秘湯の宿でほっこり~奥美濃でココロとカラダを癒やす

リフレッシュ! 極上旅

ステンドグラスが階段を優しく照らすロビーラウンジ

 自然の中でのんびりしたい。そんな思いから旅に出た岐阜県南部、美濃地方。日常を忘れ、リラックスするための旅だからこそ、宿選びは重要です。宿泊したのは、関市の山間やまあいにある秘湯の一軒宿。緑に囲まれた旅館の中には、極上の時間が流れていました。

せせらぎが聞こえる山間の一軒宿へ

 市街地を通り抜け、美しい緑と板取川を車窓に眺めながら車で走ること約1時間半。大自然の中に「神明温泉 湯元すぎ嶋」はひっそりと立っています。

「神明温泉 湯元すぎ嶋」の門を入ると、手入れの行き届いた庭が広がる

 客室のある本館は、古民家を移築し改装したもの。囲炉裏のあるロビーと、上品に黒光りするケヤキの廊下が、心地よく非日常へと招き入れてくれます。そんな和の風情にうつくしくとけ込むのは、階段を優しく照らすステンドグラスや、静かに流れるジャズのBGM。「秘湯の一軒宿だから、民芸調の旅館なのだろう」という想像をくつがえす独特の趣に、チェックイン早々、胸が高まります。

ロビーの風情ある囲炉裏

 広い建物に、客室は12室のみ。満室でも混みあった感じがなく、ゆったりとした気分で過ごせます。私が泊まったのは、囲炉裏付きの部屋。10畳の和室のほかに、6畳の囲炉裏の間があります。どっしりとしたはりや柱、外の緑を映す窓が、旅の疲れを忘れさせてくれました。

囲炉裏付きの標準客室

 館内の廊下はすべて板張りになっています。スリッパが用意されていないのは、廊下にパタパタと足音を響かせない、ほかのゲストと履物を共用せず、心地よく過ごしてほしいという気配りから。部屋には、履き心地のいい足袋型靴下も用意されていました。

 このお宿は「日本秘湯を守る会」の会員でもあります。夕食までの時間は、名物のお湯を満喫することに。露天風呂と大浴場のほかに、本館奥の高台には、ゲストが無料で利用できる貸し切り野天風呂(50分間・予約制)もあります。竹林に囲まれた遊歩道を歩いていくアプローチといい、緑に包まれたなかで入る源泉かけ流しのお風呂といい、秘湯感たっぷり。すぐそばを流れる板取川のせせらぎを聞きながらヒノキの湯船に浸るうち、身体の疲れはとれ、心もすっかりほぐされていきました。

旬のものを、囲炉裏端で食べる幸せ

 お湯で心身をほぐした後は、なにより楽しみにしていた夕食の時間。食事は囲炉裏付きの食事どころでいただくので、湯上がりのリラックスした気持ちのまま過ごせます。懐石料理のメニューを見て驚いたのは、使われている食材の数の多さと、そのほとんどが地元産であること。魚は海のものではなく、新鮮な川魚が中心だし、山菜は山へ分け入り摘んできたものばかりです。

板取川のせせらぎが聞こえる貸し切りの野天風呂

 囲炉裏で焼くのは、最高級の飛驒牛や、この時期に旬を迎えていた特産のあゆなど。ほかにも9種類の小鉢が籠に美しく盛られた前菜や、すっぽんの茶碗ちゃわん蒸し、鮎のうまみが染み込んだ香ばしい土鍋ご飯など、次々と運ばれてくる料理は、興味と食欲を誘います。野菜もお肉も手打ちそばも食べて、「おなかがいっぱいでもう食べられない!」と思っていたのに、結局、最後のデザートまでしっかりと平らげてしまいました。

囲炉裏端で夕食。手前は小鉢が籠に入った前菜

 これからの季節は、秋のキノコや冬のジビエなど、奥美濃ならではの食材も登場するのだそう。旅の醍醐味だいごみといえば、そこに行かなければ食べられないものを味わうこと。こんな食事は、おなかだけでなく、食への好奇心もしっかりと満たしてくれます。

「何から食べよう」と迷うほどの品数。充実の朝食に大満足!

 野天風呂とおいしい夕食で満たされた翌日は、早起きをして大浴場へ。水面に周辺の緑が映りこむ露天風呂は空気もすがすがしく、最高の気分です。さらに朝食は、囲炉裏で焼きながら食べるほお味噌みそや、自家製味噌で作る優しいお味の味噌汁、新鮮な野菜など、身体にいいものばかり。旅の2日目を気持ちよく迎え、チェックアウトまでの短い時間も十分に満喫して、宿を後にしました。

神明温泉 湯元すぎ嶋

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海大学文学院へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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