ノーモア!不平等 北マケドニアの女性監督が「怒り」を映画に

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「ペトルーニャに祝福を」のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督
テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督

キリストの受洗を祝う女人禁制の伝統的な祭礼に、女性がちん入する――。「ペトルーニャに祝福を」は、北マケドニアの静かな地方都市を揺るがした実話に基づく物語。同国出身のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督は、「不平等な社会への怒りから映画を作った」と話す。

司祭が川へ十字架を投げる、東方正教会の「神現祭」。飛び込んで最初に手にした男性は1年間幸せに過ごせると信じられている。2014年、同国シュティプで十字架をつかんだのは一人の少女だった。教会や住民は激怒したという。

地元メディアも報じた。「少女をバカにした論調。許せなかったわ。彼女が川に飛び込んだ理由を取材すれば、重要な問題提起ができたはず」。ならば自らの手で、と脚本を書いた。

32歳の主人公ペトルーニャは、大学卒業後も就職できずバイト暮らし。セクハラされた上に不採用を告げられた面接の帰り道、川面を流れてくる十字架を見て、とっさに水中へ飛び込む。

「不公平感や屈辱感が爆発したのよ。ノーモア!(もうごめんだ)ってね」と声をあげ、続ける。「もちろん、伝統は私たちと切り離せないもの。でも、変化に取り残されているなら、定義し直さなければ」

十字架を「盗んだ」として、ペトルーニャは警察に連行される。返すよう迫られても「私に幸せになる権利はない?」と譲らない。「伝統に反発したことで、彼女は勇気と力を得たの」

本作は、19年のベルリン国際映画祭で二つの賞を獲得した。シュティプの神現祭では近年、十字架を手にした女性が祝福されたという。「メッセージが伝わっている。芸術の力で社会のルールを変えられる」と、手応えを語る。

1974年、旧ユーゴスラビアのスコピエ生まれ。米ニューヨーク大で映画づくりを学び帰国したが、監督デビュー作で壁にぶつかった。「映画界の男性たちは取り合ってもくれなかった」。弟妹と製作会社を設立。妹をプロデューサーに、作品を撮り続ける。

「『ノー』と言われると、『やってやる』とファイトが湧く。後進のために、どんどん扉を開いていきたい」

22日公開予定。

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