシンの古木に迎えられ、古刹らしいりんとした雰囲気に包まれます。

建長寺の山門。下をくぐると、心が清浄になるといわれている

 国の名勝史跡に指定されている庭園が有名ですが、ぜひ体験してみたいと思っていたのが、写経。境内には写経の間があり、ゆったりと心を落ち着かせながら静かに自分と向き合うことができるのです。道具一式はその場に用意されているので、時間内はいつでも自由に、自分のペースで始めることができます(毎日午前10時~午後3時、一巻1000円)。

写経は時間内であれば、申し込み不要(左)。金・土曜の午後5~6時に法話を聞き、座禅体験できます(不定期開催・拝観料のみ)

 写経の種類は2種類用意されています。般若心経はんにゃしんぎょうは1時間、延命十句観音経は20分が目安。私は、文字数が少なく気軽に体験できる延命十句観音経にトライしてみました。写経といっても、薄く下書きがされているので、「上手に書けない」と気が散ることなく、ひとつひとつの文字に集中することができます。日頃は外出先でも「あのメールにまだ返信していなかった、どうしよう」とか、「明日の仕事の準備をしなくちゃ」と、先の心配ばかりしている私ですが、「今、この瞬間」に向き合うのはとても気持ちがよくて、写経を終えた頃にはとても清らかな気分になっていました。

 すがすがしい気分で建長寺を後にして向かったのは、1334年に創建された報国寺。1000本を超える孟宗竹もうそうだけが育つ庭はあまりにも有名ですが、秋を迎えた今は、紅葉と竹林がコントラストをなし、見事な風景を見せています。

鎌倉随一の竹林を有する報国寺。「休耕庵」で抹茶を一服

 凜とした空気が漂う竹林の中の石畳を歩いたところには、茶席「休耕庵きゅうこうあん」があり、お抹茶を楽しむことができます(拝観料200円、抹茶代500円)。

 心地よい風と、竹林のかおり。そのなかでの一服は、心を癒やしてくれます。人気のお寺で拝観者も多いのですが、その空気と時間は格別で、安らぎを与えてもらいました。

 古刹を歩き、紅葉を楽しみ、ちょっと特別な体験もできる鎌倉は、東京から気軽に足を延ばせるのも魅力のひとつ。関東のなかでも穏やかな気候なので、12月に入ってもまだまだ紅葉が楽しめます。

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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