東京湾に浮かぶ猿島へ 知的好奇心を満たす無人島の旅

リフレッシュ! 極上旅

猿島のビューポイント。オイモノ鼻から海を一望できる

 風が心地いい秋は、都会を離れて自然の中を散策したくなります。週末、ぶらりと出かけたのは、神奈川県横須賀市にある無人島の猿島。無人島といっても、はるばる遠くへ出かけたわけではありません。ここは都心から気軽に足を延ばすことができるアクティビティースポット。自然に加え、歴史遺産もあって、大人の知的好奇心を満たしてくれる絶好の旅先なのです。

10分の船旅で都会を離れ、自然豊かな猿島に到着!

 横須賀市内の三笠桟橋から船で約10分。市街地のすぐ近くにある島とは思えないほど、猿島はこんもりとした緑に覆われています。

猿島は横須賀市の三笠桟橋から1.7キロ。船でわずか10分

 ここはかつて海軍の要塞があった場所。明治時代に東京湾口の防備を固めることを目的に要塞が造られ、第2次大戦の終戦まで一般人の立ち入りは禁止されていました。島に築かれた要塞と聞くと、大海原に堂々と立つ屈強な建物をイメージしてしまいますが、すべての施設は岩壁を彫って造られているので、島の外からはまったく見えないようになっています。つまりここは、秘密のとりで

猿島の桟橋。桟橋付近にはボートデッキがあって、海を眺めながら休憩できます

 島内にはレンガ積みのトンネルや砲台跡などの旧軍施設が残り、それらは国史跡に指定されています。フェリーを降りて、さっそく散策をスタート。歩き始めるとすぐに、うっそうとした緑の中に要塞跡が見えてきました。

 幅4メートル強の道の両側には、石やレンガを積み上げた壁が続いています。ところどころにドアが設えてあるのは、弾薬庫や兵舎の入り口。弾薬庫には、地上と連絡をとるための、土管を利用した伝声管まで作られていたそうです。そんな歴史を知るにつれ、だんだんと探検気分に。

道に沿ってある壁には、兵舎や爆弾庫が作られています

 さらに進むと、レンガ造りのトンネルが。この中には、旧軍の司令部跡があります。要塞の重要な基幹部分でもあったこの薄暗い施設の中で、戦局を巡って様々な思惑が入り交じっていたのでしょうか……。トンネルを出た先には、4か所の砲台跡がありました。

過去と現代の狭間にいるような、不思議な感覚を覚える島

 要塞の跡地をしばらく歩くと、これまでの風景とはうってかわった見晴らしのよい場所に出ました。オイモノ鼻と呼ばれる岬は、天気がよければ、横浜ベイエリアから千葉県の房総半島までを一望できるビュースポット。この日は、大海原を走るヨットの姿も見られました。

 ふたたび木々が茂る道を歩いて船着き場へ。島にはたくさんのクスノキが育っていて、鎮守の森のよう。都市の近くにありながら、ひっそりと作戦を練る場所として、ここはぴったりの場所だったのかもしれません。

 写真を撮りながら、歩くこと1時間半。分かれ道には標識もあり、施設の説明板もあるので、迷うことなく史跡を楽しむことができました。帰りの船を待つ時間は、売店で見つけた地ビールで、渇いた喉に水分補給。海の向こうに見えるのは、ビルが立ち並ぶ都会の風景。まるで現代と過去の間にいるような、不思議な感覚を覚えました。

島の目と鼻の先には、都会の風景が

 ちなみに、この島には野生の猿が暮らしているわけではありません。1253年、日蓮上人が房総から鎌倉へ渡る途中で嵐に遭遇、この島へ避難した際、1匹の白猿が現れ、安全な場所へ案内したという言い伝えから、猿島という名が付いたのだそうです。

港近くの地場産物総合販売所「よこすかポートマーケット」で地元食材のランチ

 三笠港に戻ったところで、ランチタイム。船着場から歩いてすぐの「よこすかポートマーケット」は、魚屋さんやベーカリーなどが入る地場産物総合販売所で、購入したものをフードコートで食べることができます。私も海鮮弁当でおなかを満たしました。

地ビールの猿島ビールとミネラルウォーターをお土産に

 無人島で遊んでも、まだまだ時間はたっぷり。JR横須賀駅近くのヴェルニー公園で軍艦を眺めたり、どぶ板通り商店街を散策したりして、1日を存分に楽しむことができました。猿島は毎週土曜・日曜にはボランティアガイドによる島内ガイドツアーも実施されているとのこと。次回はじっくりと、ガイドの話を聞きながら歩いてみたいと思っています。

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海大学文学院へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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