南蛮文化が香る癒やしの島「天草」 キリシタンの歴史に浸る

リフレッシュ! 極上旅

 南蛮文化に影響された独特の文化と、キリシタンの歴史が息づくノスタルジックな街並み。さらに、とびきりのグルメや温泉まである熊本県の天草地方は、一度は足を運びたい場所。透き通るような海に囲まれた天草の魅力をご紹介しましょう。

旅情高まるレトロな列車やイルカ飛行機

 熊本県の南西にある天草地方は、二つの大きな島(上島かみしま下島しもしま)と大小120あまりの島々からなっています。観光スポットは上島と下島に集中。島といっても、上島は五つの橋「天草五橋」で熊本県宇土半島先端の三角みすみと結ばれていて、その西にある下島とも橋でつながり、実際は一つの大きな島のようなサイズ感です。

 天草に行くために、まずは、より旅情を高めてくれる二つのアクセス方法を紹介します。

特急「A列車で行こう」の車内。まるで映画のワンシーンのよう

 一つは、熊本駅から鹿児島線・三角駅まで運行しているJR九州の特急「A列車で行こう」。南蛮文化をモチーフにデザインされたレトロな雰囲気の特急は、車内にジャズのナンバーが流れ、乗車したとたん、旅は始まったばかりなのに、気分が盛り上がります。
 
 バーカウンターで熊本産デコポンのハイボールを片手に、有明海や雲仙・普賢岳を眺めるのも、なかなか優雅です。三角港で接続運航しているクルーズ船の「天草宝島ライン」に乗り換えて、デッキで海風を満喫していると、あっという間に天草に到着。熊本駅からの所要時間は約1時間半です。

「天草エアライン」は、かわいらしい「みぞか号」1機のみで各地を結ぶ、日本で一番小さな定期航空会社

 もう一つは、「天草エアライン」。第3セクターの航空会社で、天草空港と福岡空港を35分、熊本空港までは25分で結び、大阪伊丹空港からも熊本空港経由で2時間20分で天草に到着します。親子のイルカがデザインされた48人乗りの機体、「みぞか号」がとにかくキュート! 天草空港で飛行機を降りて車で10分も走れば、天草の中心地、本渡ほんどに到着します。

 低空飛行のため、快晴時には、長崎の雲仙・普賢岳や天草五橋を眼下にはっきりと見ることもできます。移動というよりも、気分は遊覧飛行。シートポケットに用意された手作りの機内誌にも心が和みます。

「A列車で行こう」 土・日・祝日のほか、GWや夏休みは毎日運行。普通列車は、通年で毎日三角駅まで運行。全席指定

「天草エアライン」

キリシタンの祈りが息づくノスタルジックな漁村へ

 ぜひ訪れておきたいのが、天草下島の中南部、美しい羊角湾の入り江にある崎津さきつ地区です。天草は16世紀に南蛮文化とともにキリスト教が伝わったことで知られる地ですが、ポルトガル人宣教師が布教活動を行っていた場所のひとつが、この崎津周辺。今もクリスチャンが暮らし、信仰が息づいています。

 そんな歴史的背景から一帯は世界遺産登録を目指していますが、そこにあるのは、昔と変わらない素朴な漁村の暮らし。細い路地に民家が並び、野良猫が堂々と港を歩く風景は、のんびりとしていて、まるで時が止まっているかのようです。

左・海の天主堂と呼ばれる「崎津教会」、右・天草のシンボル「大江教会」

 人々の暮らしを見守るのは、別名「海の天主堂」とも呼ばれる「﨑津教会」。建物はゴシック様式で内部は畳敷きという珍しい造りの教会に入ると、ほっと心が落ち着くから不思議です。日曜朝はミサが行われ、地元の人が集まります。

 かつて、布教活動が行なわれた街というと神聖なイメージがありますが、地元の人はとても気さく。ぜひ、休憩処の「南風屋はいや」に立ち寄ってみましょう。ここの名物は、約220年前、琉球王の使節団から伝授された「幻のようかん」を復活させた「杉ようかん(110円)」。あん入りの餅に杉の葉をのせたお菓子は、羊羹ようかんというより餅菓子のようでクセになります。保存料を使用していないので、賞味期限は1日だけ。天草に来なければ食べられない味で、お菓子を作っているおばあちゃんたちの“弾丸トーク”も魅力的です。

 この崎津地区からほど近くにある大江地区の丘の上に立つのは、大江教会。キリシタン弾圧の歴史を経て、昭和初期、ヨーロッパから天草へ赴任した神父らの力で建てられた白亜の教会は、天草のシンボルにもなっています。

芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海大学文学院へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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