女優・広瀬アリスさん(25)が、31日に全国公開される映画「AI崩壊」に、警視庁捜査一課の新米刑事・奥瀬久未役で登場します。舞台は、国民の健康・医療データを管理する医療AI(人工知能)が普及した2030年の日本。しかし、そのAIが突如、暴走を始めてしまい、開発者である天才科学者(大沢たかおさん)が指名手配され、逃亡劇を繰り広げます。広瀬さん演じる刑事・奥瀬は、三浦友和さん演じるベテランの所轄刑事と本音でぶつかり合いながら、暴走するAIの謎に迫っていきます。役づくりや見どころについて、広瀬さんに聞きました。
「女性らしさ要らない」髪をバッサリ
――この作品は、日本の10年後を舞台にしているんですね。

映画では10年後の世界ですが、もう少し近い気もします。現に、AIは私たちの生活に身近に入り込んできていますし、いろいろな面で、どんどん便利にしてくれています。リアリティーある作品に仕上がっていると思いますので、ぜひ多くの人に見ていただきたいです。
――映画を拝見しましたが、三浦友和さんとの掛け合いが面白かったです。共演されたのは、初めてでしたか。
はい。三浦さんとは今、ドラマ「トップナイフ―天才脳外科医の条件―」(日本テレビ系)で毎日ご一緒させてもらっていますが、共演したのはこの映画が最初でした。三浦さんは懐の深い方で、何でも受け止めてくださるので、本当に助かっています。
――広瀬さんが演じられた新米刑事・奥瀬久未役は、ベテラン刑事・合田京一との独自の捜査で、逃亡した天才科学者・桐生浩介を追います。監視カメラやコンピューターに頼らず、アナログな刑事の長年の勘が頼り。初めはそんな合田に反発していた奥瀬も、いつの間にか変わっていきます。演じてみてどう思いましたか。
クランクインしてすぐに撮影したのが、大会議室で「合田とチームを組め」と言われて、戸惑うシーン。入江(悠)監督からは「ふつうの先輩・後輩という関係ではなく、合田のことを自分と同等ぐらいに見ている感じがほしい」と言われて。どう演じたら伝わるのかなと考えました。それで、映画のところどころで、「合田さぁ~ん」と大きな声で話しかける演技が生まれたんです。
――役作りで工夫したことは?
今回は、オリジナル脚本の作品ですから、モデルもないし、自分で考えていく部分がとても多かったんです。パンツスーツにして、髪の毛もバッサリ25センチぐらい切って。女性らしさは要らないかなって、思ったんです。
――厳しいロケも多かったようですね。
厳しいロケ 夜通しの撮影
一番大変だったのが、巨大貨物船に乗っているシーン。めちゃくちゃ寒かったし、おまけに、風を起こすために使われた大きな扇風機が油で駆動するタイプで、その油の臭いでウゥッとくるくらい。夜通し撮影して、早朝までというスケジュールで、すっかり参ってしまって。本当はあってはならないことですが、珍しく体調を崩しちゃったんです。
ラインを引くなんてしない
――広瀬さんご自身は、出演する以上、このレベルまでは演じたいなどと考えることはありますか。
そういうラインを引く、ということは一切ないですね。まずは、自分の中でしっくりくるか、こないかで判断します。このセリフ、すっごく気持ち悪いんだけど、言い回しがよくないのか、テンションがよくないのか、やってみないとわからないことが多いでしょう。それを監督や周囲の方に聞いて、追求してみる。相手の俳優さんにもそういう思いをぶつけていくと、答えが出ることが多いです。
AIと人間、身近で感じる恐怖感
――なるほど。「しっくりくる」ということが大切なんですね。映画の中には、AIによって選別されてしまう人間たちが出てきますが、AIが人間を選別するということについてはどう思われますか。

じわっと怖さを感じます。今でも、AIが人間の顔を認識して、似ている有名人とかを判定してSNSで騒がれることがありますよね。このまま身近なものになっていったらと思うと、リアルな恐怖感があります。もちろん、AIが活用されることで、たくさん幸せになっている人も同時に存在するんですが……。
あの子たちのために生きている
――映画を見た人から「合田と奥瀬が一番アナログで人間っぽい」「この二人を見ていると、落ち着く、ほっとする」といった声が聞かれることについてはどうですか。
そういう感想を持っていただけて光栄です。
――オフタイムで今、一番ほっとすることは?
オフタイムには、漫画を読むことが多いんですが、撮影中はとてもその余裕はなかったですね。今楽しみにしているのは、家に帰って、かわいいワンちゃんと遊ぶひとときです。母に面倒を見てもらっているのですが、あの子たちのために生きていると言っても過言ではありません。
(聞き手/読売新聞メディア局 永原香代子、撮影/田中昌義)
公開情報

映画「AI崩壊」
1月31日(金)から全国ロードショー
出演:大沢たかお、賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典ほか
監督・脚本:入江悠
企画・プロデューサー:北島直明
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイトは、http://wwws.warnerbros.co.jp/ai-houkai/
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