三吉彩花さんと阿部純子さんがダブル主演を務める映画「Daughters(ドーターズ)」が18日(金)に公開されます。妊娠や出産など、人生の決断に揺れる現代女性を描いた作品です。東京・中目黒でルームシェア生活を送る二人の女性を演じた、三吉さんと阿部さんに、役作りや撮影のエピソードを聞きました。
【映画の内容】
堤小春(三吉彩花)と清川彩乃(阿部純子)は、ともに27歳。東京・中目黒のマンションの一室で暮らしていた。2人はよく働き、よく遊び、自由を謳歌していたが、ある日、変化が訪れる。彩乃が妊娠したことを小春に告白したのだ。一人で子どもを産んで育てるという彩乃を、小春はそばで支える決意をする。
2人いっしょの空間が心地よい
―――お互いの印象を教えてください。
阿部さん 三吉さんと一緒にいる空間は、最初から居心地がよくて、意識して「話をしなきゃ」というのが、ぜんぜんなかったんです。妊娠して出産するという、自分の経験にない役だったので、悩むことも多かったのですが、いつも三吉さんが相談にのってくれました。ずっと寄り添ってくださって、とても頼りになる方です。頼りになる反面、かわいいなあと思えるところもあって。例えば、音楽がかかってると踊り出すところとか(笑)。

三吉さん 純ちゃんとは同じ会社なので、会議室ですれ違ったとき、「お疲れさま」とあいさつする程度の間柄でした。最初は少し緊張しましたが、打ち解けるのは早かったです。現場に行けば、そこに純ちゃんがいると思うと、すごく安心感がありました。純ちゃんが彩乃で良かったと思うし、いっしょにお芝居できたことは、私にとって大きかったですね。撮影が終わり、時間がたつに従って、自分の中から小春が離れていく感覚が寂しくて。いままでは、オンとオフをはっきり分けていたので、初めての感覚でした。
―――親友役を演じるために、撮影前に2人で過ごしたそうですね。
阿部さん 三吉さんが、「2人が暮らすマンションに行ってみよう」と提案してくれたんです。部屋でいっしょに過ごして、表参道から渋谷まで歩いて、目に留まったお店に入ったり、おなかがすいたらランチしたり。楽しかった! 演じるというより、自然な雰囲気で、すっと小春と彩乃に入っていった感じです。
三吉さん すぐに小春と彩乃がいっしょにいる空気感ができあがったんです。撮影中もずっといっしょにいましたし、ずっといっしょに悩んでました。日を追うごとに、「純ちゃんが彩乃でよかった」という思いが強くなっていきました。

―――演じるうえでとくに意識したことはありますか。
阿部さん 彩乃は妊娠によって、ライフステージが変化します。戸惑う心情をどう表現するのか、いつも頭に置いて演じていました。妊娠・出産について、いろいろな方に話を伺ったり、監督と話し合ったりしましたし、本や資料を読むときも「彩乃目線」を意識しました。例えば、「ママになるとは」という本を彩乃だったら、どんな気持ちで読むのだろう……とか。
三吉さん 彩乃は妊娠して、おなかが大きくなるにつれ、手がしびれたり、からだが痛くなったりします。自分でもわからない苛立ちを抱える彩乃を、どうやって支えればいいのだろう……。小春として彩乃を支えたい気持ちと、芝居に向き合って悩んでいる純ちゃんを支えたい気持ちがシンクロしてしまって。役として考えているのか、自分として考えているのか、段々わからなくなって。とにかく、純ちゃんの芝居を必死で受け止めて、ちゃんと返すということを意識しました。いい意味で純ちゃんのペースに巻き込まれた感じです。
自分らしい人生を生きること
―――撮影を振り返って、とくに印象に残っているシーンは?
阿部さん たくさんあります。妊娠中にイライラして小春とケンカするシーンや、いっしょにプールで泳ぐシーン。でも、一番好きなのは、小春のモノローグが入るシーンですね。小春の声のトーンや映像の色彩に、そのときの心情が投影されていて、とてもステキなんです。
三吉さん ストーリーが進むにつれ、何か所かに小春のモノローグが入って、そこでいったんフラットになる。そういうニュアンスも映像表現も新しくて、印象的なんです。
阿部さん 中目黒の桜並木がうつくしくて忘れられません。桜の中を2人が歩いているシーンは、東京で生きている女性らしい華やかさもあって印象的でした。
三吉さん 桜は散り際で花びらが降ってきて、とってもキレイなシーンが撮れました。なじみのある中目黒とは違っていて、「こんな街だったっけ」と感慨深かったです。いまでも中目黒に行くと、あのときの桜を思い出します。

―――この作品に出演して得たものは何でしょう。
阿部さん 自分はどういうふうに生きたいのか、考えるきっかけになりました。女性の生き方って多様化していますよね。誰かの考えに縛られるんではなく、自分らしく生きるライフスタイルってステキだと思います。小春らしく、彩乃らしく、そして私らしく生きる。自分にとって心地いいと思えるライフスタイルを見つけたいと思いました。
三吉さん 前向きでポジティブな考え方でしょうか。自分の人生はどうなるのかな、どんな人と出会って支え合っていくんだろう……。そんなふうに思えるようになりました。一年前に撮影していたときは、女優としてのあり方とか、どういうふうに芝居をしていきたいかとか、すごく考えていました。いまのような難しい状況になって、完成した映画が映画館で上映される事の喜びや、いろいろな人に映画を届けられるありがたみを感じています。次に出会う作品や演じる役が楽しみになりました。
―――働く女性として、大切にしていることはありますか。
阿部さん 自分だけでできることって、とても少ないと思います。困ったときは助けてもらえるように、周りの人とコミュニケーションをとっておくことが大事だと思います。助けてくれる人がいれば、心にゆとりができるでしょう? 一人で何でも抱え込まないことです。
三吉さん わたしは、悩むのもいいことだと思っています。以前テレビで、「悩んでいる時間やプレッシャーを楽しめるようになったら、次のステップに進むチャンス」という話を聞いて、すごく共感したんです。たくさん失敗して、そこから学んで成長していく。成長したら、回りの期待値も上がるから、さらにプレッシャーは大きくなります。でも、それを恐れないで、楽しめるようになれたら、いいなと。悩んでいる時間も無駄じゃないし、意味があるものになると思います。
(聞き手/読売新聞メディア局 後藤裕子、撮影/稲垣純也)

【映画情報】
『Daughters』
脚本・監督:津田肇
出演:三吉彩花、阿部純子、黒谷友香、大方斐紗子、鶴見辰吾、大塚寧々
配給:イオンエンターテイメント、Atemo
公式サイト
9月18日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開