お寺のワンダーランド「女人高野」奈良・室生寺

癒やしの楽園 by 三好和義

 京都のお寺も好きですが、最近、僕がひかれているのは奈良です。由緒ある寺も数多く、中でも一番のお気に入りは室生寺むろうじ。ここは、女性のための特別なお寺です。かつて、高野山が女人禁制だった頃に、女性のために開かれたお寺として「女人高野」と呼ばれています。
 室生寺に向かうには、近鉄「室生口大野」駅で降り、バスに乗ります。室生川に沿って山あいの道を進みます。静かな川音を聞きながら、バスに揺られる。素朴な風景を見るうちに、厳かな気持ちになってきます。室生の里に着いて、朱塗りの太鼓橋を渡るとお寺があるのです。 室生の里です。山に囲まれたひっそりとしたたたずまい。日本の原風景のように感じます。室生寺が特別なのは、ひと山がお寺になっていること。金堂や五重塔などをさまざまな角度から拝見できます。まるでお寺のワンダーランド。これほど写真映えするお寺はありません。

 夕方の金堂。うす暗くなった周囲。お堂の中に優しいあかりがともります。金堂の中には御本尊さまだけでなく、十一面観音さまなど国宝、重要文化財に指定された名仏がずらり。

 勇壮な十二神将立像が並ぶ金堂。干支の守り神です。金堂の中にあるのは、いつも10だけ。十二神将なのに? 残りの2体は、奈良国立博物館におられるのです。

 金堂の名仏の中でも、一番お美しいのが、この十一面観音像。写真界の大御所、土門拳さんが撮って有名になった室生寺。僕も土門さんに憧れて幼い頃から室生寺に通っていました。土門さんは十一面観音さまを力強く撮られていました。僕は優しい慈悲の御心を写しました。

 この室生寺ほど自然と共生しているお寺もないと思います。僕はよく鹿児島の屋久島に行っていますが、この寺に来ると、屋久島の自然を思い出します。初夏にはシャクナゲが境内に咲き乱れ、秋は紅葉。この室生寺を撮った写真展を現在、入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催中です。

 

三好和義(みよし・かずよし)
写真家

 1958年徳島県生まれ。「楽園」をテーマに、タヒチやハワイなどの南国の島々から日本の世界遺産まで幅広く撮影。84年当時最年少で木村伊兵衛賞を受賞。近著は世界中のリゾートを集めた「青の楽園へ」(PHP)。Amazonプライム・ビデオで「RAKUEN 三好和義と巡る楽園」を配信中。