自然と文化が調和する、美濃加茂を歩くアートな旅

リフレッシュ! 極上旅

長良川河畔で行われる「小瀬鵜飼」

 岐阜県南部の美濃地方を旅する楽しみの一つは、豊かな森の中に築かれたアートスポットや、長良川に寄り添う伝統文化を体験すること。「自然と隣り合わせの文化」に触れて、たくさんの思い出を心に刻みませんか?

自然とアートが溶け合う心地よい鎮守の森へ

 この旅でもっとも長い時間を過ごしたのが、美濃加茂市にある「みのかも文化の森」。広大な敷地内にミュージアムあり、豊かな森あり、古墳時代の遺跡あり、屋外アートあり、心地いいカフェあり……と、五感で楽しめる場所です。

 JR美濃太田駅からはタクシーで約10分。市街地から離れていないのに、なんだか遠くへ来た気分になるのは、空気がとても澄んでいるから。もともと、ここは隣接する加茂神社の敷地の一部だったといいます。鎮守の森だからなおのこと、すがすがしい気持ちになれるのかもしれません。

「みのかも文化の森」内の「美濃加茂市民ミュージアム」

 「みのかも文化の森」の中心的な施設となっているのが、「美濃加茂市民ミュージアム」。常設展示コーナーにあるのは、一帯の発掘調査で見つかった、弥生時代や古墳時代、奈良時代の出土品です。特に歴史好きでもないのに夢中になってしまったのは、この遺跡がちょっとミステリアスだったから。出土品の内容から、古代、この地は政治的な機能を持つ重要な場所だったと考えられているものの、奈良時代にその形跡が消えているというのです。思わず、中南米で高度な文明を築きながら忽然と姿を消したマヤ文明の都市遺跡を思い出してしまいました。

森の中にはアート作品が点在。朝や夕方の散策も気持ちがよさそう

 時代を遡る展示室もあれば、刺激的な現代アートに触れることができる企画展示室もあります。それらをたっぷりと鑑賞したあと、広大な森を歩いてみました。小鳥のさえずりを聞きながら、緑の中に点在するアートを見る散策はとても気持ちがいい! この森には、宿泊できるアトリエもあって、クリエイターが滞在しながら公開制作に取り組むこともあるのだそう。自然と文化が調和したユニークなスポットは、難しい芸術の知識を抜きにして、楽しむことができました。

ティールーム「bee cafe」で緑を眺めながら最高のランチタイム

 アート鑑賞と散策を満喫した後は、敷地内のティールーム「bee Cafe」でランチ。料理は見た目もかわいらしく、大満足です。オープンテラスは緑を眺めることができる、最高のランチスポットでした。

みのかも文化の森 美濃加茂市民ミュージアム

長良川で行われる幻想的な「小瀬鵜飼」にうっとり

 この時期に美濃地方を訪れるのなら、ぜひ見ておきたいと思っていたものが、美濃加茂市のお隣、関市の長良川河畔で行われる「小瀬鵜飼おぜうかい」。鵜を使ってあゆをとる、古代ゆかしい漁法で、その歴史は1300年に及びます。毎年5月11日から10月15日までの158日間、行われています。

 「小瀬鵜飼」は皇室御用達という由緒正しいもの。継承の技術が認められて、2015年に日本で初めて「長良川の鵜飼漁の技術」が国の重要無形民俗文化財に指定されました。

鵜を使って鮎をとる、1300年続く伝統の漁法

 日が暮れ、いよいよ見学のとき。かがり火が映る水面で、漁が始まりました。見学客は観覧船(乗り合い船1人3400円~)に乗って観賞します。辺りに響き渡るのは、伝統的な衣装をまとった鵜匠うじょう(鵜飼漁をする人)の「ホウホウ」という掛け声。漆黒の闇の中、かがり火だけを頼りに鵜を操る鵜匠の手縄さばきや、水中に潜ってはしなやかに鮎を捕らえる鵜の姿は圧巻です。

 辺りは山に囲まれていて人工的な光もなく、雰囲気はとても幻想的。鵜飼は別の場所で見学したことがありますが、この「小瀬鵜飼」は、より情緒を感じることができました。

「小瀬鵜飼」の鵜匠たち

 現在、関市の鵜匠は3人。宮内庁式部職の肩書を与えられている、とても貴重な存在です。鵜は鵜匠の訓練を約3年間受け、一人前に育つのだそう。つまり、鵜匠と鵜の間には信頼関係が築かれているのです。これを1000年以上も伝承していることに驚かされます。美しい長良川に寄り添う古式ゆかしい文化を眺めながら、ここを旅することができてよかったと実感しました。

小瀬鵜飼

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海大学文学院へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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