映画「椿の庭」で主演の シム・ウンギョン「まるで異世界のよう」

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渚(シム、写真右)は、絹子(富司、同左)との生活の中で様々なことを教わっていく (C)2020 "A Garden of Camellias" Film Partners

公開中の「椿の庭」(上田義彦監督)は、ある祖母と孫娘の暮らしを通して、何げない日々の尊さを描く作品。富司純子と共に主演を務めたのは、「新聞記者」で昨年、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受けた、シム・ウンギョン。四季のうつろいの中で、内面の成長を遂げる女性をこまやかに演じている。

古家の陰影 感じられる絆

富司が演じる絹子は、シム演じる孫の渚と、海を望む高台の家にふたりで暮らす。相次いで娘、夫を亡くした絹子は、家族の思い出が残る家を守りたいのだが、相続税の問題から、家を手放すことを迫られている。

渚は、疎遠だった娘の忘れ形見で、米国からやってきて間もないという設定。写真家で今作が第1作となる上田監督は、「静かで強い存在感」にひかれてシムをキャスティング。シムは以前、上田監督による写真撮影を経験しており、「独特の美意識」に感銘を受けていたという。

舞台となった古い日本家屋が趣深い。庭には、ツバキ、フジ、アジサイといった折々の美しい花が咲く。撮影は2018年、神奈川県葉山町で、1年にわたって断続的に行われたという。

「まるで、異世界に入ったようでした」とシムは振り返る。「考えてお芝居をするというよりも、おうちの雰囲気をたっぷりと感じることで生まれてくるものを、大事にしたいと思いました。本当に生活しているように見えてほしかったのです」

「渚を演じたことで、私自身も成長したと感じています」(C)KAYOKO ASAI

自然光を調整しながら丁寧に撮られた映像は陰影に富んで美しいが、それだけではない。「光と影が作る演出によって、人間のたたずまいや、人と人との絆を深く感じられるのでは」と話す。「自然と共に人が生きていく姿を、ゆっくり、じっくりと見せています。スピード感が重視される今の時代だからこそ、光る作品。何を自分の中で大切にして生きていくか、考えさせられると思います」

共演した富司の存在は大きかった。「最初は何を話したらいいかと緊張しましたが、とてもすてきな方で。お芝居を準備する姿勢、作品に対する熱量が誰よりも大きくて。富司さんに寄り添うことで、渚が演じられました」。お茶の入れ方、桃の切り方など、日常的な所作も演じる前に教わったという。

ソウル出身の26歳。韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」「怪しい彼女」などで人気を確立し、17年から日本でも活動を始めた。日本への関心は、高校時代、米国に留学した際、友人の影響で日本のアニメや映画に触れたことがきっかけだったという。「新聞記者」での評価は大きな励みだ。「いまだにおめでとうって言われ、本当にうれしいことです。もっと役者としての責任感を持って頑張るしかないと思っています」

(読売新聞文化部 右田和孝)

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