ミュージカルに魅せられて 別所哲也、海宝直人のスペシャル対談

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レ・ミゼラブル、オペラ座の怪人――。ミュージカルの名曲を、ミュージカル界のスターたちが歌う「ららら♪クラシックコンサート ミュージカル特集」が26日、東京・赤坂のサントリーホールで行われます。別所哲也さん、新妻聖子さん、海宝直人さん、咲妃みゆさんらが出演します。コンサートを前に、ベテランの別所さんと海宝さんが対談し、ミュージカルへの思いなどを語り合いました。

アニーとウエスト・サイド・ストーリー

――はじめに、お二人のミュージカルとの出会いを教えてください。

海宝さん 姉が5歳ぐらいで僕が2歳のころ、姉が「アニー」というミュージカルに出ていまして、僕はベビーカーにのせられてよく現場に連れて行ってもらって、舞台の楽屋でお姉さんたちに遊んでもらったりとか、スタッフさんに遊んでもらったりとか。青山劇場で結構おとなしく見ていたらしいです。それがもともとのミュージカルとの出会いです。

家でも、姉とよくミュージカルごっこみたいなことをしていましたね。姉は「モリー」っていう一番小さい子の役だったんですけど、本当はお姉ちゃんの「アニー」の役をやりたいわけですよ。だから家ではアニー役をやりたいので、僕がモリー役を、姉の衣装を着させられてやる。そんな写真が残っています。楽しく、好きでやっていたみたいです。

別所さん 「ウエスト・サイド・ストーリー」の映画をテレビで見て、衝撃を受けましたね。当時、クラシックのピアノはやっていたのですが、音楽の可能性とか、ミュージカルってこういうものなんだって。そこが出会いでしたね。まさか自分が、ミュージカルの俳優をやるなんてみじんも思っていませんでした。

18歳になって大学進学で上京してきて、英語劇をお芝居として、英語の勉強をするためにやり始めたんです。そのときに初めて外部で受けたオーディションで合格したのが、ミュージカルだったんです。

その後、俳優になろうと思って最初にオーディションを受けて合格したのも、ミュージカルで。紀伊國屋ホールで「ファンタスティックス」っていう、ピアノとハープだけのミュージカルなんですけど、マイクもつけない、小劇場でやる、本当に力が試されるものでした。もうお客様が50センチくらいの距離にいらっしゃるような舞台に、プロとして立たせていただいたのが20歳のときの経験です。

11年ぶりの共演

――お二人は共演したことがあるそうですね。どんな印象をお持ちでしたか。

別所さん もうずいぶん前ですが、2008年の「ミス・サイゴン」ですね。エンジニアの役をやらせていただく機会を得て、現場に入りまして、ひときわオーラがあってキラキラ輝く青年がいる。僕から見たら息子みたいな。それが海宝さんでした。アンサンブルの方やリードをとられる方とかたくさんいらっしゃるわけなんですけど、歌声ではっとさせられる。そして、その前にこのルックスではっとさせられる。まだ少年のような部分もありながら、たくさんの出演者がいるなか、光り輝いている人っているじゃないですか。そういうお一人で、印象深かったです。

――海宝さんは、別所さんにどんな印象をお持ちですか。

海宝さん 19歳のときです。子役をやってきて、初めてきちんと大人の俳優としてロングラン作品に出るということで、とにかく必死でした。エンジニアってもう、雲の上の人なんですよ。接すると言っても、僕もガンといけるタイプではないので……。強烈に覚えているのが、舞台稽古に入ってから別所さんが「海宝くん、ブログ見たよ」って声をかけてくれたことです。僕なんかのブログを見てくれたんだって、すごくうれしかった記憶があります。

別所さん そんなこと言ったっけ(笑)。

海宝さん (笑)僕はすごくうれしくって、それが残っているんですよ。

――共演する女性たちについて、ご本人不在のところで話しにくいかもしれませんが、印象を教えてください。

別所さん 新妻さんとは、レミゼ、ミス・サイゴンはじめ、いろんな舞台や歌番組でも共演させていただいています。それぞれの時間を重ねた上での、帝国劇場のあの舞台、この舞台を思い出しながらの久々の共演で、実際にレミゼやミス・サイゴンの楽曲もそれぞれ歌うので、楽しみですね。ほかの女性たちとも、今回の共演でどんな刺激をもらえるのか、それも楽しみです。

海宝さん 僕も新妻さんとは、ミス・サイゴンや、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」でもご一緒させていただいています。キャッチ・ミーでは第2幕後半に新妻さんのソロがあって、すべてを持っていかれるようなパワーがあって。お客さんも「うわー」となって、すごいな、素晴らしいなって思いました。それでいて、裏ではおいしそうにお弁当を食べていて、すごくチャーミングな方です。

――公演直前に食事をとるのですか。

海宝さん 結構、分かれますよね。食べる派と食べない派。僕はおなかがすいてしまうと、力がなくなるので、直前は食べないですけど、おなかがすかない程度には食べています。

別所さん 僕は基本的には前には食べないですよね。1時間前までには、済ませています。

――海宝さんは、咲妃さんとも共演の経験がありますか。

海宝さん 咲妃さんは、コンサートで何回かご一緒しています。それに、僕のソロCDでデュエットを歌ってくださっています。宝塚のトップ娘役さんで、とってもすてきな歌声で、それでいてすごく謙虚にやっていらして、すてきな方だなと思っています。今回、こうしてご一緒できるのが、楽しみですね。

――お二人にとって久しぶりの共演となりますね。

別所さん 今回はサントリーホールで、オーケストラとともに歌えるチャンスです。そこで、海宝さんも含め一緒に舞台に立たせていただける方々と、どんなふうにミュージカルの世界を作り出せるのか。それが何よりの楽しみです。

海宝さん 名曲ぞろいですし、本当にすばらしい共演者の方々と一緒に歌えるのは、とても光栄だなと思っています。

人生のターニングポイント

――たくさんの出演歴のなかで、ご自分にとって思い出に残る舞台は何ですか。

別所さん それは圧倒的に「レ・ミゼラブル」ですね。僕にとって人生のターニングポイントでした。あしかけ10年ほどやらせていただきました。初演が鹿賀丈史さん(ジャン・バルジャン役)を中心に行われて、リハーサルを見たんですけど、もう圧倒されて。それ以来、何度も見に行っていました。

人生って本当に巡り合わせですよね。そのときの年齢と作品との出会い。アスリートがオリンピックのときにちょうど自分のフィジカルや状態のピークがくるかどうか、というのと似ていて。30代に入ってから、大好きなレミゼの全キャストでオーディションが行われるというので、受けたんです。出演が決まったときは、本当に夢のようでした。

長い間、一つの作品に向き合って、その間に結婚もしましたし、東日本大震災が起きるなど、人生のいろんな体験もして、俳優人生のなかでとても大きいことです。

――海宝さんは、いかがですか。

海宝さん ターニングポイントという意味では、僕も「レ・ミゼラブル」ですね。15年に初めて出演させていただきました。そこから少しずつ役をいただくようにもなって。あこがれの作品で、ずっと出たいと思っていたので、それがかなったのは大きかった。

出演してみて、ミュージカルの基礎を音楽監督のビリーさん(山口琇也さん)に教えていただきました。「レ・ミゼラブル」は物語のすべてが歌で進んでいて、音楽が非常に大きい存在なんです。マリウス役だったのですが、「ア・ハートフル・オブ・ラブ」というコゼットとのデュエットがあって、同じような音型だけど、半音のところと全音のところがあって、そこを「ちゃんと歌い分けてほしい」とビリーさんに言われました。

確かに、それがマリウスの戸惑いを表していたり、すごく高揚しているから音が跳躍したりと、非常に緻密ちみつに音楽で描かれている。メロディーには意味があるんですよね。ミュージカルとの向き合い方という点でも、自分のなかで発見というか、大きな転換点になりました。

音楽が感情に寄り添う

――ストレートプレイと、歌に乗せての演技は違うものですか。

別所さん 心の真ん中で起きていること、感情というのは同じだと思います。そこに寄り添うオーケストラの楽器ひとつひとつが、例えばクラリネットが聞こえてきたり、バイオリンが寄り添ってくれたりすると、共演者みたいな存在になる。メロディーラインがキャラクターそのものを表していたり、リズムがそのときの気持ちを表していたりする。

演じるためのたくさんのヒントが、台本とは別に楽譜に設計図として隠されているというか、示されている。それをどういうふうにきちんと解釈し、表現するか。その面白さはすごくありますよね。

――歌のためのトレーニングや日課を教えてください。

海宝さん 毎月、ボイストレーニングに通っています。あとは……歌が好きなので、基本的にはずっと歌っています(笑)。学生時代に両親と歩いていて、自然に歌っていて、「恥ずかしいからやめなさい」って言われて。でも、歌ってしまう。なんかこう、好きなんですよね。

別所さん 人間の気持ちだよね。楽しかったら歌い出したり、口笛吹いたり。そういうことじゃないですか?

海宝さん のどのケアも、普段はそこまで気にしていません。辛いものも食べるし。

別所さん 僕も、ノールールがルールな男なので(笑)。あまり特別なことはしないです。ただ、冬場の乾燥している時期や、ミュージカルと並行して大河ドラマなどで侍役をやっていて、「かたじけない」などと歌と違う形で声を出す時は、声帯の使い方が全然違って、のどへの負担があります。といっても、学生時代から体育会系なので、朝のラジオ番組を3時間やってから劇場に行くくらいで、あんまり気にせずやってきちゃいました。

――初めてミュージカルの音楽を聴く方に、楽しむためのアドバイスをお願いします。

別所さん 今回は、サントリーホールでのオーケストラの演奏です。様々なミュージカルの魅力の片鱗に触れていただいて、機会があったら実際に足を運んでいただけたら。オーケストラの楽器ひとつひとつやそのリズムが、キャラクターの気持ちやキャラクターそのものを表しているので、そこを感じていただけたらいいなと思います。とにかく楽しんでほしいですね。

海宝さん 今回のコンサートは特に、名曲、名作ぞろいです。「ウエスト・サイド・ストーリー」や「サウンド・オブ・ミュージック」「マイ・フェア・レディ」、それにディズニー作品もそうですが、ミュージカルを知らなくてもどこかで耳にしたような曲ばかりです。気軽に聴いていただいて、魅力を発見してもらえたら。フルオーケストラで音楽を聴くこと自体が、とてもぜいたくな時間だと思います。ライブでの人の声や楽器の音は、すごく非日常的なパワーがある。それを体感してもらいたいですね。

来年の舞台にも注目

――今後の活動のご予定を教えてください。

海宝さん 舞台では年末、「ロカビリー☆ジャック」という新作オリジナル作品に出演します。来年は、「アナスタシア」が日本初上演となり、出演させていただきます。その後は、「ミス・サイゴン」にクリス役としで出演させていただきます。

別所さん 素晴らしい!

海宝さん ぜひ楽しんでほしいです。「シアノタイプ」という名前でバンド活動もしていまして、アルバムもぜひ聴いていただけたら。

――寝る時間もないほど忙しそうですが、リフレッシュの方法を教えてください。

海宝さん 僕は、おっきいお風呂が好きで。近場の大浴場やスーパー銭湯に行って。あの空間がなんか好きで、だらだらして、おやすみどころでゆっくりして。

――銭湯では歌わない?

海宝さん 小声で歌ってますね(笑)。

――別所さんの今後のお仕事の予定は。

別所さん 来年は2本、舞台が控えておりまして、一つはミュージカルです。ほかにもドラマや映画の出演、ライフワークのショートフィルムの映画際があります。好きなことを好きなだけ、好きなようにやらせていただけて、ここまで来てしまいました。J―WAVEの朝の番組も、10月から14年目に入りました。

――そんなに継続できるのは、すごいですね。リフレッシュはどんな形でしているのですか。

別所さん オフってないんです。生きているときは、ずっとオン。友達と遊んでいるときもオンだし、寝て体を休めるのもオン。ここ数年、保護犬のトイプードル2匹を飼っているのですが、あえていうと、愛犬と戯れて赤ちゃん言葉を使っちゃうようなときがオフかな。かわいくて、かわいくて。散歩に連れていったり、家で戯れたりしています。

(聞き手・大手小町編集長 小坂佳子、写真・金井尭子

別所哲也(べっしょ・てつや)
俳優

 1990年、日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台・ラジオ等で幅広く活動中。「レ・ミゼラブル」(ジャン・バルジャン役)、「ミス・サイゴン」(エンジニア役)などの舞台に出演。99年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル」を主催し、文化庁長官表彰受賞。観光庁「VISIT JAPAN大使」、映画倫理委員会委員に就任。第1回岩谷時子賞奨励賞受賞。第63回横浜文化賞受賞。

海宝直人(かいほう・なおと)
俳優、歌手

 7歳の時、「美女と野獣」で舞台デビュー。近年はミュージカル「レ・ミゼラブル」「アラジン」「ライオンキング」「ジャージー・ボーイズ」「ノートルダムの鐘」などに出演し、子役時代から培われた確かな実力が高い評価を得ている。2018年5月には「TRIOPERAS」のメインキャストとしてロンドン・ウエストエンドで舞台デビューするなど活動の場を海外に広げている。19年1月にソロアルバム「I wish.I want.」でメジャーデビューを果たし、ボーカリストとしてもファン層を拡大している。