森田望智とeill、ホラー「あの子が生まれる・・・」で注目

インタビュー

森田望智さん(右)とeillさん

女優の森田望智さんが、動画配信サービス「FOD」で配信中のホラードラマ「あの子が生まれる・・・」(毎週土曜午前0時に最新話更新、全10話)で、ドラマ初主演を果たしました。昨年、Netflixで配信されたドラマ「全裸監督」でヒロインの黒木香を体当たりで演じ、一躍脚光を浴びた森田さん。本作では、とある郊外の病院で謎めいた妊婦の世話をする看護師役を演じています。主題歌「Night D(ナイトドライブ)」(8月5日配信リリース)を手掛けたのは、R & BやK―POPなど様々なジャンルを取り入れたサウンドで注目を集めるシンガーソングライター・eill(エイル)さんです。今後の活躍が期待される若手2人に話を聞きました。

ドラマ初主演に喜びと驚き

――主演と聞いた時、どんな気持ちでしたか?

森田さん とてもうれしかったけれど、驚きもすごく大きくて、喜びと驚きが半分ずつというのが正直な気持ちでした。私自身はホラーが苦手だったので、「私で大丈夫なんだろうか」という不安もありました。

――主演俳優は、撮影現場では「座長」として、共演者や撮影スタッフを引っ張っていく役割も求められますね。

森田さん 座長さんにはあこがれていましたが、菜央がどちらかというと受け身の姿勢の役柄なことも影響してか、私が引っ張るというより、私の方が周りの皆さんに助けられながら、流れについていくという感覚に近かったです。共演の皆さんは、お芝居にすごいパワーがあり、個性的で、本当に助けられました。

ドラマ「あの子が生まれる・・・」より

【ストーリー】看護師の今泉菜央が勤務する「新生病院」は、かつては由緒ある総合病院として地域の人々に親しまれたが、ある出来事がきっかけで衰退の一途をたどっていた。この病院にある日、故意に救急車にはねられた妊婦・英子が緊急搬送されてきた。そのまま入院した英子は、一言も話をせず、不気味な笑みを浮かべるだけ。英子がやって来てから、病院内には奇妙な現象が相次ぎ、不穏な空気が流れ始める。

――どんなことを意識して、菜央を演じましたか。

森田さん 彼女には、思い出したくない過去があって、それをずっと背負いながら生きています。頭の片隅に「あの時、こうすればよかった」という後悔がずっと残り続けているんです。「菜央ちゃんって、すごく生きづらいだろうな」と、いつも思いながら演じていました。

――このドラマの見どころは?

森田さん ミステリー、サスペンスの要素が強くて、「この先、どうなっていくんだろう」という期待感を抱きながら見ていただけるかなと。人間の持つ欲望や嫉妬心、復讐心などが描かれていて、普通のホラーとはまた別の怖さを感じていただけると思います。

――eillさんは、ドラマを見ての感想は?

eillさん 脚本を読ませていただいた時から本当に怖くて、寒けがするほどでしたが、実際にドラマを見ると、怖さよりも「次が見たい」という感情が先に立ちますね。それと、小倉優香さん演じる英子が、めちゃくちゃ怖かったです(笑)。森田さんが演じた菜央は、ふと映る表情やしぐさに、彼女が抱えている「心の闇」みたいなものを感じました。森田さんに聞いたら、実際にそういうことを意識しながら演技されていたそうで、なるほどなと。

――主題歌の「Night D」は、ホラーのイメージとはやや異なる、疾走感あふれるサウンドですね。

eillさん 元々は「夏の夜に高速道路をドライブしながら聞ける曲があったらいいな」と思って、春先に書いた曲なんです。最近、ファッションもそうですが、音楽でも80’sが注目されているので、その要素を盛り込めたらなと。もちろん、ホラーのイメージはまったく頭になかったので、今回、主題歌のお話をいただいたのは意外でした。ただ、ホラーと共通する「夜」とか「闇」のイメージは表現できていると思ったので、「主題歌になったら、どんなふうなんだろう」ってドキドキしながらも楽しみにしていました。

――森田さんは「Night D」を聞いて、どんな印象を抱きましたか。

森田さん ホラーの曲のイメージって、「ドロドロドロ~~」って感じだったから(笑)。「Night D」は自分でもついリズムを刻んでしまうくらい、すごくテンポの良い曲だったので、私も意外に思いました。でも、その意外感が魅力なのではないでしょうか。

「怖さ」乗り越え、少しずつ強く

――森田さんが女優を志したきっかけは何だったのですか?

森田さん 子供の頃、家の近所にある撮影所を見るのがすごく好きだったんです。それで、「映画やテレビの画面に映っていないところは、こんなふうになっているんだ。自分もあの世界の中に入りたい」と思って。最初は、メイクさんや照明さんになりたかったのですが、「この年齢で撮影現場に入れるのは、役者かもしれない」と思ったのがきっかけです。

――昨年、山田孝之さん主演の「全裸監督」でAV女優の役を演じ、大胆なシーンにも挑みました。この作品で一躍注目の的となりましたが、芸歴はもう10年近いのですね。

森田さん 事務所に入ったのは小学校の高学年の時だから、もうずいぶんたちました。でも、オーディションを受けても全然だめで、ずっと受からなくて、受からなくて、受からなくて……という状況が続いていました。

――そこから、見事にチャンスをつかんだわけですね。この作品に出演する前と後では、取り巻く環境がずいぶん変わったのでは?

森田さん 私自身は、自分でもビックリするくらい変わっていないんです。でも、テレビのバラエティー番組に出演させていただいたり、今日のようにインタビューをしていただいたりと、1年前には想像できなかったようなお仕事がすごく増えました。

――eillさんには、音楽人生でターニングポイントになった出来事はありますか。

eillさん 中学3年の時、「ドリームガールズ」(2006年)という映画を見ました。その中に、ビヨンセ演じるシンガーが「リッスン」という曲を歌うシーンがあって、それを見て、「音楽って、人にこんなにパワーを与えるものなんだ」と思ったんです。その時、自分も歌を始めようと決めました。当時の私は、部活にも入っていなくて、「自分には何もない」って考えていました。そこに初めて、「なりたい」と思えるものが目の前に現れたんです。あの時の出会いがなければ、今の私はないと思います。

――「ドリームガールズ」は、アメリカの黒人のレコードレーベル「モータウン」の伝説的女性グループ「シュープリームス」をモデルにした映画ですね。そうすると、eillさんの音楽のルーツはモータウン・サウンド?

eillさん 母が元々、モータウンが好きで、ずっとよく聞かされていました。私自身は、中学の頃はK-POPにはまっていました。K-POPのアーティストは洋楽をよくカバーするので、そこから洋楽も聞くようになり、YouTubeなどを使って、いろんなジャンルの音楽を発掘するようになっていきました。

――ファーストアルバムの収録曲「SPOTLIGHT」が、ラジオ・オンエアチャートで2週連続1位となり、m-flo、人気ラッパーのSKY-HIなどとのフィーチャリング曲を発表して注目されています。デビューからの2年余りはいかがでしたか。

eillさん たくさんの「初めて」が詰まった2年間でしたね。それまで自分がやったことのない、初めてのことに出合うと、怖くなったりするじゃないですか。でも今、振り返ると、その時は怖かったけれど、それを乗り越えた自分が少しずつ強くなっていく気がするんです。元々私は、自分に自信が持てないタイプなのですが、それでも少しずつ成長できているのかなと感じています。

日本の映画界を盛り上げたい

――お互いの印象は?

森田さん eillさんは、声がすごくかっこよくて、ガツンとくるようなパワーを持った方だと思っていました。お会いしてみたら、女の子らしい、すごくふんわりとした方で、ちょっとギャップを感じました(笑)。

eillさん 森田さんは女優さんだからおきれいですし、お会いする前はツンとした方なのかなと。でも実際には、物腰が柔らかくて、フワッとしたオーラに包まれているみたいです(笑)。

8月5日リリース eill「NightD」Released by SPACE SHOWER MUSIC

――プライベートでは、ストレス解消や気分転換のために行っていることはありますか。

森田さん あまりストレスを感じることがなくて、気分転換をしたいと思うこともあまりないのですが、続けていることと言えば、映画を見たり、本を読んだり。最近はホラー映画も見るようになったけれど、一番好きなのは韓国映画です。読書だと、安部公房さんの小説を読むのが好きです。

――安部公房は、誰かに勧められて?

森田さん そうじゃないんです。以前から、「昔から今まで残っている本って、絶対にいいんだろうな」という漠然とした思いがあったんです。例えば、「源氏物語」は1000年以上も前から残っている古典だから、絶対にいいって。それで、昔の本をいろいろ調べていって、その結果たどり着いたのが、安部公房さんなんです。

――プライベートで映画を見る時は、やはり女優の目線で見てしまうものですか。

森田さん 映画を純粋に楽しんでいる反面、女優として「これ、すごいな」「こんなふうに演じているんだ」と見てしまうこともあります。やはり、お客さんとしてはだんだん楽しめなくなってきているかもしれませんね。

――eillさんは?

eillさん 私のストレス解消法は「今、やりたいと思ったことをする」ですね。曲作りの時は、歌詞がうまく書けなかったり、いいメロディーが浮かんでこなかったり。ほぼいつも、そうなんです。悩む時はかなりの時間、悩んじゃうけれど、そのうちに「もういいや!」って放り出して、思いつきでドライブに出かけたり、おいしいものを食べに行ったりしています。

――これからの目標を聞かせてください。

森田さん 樹木希林さんや寺島しのぶさん、安藤サクラさん、蒼井優さん、門脇麦さんが大好きで、目標にしています。映画界は、アメリカのハリウッドがずっとトップで、今は韓国映画も強くなっています。そうした中で、世界の人たちに「日本映画も」と言われるぐらい、日本の映画界を盛り上げたいし、少しでも盛り上げに関われる女優でいたいなと思います。

eillさん ジャンルを分け隔てないで音楽をやってきたので、これからも変な壁を作らずにやっていきたいです。日本語の曲を出し、英語の曲を出し、韓国語もちょっとできるので韓国語の曲も出し、といった感じで、いろんなところでeillという名前を知ってもらえるようになったらうれしいです。

(取材/読売新聞メディア局 田中昌義、撮影/岩澤高雄)

森田 望智(もりた・みさと)
女優

 1996年生まれ、神奈川県出身。2011年に女優デビュー。主な出演作に、映画「友達」(13年)、「一週間フレンズ。」(17年)、「世界でいちばん長い写真」(18年)、「パパ活」(17年)、「これは経費で落ちません!」(19年)、「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」、「全裸監督」(同)など。第24回釜山国際映画祭「アジアコンテンツアワード」で最優秀新人賞を受賞。20年7月18日に配信開始の FODドラマ「あの子が生まれる・・・」で初主演。9月27日より放送のNHK BSプレミアム「一億円のさようなら」に出演。

eill(えいる)
シンガーソングライター

 東京出身。2018年6月、デビューシングル「MAKUAKE」、同年10月にミニアルバム「MAKUAKE」リリース。19年11月、ファーストアルバム「SPOTLIGHT」リリース。収録曲「SPOTLIGHT」がラジオ・オンエアチャート2週連続1位に。韓国の人気5人組ガールズグループEXIDやNEWSに楽曲を提供しているほか、シンガーとして、m-flo、人気ラッパーのSKY-HIなどとフィーチャリング曲を発表するなど、新世代を代表するアーティストとして注目を集めている。また現在、20年7月にリリースした「ドラマ25 女子グルメバーガー部」(テレビ東京ほか)の主題歌「踊らさないで」が話題となっている。

【作品紹介】  「リング」シリーズなどで全世界にジャパニーズホラーブームを巻き起こした作家・鈴木光司さんが原作・脚本のオリジナルドラマ。出演は、森田望智、小倉優香、松本大志、おぞねせいこ、赤座美代子、市川九團次、山下容莉枝、芦名星、羽場裕一ほか。FODで配信中(毎週土曜午前0時に最新話更新)。