平方元基 ミュージカル「サンセット大通り」で上質な時間を

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平方元基さん

「キャッツ」「オペラ座の怪人」などの代表作がある作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーといえば、ミュージカル好きでなくともその名前を知っている人は多いと思います。そのロイド・ウェバーが手がけたミュージカル「サンセット大通り」が東京国際フォーラムホールCで上演されるのを前に、今回2度目のジョー・ギリス役を演じる平方元基さんに作品への意気込みなどを聞きました。

「サンセット大通り」は、日本では2012年に初演され、今回で3度目の上演です。本作はダブルキャストで、世間に忘れ去られた大女優ノーマ・デスモンド役を、12年版から続投している安蘭けいさんと15年版から演じている濱田めぐみさんが務め、売れない若き脚本家のジョー・ギリス役を、15年版から参加している平方さんと今作初出演の松下優也さんが演じます。

――今回、2回目ということですが、ジョー・ギリスという役をどのように捉えていますか?

ジョーは元来、夢とか野心などを強く抱いている人物なのですが、徐々に物語の主人公ノーマ・デスモンドに翻弄されていきます。ただ、海外版のように、野心家なところを描き過ぎてしまうと、日本のお客さまが見たときに違和感を感じさせてしまうかもしれないと思っています。なので、そこはマイルドにしつつ、ジョー・ギリスを感情の振り幅が大きくて、人間臭い男にしています。

――ダブルキャストで、松下優也さんも同じ役をやられるということですが……。

松下さんと僕のダブルキャストは初めてですね。プライベートで一度に飲みに行ったこともあるのですが、クールな第一印象とは違って、いつもニコニコ笑顔でいらして、とてもすてきな人ですね。

――平方さんはダブルキャストでの出演が多い印象がありますが、同じ役をほかの人が演じることをどう捉えていますか。演技とか役の解釈とか気になりますか。

多少の意識はしているんでしょうが、僕は自分のことで必死なので、ダブルキャストの方のお芝居を見て自分の演技が変わるとは思ってないんです。もちろん、客観的にお客さんとしては見ますけれどね。たとえば、「良い」と思ったところを取り入れても、その芝居はその人の解釈だから良いのだと思います。いままでダブルキャストをいろいろと経験させてもらった中で、それが分かってきました。だから、徐々に「悔しい」という気持ちや、無駄な対抗心みたいなものは捨てようと思うようになりましたね。

――いままでの経験で現在の境地に至ったのですね。

最初のころ、自分の役が自分以外にいるのがとてもイヤで、得体の知れない何かと戦い続けていましたね。そうなると、役とは関係のない“何か”が出てくるんです。「そこ、そんなに歌わなくていいよ」というところを一生懸命歌っちゃったりとか”(笑)。ですがこの世界はたとえ一人でやっていたとしても、比べられる世界。だったら、そのまま「自分が良いと思ったことをやろう」と。そうしないと、信じるものが分からなくなりますから。

――今回は濱田さんとの組み合わせですね。

濱田さんとの組み合わせは初めてなので、安蘭さんと共演した前回とは全く違うものになると思います。前回の公演では、安蘭さんは初演に続き2回目の出演。それに対して僕も濱田さんも初めての出演でした。安蘭さんはグイグイ作品を引っ張って下さる方で、「ここはどういう気持ちなのだろう」と迷ったところでも、彼女のやり方で、どんどん感情を引き出してもらいましたね。

5年前、演じていく中で悔しさも喜びもありましたが、そうしてこの役がとても好きになっていったので、「またやりたいです!」と事あるごとにアピールしていたんですよ。その結果、この役にまた巡り合えた……。5年分の思いがあり、喜びもひとしおです。

「サンセット大通り」は、観劇しながら自分と向き合える作品

――この「サンセット大通り」という作品についての印象を教えてください。

昔、映画化もされたこの作品は、日本での知名度はそんなにないかもしれませんが、非常に楽曲も良く、物語もしっかりしています。「上質なものは上質だ」と知ってもらいたいですし、皆さんに満足していただける、実のある作品にしたいと思っています。

――楽曲は全部すばらしいですが、難しいのではないでしょうか。

(作曲家の)アンドリュー・ロイド・ウェバーさんの真っ黒な音符が並んだ楽譜は変拍子のお祭りで、ひたすら練習しましたね(笑)。でも、そのおかげでミュージカルがとても好きになったんです。

――好きな曲を教えてください。

「サンセット大通り」の中では、ノーマの歌う「With One Look」ですね。作品にとても寄り添った曲だと思います。ぜひ公演で聞いていただきたいと思います。

――それでは平方さんのこれまでについて聞かせてください。ミュージカルのデビューは「ロミオ&ジュリエット」(2011年)ですが、ティボルトという大役でした。

その時には「プレッシャーを感じる」ということさえ分かりませんでした。周囲の人は「すごい」とか言ってくれましたが、当時の僕は演出家の小池修一郎先生の名前も知らなかったくらいです。その中に入って鍛えてもらえたというのは、本当にいい経験だったなと思っています。

――そしてそのあと、どんどん舞台に出演されていて、去年は出ずっぱりでしたね。

去年は忙しかったですね(笑)。一つの本番が終わったらすぐに次の舞台の稽古というような感じでした。みんなが通し稽古をやっている時期に、2週間遅れて僕はせりふを覚えながら……といったこともありました。でも、この状況を良いように考えようと思ったんです。幅のある様々な役を楽しんでやれればいいなって。僕のいろいろな面を見て頂きたいなと。でも、本当にきつかったですね(笑)。

――そのうちの1つが「エリザベート」でした。2012年はルドルフ皇太子役でしたが、去年はフランツ・ヨーゼフ1世役でしたね。

実を言うと、お話をいただいたときに、すぐに返事をさせて頂けなかったんです。でも小池先生と話をし、悩んだ結果、挑戦してみよう、やりたい、となりました。そして、最後までブレないで自分のやりたいように演じる、と自分の中で秘かに決めたんです。千秋楽のカーテンコールで、小池先生からありがたい言葉をいただけて、やりきれて本当によかったなと改めて思いました。

――このところミュージカルがブームだといわれていますが、大手小町の読者の中にはまだ見たことがない人もいると思います。そういう方々に向けて、一言お願いします。

この「サンセット大通り」という作品は、上質でしっとりとしたベルベットのような作品だと考えています。ですがその中に普段表に出さない感情や、人間の生々しい、嫌な面が多く出てきます。そういったものを作品を通して見ることで、自分と向き合うことができるのではと思っています。是非、多くの方に見て頂きたいです。

スペシャルイベントで美しい歌声を披露

集まったファンの前で美声を披露する安蘭けいさん(左)と平方元基さん

3月の開幕を前に、「サンセット大通り」スペシャルイベントが先日、東京のホテルで開かれ、出演者の安蘭さんと平方さんが参加者を魅了し、絶妙なトークを繰り広げました。

今回の舞台では見られない貴重な組み合わせということで、200人近くが集まりました。ジョー・ギリス役の衣装をまとった平方さんは、ピアノの伴奏に合わせてタイトル曲の「Sunset Boulevard」を歌いながら登場。各テーブルを回りながら歌を届け、ファンはその歌声に聞きほれていました。

その後、安蘭さんが大女優ノーマ・デスモンド役の衣装で現れると、そのゴージャスさにファンはうっとりと見入っていました。安蘭さんは「3回目の出演となるので、より人として、女性として、深くノーマを理解して演じることができるのではないかと思います」と意気込みを語りました。

参加者からの質問コーナーで「ここだけは絶対見てほしいポイント」を問われると、安蘭さんは「これから初めてご覧になる方は、お芝居として見ていただいてもすごく面白いと思います。アンドリュー・ロイド・ウェバーの素晴らしい音楽もあるのですけど、芝居要素が強いミュージカルだと思うので」と説明しました。

イベントの最後に、安蘭さんが「As If We Never Said Goodbye」を披露。ドラマチックで美しい歌声で、本公演への期待が高まりました。

(メディア局編集部 杉山智代乃)

公演情報

「サンセット大通り」
作曲:アンドリュー・ロイド・ウェバー
脚本・作詞:ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトン
演出:鈴木裕美
出演:安蘭けい/松下優也
   濱田めぐみ/平方元基 ほか
期間:3月14日(土)~3月29日(日)
会場:東京国際フォーラム ホールC
*公演詳細に関しては、公式ホームページをご確認ください。