映画のセットみたい?! 宿場の面影を残す中山道太田宿

リフレッシュ! 極上旅

中山道太田宿には、フォトジェニックなスポットがたくさん

 どっしりとした構えの歴史建造物、美しく連なる黒塀……。まるで時代劇のセットを歩いているかのような気分にさせてくれるのは、岐阜県美濃加茂市にある中山道太田宿なかせんどうおおたじゅく。国の重要文化財もあれば、アンティークな建物のカフェやパン屋さんもあるこの通りは、ぶらりと散策するにはぴったりの場所です。

せせらぎを聞きながら、今に息づく宿場情緒をぶらり散策

 江戸時代の五街道のひとつ、中山道の宿場町の一つとして栄えた太田宿。かつてここには、20軒の旅籠はたごや、2軒の問屋場といやば(現代でいう、宿泊施設案内所と配送会社を兼ねたような施設)、そして民家もあり、大いに賑わっていました。今も黒塀が続く街並みが残り、当時の面影をしのばせています。

 宿場町として栄えた風格を放っているのは、「旧太田脇本陣林家住宅」。江戸時代中期の1769年に建てられた脇本陣です。本陣は、大名や幕府のお役人など、身分の高い人が泊まる幕府公認の旅館のこと。つまり、江戸時代のVIPホテル。その予備的な施設が脇本陣です。林家は太田宿の脇本陣を勤めるかたわら、庄屋として行政事務を取り仕切る旧家でした。

「旧太田脇本陣林家住宅」。屋根の両脇にある「うだつ」に注目。内部は一部公開されている(入館無料。9~16時。月曜休館。*月曜が祝日の場合は公開、火曜休館)

 その一部が公開されているので、ぜひ建物の中に入ってみましょう。竹や木を縦または横に組んだ連子窓れんじまどや美しい格子戸に、うっとり。光と風が通り抜ける心地よいこの建物で、大名が長旅の疲れを癒やしていたんだなぁ……と想像をめぐらせるのも、旧跡を訪ねる醍醐味だいごみです。「屋根の両側にあるのは、防火壁の『うだつ』。お金に余裕のある裕福な家しか、造ることができなかったんですよ。『うだつが上がらない』の語源です」など、興味深い話も、常駐するガイドさんが教えてくれます。

 「お休み処 旧小松屋」は、旅籠だった建物を、そのまま活用した無料の休憩施設。当時の家具や調度品が置かれて、ここも雰囲気たっぷり。国の有形文化財に指定されている貴重な建物ですが、畳の上でゆっくりとくつろぐことができます。

「お休み処 旧小松屋(8時半~17時。無休)」。散策の途中でひと休み

 情緒あふれる太田宿のすぐそばを流れるのは、木曽川。江戸時代はこの川を舟で渡るのは大変なことで、中山道の三大難所のひとつといわれていたのだそう。私が訪れたときは、緑の中をゆるやかに流れる川のせせらぎが、心地よく古い街並みに響いていました。

中山道太田宿

江戸情緒のなかに残るレトロで新しいスポット

 旧街道の面影を残す一角で、コーヒーのいい香りを漂わせているのは、自家焙煎のカフェ、「コクウ珈琲」。香りにつられて、昭和初期建築の郵便局を改装した店内に入ってみると、レトロとモダンが調和した心地のいい空間が広がっていました。

 いれたてのコクウブレンド(450円・税込み)を飲みながら、のんびり。店内は広くはありませんが、席と席の間隔も広いので、ゆったりとした気分に浸れます。椅子やテーブルも主張が強すぎないのに「ステキだなあ」と思わせるものばかりで、つい長居したくなってしまいます。

コクウ珈琲。昭和元年に建てられた郵便局を利用した居心地のいいカフェ

 おいしいコーヒーをいれるかたわら、オーナーの篠田康雄さん、友美さん夫妻は、「きそがわ日和」というアートイベントも手掛けています。これは、美濃加茂市の古い街並みを生かしながら、アート作品や建築を音楽、食文化を紹介するプロジェクト。クリエイティブと木曽川の流れる美しい自然が共存しているなんて、なんともうらやましい環境です。

コクウ珈琲

ぱん工房「いまやす」に併設された「街 道 C a f e」

 太田宿を歩いていて、ユニークな構えのパン屋さんも見つけました。パン工房「いまやす」は、おそば屋さんのような建物が目印の、地元で愛されるパン屋さん。建物は、街並みを保存したいという思いから、あえて江戸風情にしつらえたのだそう。パンが並ぶ店の奥には、カフェスペースが併設されていて、セットメニュー(飲み物代+100円)や購入したパンが食べられます。ログハウス調の空間でいただく焼きたてパンは、ほっこりとした気分にさせてくれました。

パン工房いまやす

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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