山内マリコ「アラサー女子よ、若さという重荷を下ろそう!」

インタビュー

山内マリコさん

作家の山内マリコさん(39)がこのほど、エッセー集「The Young Women’s Handbook ~女の子、どう生きる?~」(光文社)を出版しました。ファッション誌「JJ」で、連載していたエッセーを加筆してまとめたもので、20~30代女性のライフスタイルについて、自身の経験を交えながらアドバイスしています。テレビ会議システム「Zoom」を使って山内さんにインタビューし、新型コロナウイルスの収束が見通せない中、心にモヤモヤを抱えるアラサー女性へのメッセージを語ってもらいました。

自粛生活で、キャパオーバーに気づく

――山内さんは、外出自粛生活をどう過ごしましたか?

執筆は自宅でしているので、電車通勤の人ほど、生活に大きな変化はなく、家にいることはちっとも苦ではありませんでした。外で行う打ち合わせや取材が、すべてキャンセルになりましたが、どこかほっとしている部分があったんです。「いつの間にか、自分のキャパシティーを超えて仕事をしていたんだ」と実感しました。こうやって、リモートで取材を受けることにも慣れてきて、ストレスも減りました。自転車操業の毎日から解放されて、「これはこれでいいんじゃないか」と。家に居続けることによって、ちょっと立ち止まっていろいろ考えるきっかけになりました。

――ご自身のファッションでは、何か変化はありましたか?

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それまでは新刊が出ると、写真撮影ありの取材を受けることが多かったので、服をたくさん買っていました。上品できれいめな服装を心がけていましたが、取材がリモートになると、撮影もないので、「もういいか」って気が抜けてしまって。着心地が悪い服は手に取らなくなりましたね。ファッションは楽しみでもありますが、「なんのために私たち、装っていたのかな?」って感じてしまいました。

「新しい日常」はどうなる?

――新型コロナを乗り越えるために、「新しい日常」が求められていますが、これについてはどのように考えますか?

東日本大震災の後にも、女性がハイヒールを履かなくなったり、モノを備蓄したりと、ライフスタイルが変わりました。「新しい日常」も大切ですが、新型コロナが、行き過ぎた資本主義社会がもたらした深刻な気候変動や環境破壊に歯止めをかけるきっかけになればいいと期待しています。経済活動を復活させるのも大切だし、コロナ前の生活に戻ることをみんなが望んでいるように報道されますが、世界規模でダウンシフトに向かう好機でもあるんじゃないかと。元の生活に戻るのは、うれしいような怖いような感覚です。

多くの刺激を受けすぎていた「コロナ前」

――旅行やコンサートなどに行けず、息抜きができないという人も多いようです。

私もそうです。仕事面ではほとんど支障はなかったけれど、大好きなお芝居を見に行けなくなったり、美術館に行けなくなったりと、気軽にお出かけできないのがこんなにつらいのかと思いました。私は富山から東京に出てきて以来、美術館や映画館、劇場などに頻繁に通っていて、エンターテインメントに触れる機会がたくさんありました。それを求めて上京したのですが、無理やりスケジュールを入れて、貪欲にすごい量を見ていたんだなと。これが一切なくなって、今まで当たり前に見ていたものの重要さがわかりました。

男性は言葉にしないと察してはくれない

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――外出自粛や在宅ワークなどで、一緒に過ごす時間が増えた夫婦の関係がぎくしゃくし、「コロナ離婚」という言葉も聞かれるようになりました。

うちは夫も家で仕事をしているので、生活に大きな変化はありませんでした。ただ、さすがに大型連休明けごろに行き詰まって、「疲れた~」という感じになりました。夫ともめることもありますが、心を開いてまめにコミュニケーションを取って、なんとかやっています。

20代の終わりに付き合い、震災後に同せいを始め、34歳のときに結婚しました。夫婦は対等が信条なので、お互いに言いたいことを言い合うようにしています。相手と自分の間に溝があると思ったら、溝を埋めるべく即話し合い。男性には「察して」とか「気づくでしょ」とか「空気を感じて」というのは通じないようです。言葉で言わないとわかってくれませんから。そういう日々の積み重ねがコロナ禍で発揮できたと、実感しています。

 31歳で夢だった作家になるまで

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――連載コラム「Think about features〜25歳のレディたちへ〜」には、JJ世代の女性へのメッセージがたくさん詰まっています。今年、40歳を迎えるそうですが、ご自身の20~30代はいかがでしたか?

振り返ると20代はずっと、作家になるための下積み期間。ニート状態だった時間も長く、かなりくすぶっていました。31歳でデビューしてからは一転、作家になって仕事が忙しくなり、家事にも追われ、生活に適応するのに必死。20代と30代では、まったく違う世界に身を置くことになりました。

10代のころは、上の世代の女性作家さんは、特別な人だから本を出せるのだと思っていました。自分は決して特別なタイプの人間ではないのですが、あきらめずに意志を貫き、自分で自分の人生を切り開けたことが自信になりました。自分のわりにはよくやったなと、褒めてもいいのかなぁと。

――どんな40代になりたいですか?

30代になったとき、どこに出ても恥ずかしくない格好をしなくちゃと、突然コンサバ(保守的)なファッションに走った時期があります。ファッションに限らず、「30代らしくしないとダメだ」と、無意識のうちに年齢で自分を縛ってしまっていたんです。だから40代は、「40代らしくしよう」と考えて萎縮いしゅくしないように気をつけたいです。

去年の自分に言っておきたいこと

――新型コロナが猛威を振るうなど予想すらできなかった、去年の今ごろの自分に言っておきたいことは?

「毎日を楽しんで!」と言いたいです。人生、何が起きるかわからないのはみんな一緒で、先のことを考えてビクビクしたり、眠れなかったりするのは意味がないなと。長い人生を考えてライフプランを立てることは大切だけれど、それとは別の次元で、毎日、目の前のことを楽しんで生きるしかないんだなと思います。あと、「マスクはちょっと多めに買っておいたほうがいいよ」って言いたいです()

若さは武器にも重荷にもなる

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――アラサー女性に言いたいことは?

30歳になったからといって、見た目にも体力にも大きな変化はなかったし、何かが起こったわけではありません。けれど、それでも「若い女性」じゃなくなることへの恐怖心みたいなものはたしかにありました。ただ、「若い女性」は特権でもある代わりに、自分にとってはすごく重荷にもなっていたんですね。若さは武器でもあるけれど、おりみたいに女性を閉じ込めるものでもあったと、あとから気づきました。そこから出られたことで、楽になったし、人として自由になれた気がしました。重荷がなくなったら、軽くなってとても気持ちがいい。それもいいものだよって言いたいです。

――大手小町の読者にメッセージを。

今回のコロナがきっかけで、立ち止まり、自分の本心に気づかされた人も多いのではないでしょうか。通勤がイヤとか、これまで思っていても口に出せない雰囲気がありました。「みんなに合わせなきゃ」という圧がなんとなくある中、自分がこうと思ったら素直に押し通していいんだな、もっと自分で判断しなきゃいけないんだなと、あらためて思いました。たとえば、緊急事態宣言が解除され、「ワーイ」となって、あちこちに出かける人もいるけれど、「私はまだ怖いから家にいたい」と思えばそうする。他人に合わせすぎるのは、考えものだなと。私も、対面取材がOKになっても、「私はこのままZoomでやりたいです」と言いたいです(笑)。わがままだと思われるかもしれないけれど、誰もがますます、自分に正直になっていいんじゃないかと思います。

山内マリコ(やまうち・まりこ)

1980年生まれ。2012年、連作小説集「ここは退屈迎えに来て」(幻冬舎)でデビュー。主な著作に「選んだ孤独はよい孤独」(河出書房新社)、「あたしたちよくやってる」(幻冬舎)、「山内マリコの美術館は一人で行く派展」(講談社)など。「あのこは貴族」(集英社文庫)の映画化を控えている。

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