香取慎吾 三谷作品のコメディードラマで「愛されキャラ」

インタビュー

SMAPの元メンバーで、歌手、俳優、アーティストとして幅広く活躍する香取慎吾さん(43)が、三谷幸喜さん脚本・演出のオリジナルドラマ「誰かが、見ている」(Amazon Prime Videoで18日から独占配信開始)で主演を務めます。何をやっても失敗を繰り返す主人公・舎人とねり真一の奇想天外な生活ぶりが見どころです。香取さんに、役へのこだわりや作品への思いを聞きました。

愛されキャラ「舎人真一」を熱演

©︎2020 Amazon Content Services LLC

「誰かが、見ている」は、書斎の壁に偶然、発見した「穴」から、隣人の舎人真一(香取さん)の生活をのぞき見するのを楽しみとしている粕谷次郎(佐藤二朗さん)を中心とした「シットコム」(シチュエーションコメディーの略)という手法で撮影されたドラマ。何をやっても失敗ばかりの愛されキャラ・舎人真一の魅力が随所に描かれています。

――今回のドラマは、2002年に出演したドラマ「HR」(フジテレビ系)と同じシットコムという手法で撮影されましたが、どんなところが難しかったですか?

「HR」も三谷さんの作品でしたが、18年も前ですか。「誰かが―」は、隣人の佐藤二朗さんが、壁の穴から僕をのぞくという話なんですが、僕からは佐藤さんの演技が見えないんですよ。相手が何てセリフを言っているのか分からないのに、掛け合いをしているように見せなければいけない。ワンカットごとにカメラを止めずに演じ続けるので、佐藤さんのセリフが聞こえないとなると、誰かの合図で僕はしゃべり始めなければなりません。

セットのいろいろな所にスタッフが隠れていて、僕が視線を向けると、セリフを言うきっかけの「キュー」を出してくれます。普通のドラマだったら、キューを出す人がセット上にいても不自然ではないのですが、舞台のようにお客さんを撮影スタジオに入れています。舞台に近い演出なので、お客さんからスタッフが見えたらおかしいんです。究極だったのは、真一の部屋の奥の方にあるキッチンには、スタッフが隠れる場所がない。それで実は、スタッフは天井に隠れていて、上からキューを出していたんです。でも僕は上を向くわけにはいかないので、そのスタッフの気配を感じて演技をしていました。とても楽しかったです。

三谷作品の魅力とは

――香取さんはこれまでも、数多くの三谷さんの舞台やドラマに出演していますが、どんなところが魅力ですか?

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うーん。あまり言うと三谷さんはいやがるかもしれませんが、演じるのが結構難しいです。セリフだけではなく、表情ひとつで、この先起こることにつながってしまいますから。実は後々起こることを知っているのに知らないふりをして、演じなければいけない。とは言っても、「実は」の部分を知っているので、まったく知らないような表情でもいけない。こんなことが他にもいっぱいあるんですよ。セリフの言い方だけではなく、表情や目線も重要です。無意識に視線を動かしたことが、じゃまになってきます。目線の動きひとつで、その先のストーリーが変わってしまう。

――撮影までに、何度も綿密な確認や打ち合わせをするのですか?

それが、三谷さんからは事前にあまり言ってこないんです。実際の演技を見てから、「そこ、もうちょっとどうにかしてほしいんですけど」と言うぐらいなんですね。だから自分で答えを見つけなければいけない。それでも、「うーん。ちょっと違います。そうじゃないんだけどな……」とか言われる。あまり「難しい監督です」って言うと、三谷さんが「あまり言わないでください」っていやがるかもしれませんね。

難しさがあるから僕は好きなんですけどね。でも、三谷さんは正解の時に本人には教えてくれないんですよ。「今のよかったよ」とも言ってくれないし。監督が気になった役者さんには言いに行くみたいですね。笑えるコメディーというだけでなく、表情、目線、指の動きひとつひとつが緻密ちみつに計算されていて、ものすごく複雑なんです。いいのか悪いのかあまり言ってくれないと、自分が間違っているのかどうか分からずに、深みに陥ることがあります。

要求を断ることも

――今回のドラマもかなり計算しつ尽くされている内容ですが、どのような気持ちで撮影に臨んでいますか?

「舎人真一」の役として、その時間を生きるしかないですね。彼として演じてみて、彼はこうしないんじゃないかな、違うんじゃないかと思った時は、「彼は、そうは動けません」と、三谷さんの要求を断ることも時々あります。そうすると、「じゃ、こうだったらあなたは動けますか?」と代替案をくれます。「それだったら動きやすい」と納得して演技すると、受け入れてくれます。そんなやりとりは結構あります。

――別の取材で、三谷さんが、舞台「日本の歴史」が終わった時に、香取さんに「次は何をやるんでしたっけ?」と聞かれて「シットコムです!」と答えたそうなのですが、その時の香取さんのうれしそうな顔が印象的だったと答えていました。

「HR」でシットコムをやった時もすごくおもしろかったので、またいつかやってみたいとずっと思っていました。今回のドラマも、自分が参加する、しないにかかわらず、ぜひ見てみたい作品でした。だから参加できて、とてもうれしいです。

嫌いだったミュージカルに挑戦し、お互いを分かり合えた

――三谷さんと長く関わってきて、たくさんの作品に出演してきましたが、分かり合えたという実感はありますか?

どちらかというと、分かり合えているという実感はありますね。いつ頃かはっきり覚えていませんが、三谷さんが「本当に自分がやりたいとことをすごく分かってくれる俳優さんです」と、僕のことを何度も言ってくれるようになりました。僕も三谷さんの期待に応えているんじゃないかと思い始めた頃でした。だから、お互いに分かり合えているんじゃないかな。

――それはいつ頃ですか?

今なんとなく頭に浮かんだのは、2009年の11月、ニューヨークでのミュージカル公演「TALK LIKE SINGING」の存在が大きかったかもしれませんね。

三谷さんからはずっと「ミュージカルをやらないか?」と言われていました。「苦手なので、舞台とかミュージカルとか生の演劇はやりたくないです」とお断りしていたんですが、三谷さんが脚本を書いたNHKの大河ドラマ「新選組!」(04年)に出演していた時に、スタジオの前室で「ニューヨークで一緒にミュージカルをやろう!」というお話をいただいたんです。「ニューヨークでならいいですよ」と答えたのですが、それから数年たって、「ニューヨークのミュージカルが決まったのでお願いします!」と三谷さんから言われました。

僕はジョークのつもりだったのに、それを現実の形にされてしまったわけですが、ともに大きな目標に立ち向かおうと一緒に挑みました。その時からですね。どうにかして、三谷さんの作りたい形に近づきたいという思いが強くなったのは。

――今回の役柄は、どんなイメージで演じましたか?

曽我そと子役の宮澤エマさん(左):©︎2020 Amazon Content Services LLC

三谷さんからは「少年みたいな男」というリクエストがありました。みなさんも同じようなイメージを持っていると思いますが、YouTube「しんごちゃんねる」のコーナーの「しんごちん」という子供のキャラクターは、僕も得意ですし、そういうイメージ通りのキャラクターでした。

――少年のようなキャラクターなのですね。

そと子さん(宮澤エマさん)との関係も、三谷さんが「子供の心を持った男だよ」って。確かに、保育園や幼稚園に通うような小さな子でも「『この子、僕の彼女だよ!』なんて言っていたりするよな」と納得しました。

ゴローちゃんとの共演「変な感じ」

――毎回、豪華なゲスト俳優が登場しますが、稲垣吾郎さんが演歌歌手役で、久しぶりにドラマで共演することが話題になりました。稲垣さんとは気心が知れているので、やりやすかったり、逆に気恥ずかしかったりしましたか?

ゲスト出演した、演歌歌手・レッツ大納言役の稲垣吾郎さん(左):©︎2020 Amazon Content Services LLC

よく知った仲ですが、稽古やリハーサル中は、お互いに集中できるよう、気を使って演技以外では特に会話はしませんでした。初共演の俳優さんだったら、「今日はありがとうございました。お疲れ様でした!」って普通にあいさつしますけど、ゴローちゃんにそういうふうにあいさつするのは、なんかおかしいんですよ。その結果、何も話さずに帰りました。変な感じになっちゃいますね(笑)。他の現場で共演しても、普段から「おはよう」のあいさつをしたことはありませんね。本当に変ですね。あ、でも最後に「SNS用に一緒に写真撮ってくれますか?」ってお願いしました()

――稲垣さんと、役者として対峙たいじするのはいかがでしたか?

僕は、初共演の俳優さんを見るような感じで、「ここはこういうふうにやるんだ」って、新鮮な感じで見ていました。ゴローちゃんは、初のシットコムにちょっと戸惑っている様子でした。通常の舞台だったら、1か月間ぐらい稽古をするんですが、今回は前日に数時間稽古して、簡単な説明があった後、「頭から通しまーす」って、テンポ良く進むんです。他のゲストの皆さんもそうだと思います。僕がゲストだったら、かなり冷や冷やすると思います。

笑顔でみんなを幸せに

――今回のドラマには、盗撮された真一の様子がネットで公開され、それを見た世界中の人たちが笑顔になるというシーンが何度かインサートされています。香取さんがひとを笑顔にする秘けつは何ですか。

笑顔って簡単なのに、簡単に消えてしまうものです。笑顔がないまま過ごすことも、やろうと思えばできますが、笑顔でいた方がお互いに心を開きやすいと思います。笑えない時にあえて笑おうと、無理にでも口角を上げて笑顔を作ることはできるし、その方が人を幸せにできると思います。今のつらい状況の中、家にいる時間が多くなって、「ああ、最近、笑っていないな」と気づくことがありますが、自分から行動を起こさないと笑顔は作れません。僕も家にずっといて、気分が落ち込むことがありました。でも、真一のように前歯を出して笑うと明るい気持ちになれたので、早く皆さんに笑顔を届けたいです。(取材/読売新聞メディア局編集部・遠山留美)

【公開情報】オリジナルドラマ「誰かが、見ている」(18日からAmazon Prime Videoにて独占配信開始)

脚本/演出:三谷幸喜

出演:香取慎吾、佐藤二朗、山本千尋、長野里美、宮澤エマ、夏木マリ

ゲスト出演:くっきー!(野性爆弾)、西田敏行、髙嶋政宏、寺島進、稲垣吾郎、山谷花純、近藤芳正、松岡茉優、橋本マナミ、八嶋智人、さとうほなみ、小日向文世、大竹しのぶ、新川優愛、小池栄子(登場順)

制作プロダクション:株式会社ギークサイト、株式会社ギークピクチュアズ

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