“ハリウッドデビュー”小林直己「世界に影響与える存在に」

インタビュー

EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのパフォーマーで俳優の小林直己さんが、11月15日からNetflix(ネットフリックス)で配信が始まる映画「アースクエイクバード」(ウォッシュ・ウエストモアランド監督)で“ハリウッドデビュー”を果たしました。今から30年前の東京を舞台に、殺人容疑をかけられたイギリス人女性・ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)の揺れ動く心理を描いたサスペンス。小林さんは、ルーシーが恋に落ちる日本人カメラマン・禎司を演じています。小林さんに、この作品にかけた思いを聞きました。

こんなに早く大役がもらえるとは

――オーディションで禎司役に選ばれたそうですね。決まった時の気持ちは?

オーディションがあったのは2年ぐらい前です。芝居という仕事にしっかり向き合い、日本にとどまらず、海外の素晴らしいクリエイターと一緒に仕事をしていきたいという思いがあって、3、4年前に、そのための組織づくりと、英語や演技のトレーニングを始めていました。でも、まさかこんなに早いタイミングで大役がもらえるとは思っていなかったので、マネジャーから電話で連絡があった時は、うれしくて、すごく興奮しました。同時に、「これから長い闘いが始まるな」とも思いました。

――禎司は、ミステリアスな雰囲気を漂わせたカメラマンという役どころです。ルーシーの恋人でありながら、彼女の友人のリリー(ライリー・キーオ)との三角関係に陥って、ルーシーの心を揺さぶります。

禎司はミステリアスで、ひとに心を開かないようなキャラクターですが、最初に脚本を読んだ時、何か共感を抱かせるところがあるなと思ったんです。彼は、自分にとっての真実を探し、追いかけている。でも、それをあえて人には言わない。もしかしたら、不器用だから言えないのかもしれない。彼のそんなところが、ちょっと自分に似ているなって。禎司を演じることで、今後、自分が生きていくなかで大切なものが見つかるかもしれない。今まで解消できなかったことが、うまく解消できるかもしれない。だから、どうしてもこの役を演じたいと思いました。

――自分と似たところがあるなら、そんなに役を作り込まなくてもよかったのでしょうか。

そうですね。禎司と自分がリンクする点をいろいろ探していきました。禎司は、複雑な過去を持つカメラマンですが、それでは彼にとってのカメラとは何なのか。彼がカメラを通して何を見て、何を探して、何に取りつかれているのかを知る必要があると考えていったら、彼にとってのカメラとは、僕にとってのダンスなのだと感じたんです。

そして、撮影の始まる5か月前から、撮影で使うものと同じ80年代のオリンパスのカメラで、東京の街を撮り始めました。80年代のカメラはもちろん、フィルムカメラですから、撮影したら家でフィルムを現像して、印画紙にプリントして。そんなことを繰り返して、禎司の思考回路を探っていきました。また、彼は鹿児島出身という設定なので、カメラを持って鹿児島に行き、おそらく彼が訪れたであろう場所を訪ね歩きました。そこで彼が育った背景を感じたり、僕自身の地元を思い出したりしながら、禎司と自分がリンクする点を探し出していきました。

禎司役の小林直己さん(左)と、ルーシー役のアリシア・ヴィキャンデルさん

――英語のセリフがナチュラルで驚きました。

もちろん英語は母国語ではないので、英語のトレーニングはたくさんしましたね。ただ、芝居は結局、役者同士の心と心の通い合いだったり、ぶつけ合いだったりだと思うんです。だからこそ、外国の映画を観て、セリフが分からなくても字幕を読んで感動できるんじゃないかと。

巨匠・リドリー・スコットから賞賛の言葉

――本作の製作総指揮は、「エイリアン」(79年)、「ブレードランナー」(82年)、「ブラック・レイン」(89年)など数々の名作の監督で知られるリドリー・スコット氏です。

撮影を終えた後、ロサンゼルスでお会いして、今回の作品はもちろん、高倉健さんや松田優作さんが出演された「ブラック・レイン」の撮影時のお話などを聞かせていだきました。リドリーさんが、高倉さんや松田さんがどんな思いであの作品に取り組んだのかを話してくださって、僕が今、こうしていられるのは先人のおかげなんだと実感しました。リドリーさんとは先日、ロンドン映画祭に参加した時に再会したのですが、「あらためて完成した映画を観たら、素晴らしかった。君には映画に必要な存在感があるから、(俳優業を)続けた方がいい」と言ってくださって。本当に光栄でしたし、ふんどしをキュッと締め直すような、そんな感覚がありました。

――主人公のルーシーは、都内の翻訳会社に勤めているという設定ですが、彼女が映画のセリフの翻訳作業をしている場面で、(「ブラック・レイン」の主演俳優の)マイケル・ダグラスの映像が映っていました。あれは「ブラック・レイン」のワンシーンですよね。

そうです。「アースクエイクバード」は、89年の東京が物語の舞台ですが、「ブラック・レイン」は88年に製作されているんです(公開は89年)。監督のウォッシュが、リドリーさんをリスペクトしているので、あえて「ブラック・レイン」の映像を使ったんだと話していました。

禎司役の小林直己さん(右)と、リリー役のライリー・キーオさん

――ルーシーを演じたアリシア・ヴィキャンデルは、「リリーのすべて」(2016年)で米アカデミー賞助演女優賞を獲得しています。オスカー女優との共演はいかがでしたか。

この作品を引っ張るリードアクトレスとして、本当に素晴らしく、人間的にも素晴らしかったです。彼女のことはすごく尊敬しています。いつも自然体で、撮影現場の雰囲気を明るくしたり、なごませたりしていました。ところが、いざカメラが回り始めると、瞬時にルーシーの目に変わるんです。そして、撮影が終わると、またいつものアリシアに戻る。その集中力と切り替えの速さ。彼女の天性の才能なのかもしれませんが、3か月の撮影期間中、僕が一番欲しいと思ったものでした。やっぱり、撮影の間ずっと気持ちを張り続けているのは難しいので。彼女みたいにできるようになれば、これから様々な作品に出演するうえで僕の強みになるなと。アリシアとは、緊張感のある、ディープなシーンが多かったけれど、役者同士の深い信頼感の中で演じることができました。本当に素晴らしい体験でした。

――他に印象に残っていることはありますか。

アリシアには、すごく長い日本語の独白シーンがあったんです。そのシーンを撮るために、彼女は3か月間、毎朝毎朝、日本語のセリフのトレーニングを繰り返していました。その姿が忘れられません。実際、それは本当に素晴らしいシーンになりました。

それから、すべての撮影が終わった後、監督のウォッシュが、キャストや撮影クルーの前で、日本語でスピーチをしたんです。彼は日本に住んだ経験があるのですが、「3年間住んで、日本を離れた後も、ずっと日本のことを思っていました。このような機会を与えてくれた皆さん、どうもありがとう」と。ウォッシュをはじめ、日本という国を尊重する気持ちにあふれたキャストやクルーとともに映画を撮影できたんだと、すごく胸に迫るものがありました。リドリーさんからいただいた言葉とともに、日本出身の役者として、アジア出身の役者として、世界に影響を与えていける存在になりたいと、強く思いました。

――再びハリウッド映画に出るなら、どんな作品に出たいですか。

僕はマーシャルアーツ(格闘技の一種)や刀のさばきなどもするので、アクション作品には出てみたいですね。それに、ヒューマンドラマが好きなので、今回の禎司のような複雑な心理を持った男の役も演じてみたいし、狭い部屋で2人きりで向かい合ってガーッとしゃべりまくるような芝居も面白そうだなと思います。

――この作品をどんな人に見てほしいと思いますか。

二重三重の仕掛けがあるサスペンスミステリーで、日本語と英語のセリフが入り混じっていますが、日本の文化や日本人の精神性が物語に深く影響しています。日本で生まれ育った方はもちろん、日本という国に興味をもっている方は、すごく楽しめる作品になったと思います。

(取材/読売新聞メディア局 田中昌義、写真も)

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小林 直己(こばやし・なおき)

EXILE/三代目J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして全国ライブツアーなど精力的にアーティスト活動を行う。パフォーマー以外に役者としても活動し、舞台にも積極的に参加。劇団EXILE公演のほか、2013年2月より行われた「熱海殺人事件40years’ NEW」(つかこ うへい作・岡村俊一演出)で大山金太郎役を熱演。各方面より好評を得る。2017年からは俳優として本格的に活動をはじめ、「たたら侍」(2017年) 「HiGH&LOW」シリ ーズなどに出演。Netflixオリジナル映画「アースクエイクバード」(2019年)の公開を11月15日に控える。日本ならず、アメリカにおいても俳優として活動の場を広げている。

映画情報

Netflix映画『アースクエイクバード』11月15日(金)より独占配信開始
製作総指揮:リドリー・スコット
監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
出演:アリシア・ヴィキャンデル。ライリー・キーオ、小林直己、ジャック・ヒューストン、祐真キキ、佐久間良子、ケン・ヤマムラ、室山和廣、Akiko  Iwase、Crystal  Kayほか
公式サイト