シンガーで都議・leccaが抱く「母としての思い」

インタビュー

シンガーのlecca(レッカ)さんが、2年半ぶりの新曲「team try(チーム・トライ)」(avex)を18日に配信リリースしました。20日開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会にちなんで、チーム一丸となって何かを成し遂げようとする人たちを応援する歌です。東京都議会議員「斉藤れいな」としての顔を持ち、2児の母でもあるleccaさんに、新曲に込めた思いや自身の生き方について聞きました。

「何を目指していたのか」を思い出させる曲に

――「team try」をリリースするに至った経緯を聞かせてください。

東日本大震災の復興支援活動がきっかけで、2014年から岩手県釜石市の観光親善大使を務めさせていただいていますが、釜石はラグビーが盛んな街で、今回のW杯でも試合が行われます。釜石の人たちから「この街はラグビーから元気をもらってきたんだ」といったお話を聞かされてきたので、釜石のラグビーをテーマにした曲を書いて、地元の人たちに届けたいと思っていたんです。

その後、今年6月になって、元神戸製鋼のラグビー選手で日本代表にもなった野澤武史さんとお会いする機会があり、試合に臨む時の精神状況などについてお話をうかがいました。野澤さんによると、ラグビー選手の最終目標は、自分が犠牲になってでもチームを勝利に導くことであり、試合中に「自分が点を取ってやろう」とか「自分のプレーを評価してもらおう」といった気持ちは出てこないのだそうです。この精神って、私たちの仕事にも通じるんじゃないかと。

私は今、都議会議員としてチームを組んで仕事をすることが多いのですが、音楽の仕事のチームと違って、自分が苦手なことにも取り組まなければならず、常日頃から「チームが結果を出すために、自分は何ができるのだろうか」と考えています。そんな私自身の葛藤が、野澤さんのお話と結び付いて、この思いを曲にしたいと思いました。

――一人一人は小さな存在でも、チーム全体で巨大な相手に立ち向かえば、勝利という奇跡を得られると、この曲は訴えかけています。どんな人に聴いてほしいですか。

大人になると、慌ただしい毎日が繰り返されるうちに、自分の中から「初心」や「理想」がどんどん削り取られていってしまうものです。この曲は、与えられた役割や仕事を頑張っている人にこそ聴いてほしい。そして自分は本来、何を目指していたのかを思い出してもらえる曲になればいいなと思っています。

前向きになれる曲作りを

――代表曲の一つ「My measure」をはじめ、leccaさんの曲を試合前に聴いて気持ちを鼓舞させるというスポーツ選手が多いそうですね。読売ジャイアンツの阿部慎之助選手やガンバ大阪の宇佐美貴史選手ら、ファンだと公言している選手も大勢います。

まるで奇跡のような話で本当にありがたいです。恋愛に関する曲も作ってきましたが、それよりも、自分のやる気を掘り起こしてくれる曲、自分に勇気を与えてくれる曲を作りたいという気持ちでやってきました。私自身、ちょっとしたことで落ち込んだり、自分に限界を感じたりする日々なので、「そんな時にどういう言葉をかけてもらったら前向きになれるか」を考えながら、これからも曲作りをしていきたいです。

――シンガー・leccaとしての今後の抱負は?

今は議員の仕事がメインです。「曲を作りたい」という衝動の源泉となる出来事は多々あるけれど、時間的な制約があって音楽活動がなかなかできず、ファンには申し訳なく思っています。でも、音楽は私の生業なりわいであり、ライフワークでもあります。自分の信じる社会を実現するための手段の一つだとも思っています。今回、3年ぶりぐらいに新曲を作ったのですが、曲を作れる時に作っておきたいというモチベーションはすごく高まっています。

音楽活動と議員活動はかけ離れていない

――シンガーであり、政治家であり、8歳と4歳の子供を持つ母親でもあります。スイッチの切り替えはうまくできていますか。

できていないですね(笑)。そもそも、議員であることと母親であることは一つにつながっていると思っているんです。例えば、議員の仕事の最中に「子供が熱を出した」と連絡があれば、母親の私が保育園に迎えに行かなければいけません。母親であるという事実は24時間、途切れることはありませんから。ただ、leccaと議員の「斉藤れいな」は切り離さなければいけないと考えていました。ファンの中にも「斉藤れいなの前でleccaの名前を口にしてはいけない」などと思っている方がたくさんいらっしゃったようです。

でも、今年に入り、釜石と岐阜でライブをさせていただいて、「はたして音楽活動と政治活動はまったく趣の違うものなのか。切り離すべきものなのか」と考えるようになったんです。今は、私が議員として目指していることと、音楽活動を通じて目指していることは、そんなにかけ離れていないのではないのかというのが正直な気持ちです。

――政治の世界に入ったきっかけは?

8年ほど前から全国ツアーをやるようになって、ライブに来てくださったファンから直接お手紙をいただいたり、メールをいただいたりすることが増えました。人を励ますような歌詞が多いので、悩みを相談してくれるファンが大勢いるんです。例えば、体に障害があって仕事を長く続けられない人や、家庭環境に恵まれなかった人などがいて、悩みに答えたり、勇気づけるような曲を届けたりしてきました。ところが、そうした方々を取り巻く状況は、良くなるどころか年々悪化していて、悩みに苦しむ人もすごく増えている気がしたんです。「社会には音楽を届け続けるだけでは変えられないことがある。音楽以外にやらなければいけないことがある」と感じて、地方議会でやれることから始めたいという思いで、17年の都議選に立候補しました。

「子供第一」の生き方を

――ところで、「lecca」と「斉藤れいな」では、メイクをどう使い分けていますか。

leccaについて言えば、メイクや衣装もleccaとしての表現の一つです。女性アーティストとしての強さ、美しさを打ち出した方が、男性にも女性にも勇気を与えられるのは確かなので、そこを意識してプロのメイクアップ・アーティストさんにメイクをしていただいています。斉藤れいなの方は正直、メイクのことなんて考えていられないような仕事なので(笑)。ほぼ素に近いです。朝、子供を学校に送り出して、そのまま仕事に向かい、会議に出席したりすると、素に近いその時の写真が世に出てしまいます。leccaファンには少なからず衝撃だったようで、実際に「かっこいいleccaだけを見ていたかった」といったメッセージもいただきました。でも今は、かっこいいleccaだけを見せていくことはできません。子育てをしながら政治の世界で葛藤している姿も見ていただこうと思っています。

――一人の女性として、どんな生き方を目指しますか。

期待外れの答えかもしれませんが、「子供第一」で生きていきたいと思っています。いろんな方から「次の選挙には出るの?」「leccaの活動はどうするの?」と聞かれます。でも、今言えるのは「すべては子供ありき」ということ。正直に言って今は、子供を犠牲にしている状況が少なからず生じています。これから成長していくにつれて、子供たちが直面する問題もいろいろと出てくるだろうと想像しています。その時、母親の私は、子供の体調面や精神面をケアして、子供のやりたいことをどれだけやらせてあげられるかが大事だと思うんです。「子供第一」を守りながら、音楽活動や議員活動をやっていけたら一番いいですね。

(聞き手/読売新聞メディア局 田中昌義、写真も)

Lecca(れっか)

東京生まれ。2006年4⽉にメジャー・デビューミニ・アルバム『Dreamer』をリリース。同年8⽉にメジャー・デビュー・フルアルバム『URBAN PIRATES』をリリース。09年3⽉には⾃⾝初となるシングル曲「For You」をリリースし、同年のUSENリクエストチャートで年間ランキング第1位、レコチョククラブ・うたの年間ランキング第1位を獲得。12年4⽉、⾃⾝初の⽇本武道館公演を開催。11年の東⽇本⼤震災以降、復興⽀援活動の⼀環で、チャリティーソングへの参加、イベント出演などを⾏い、14年、岩⼿県釜⽯市の観光親善⼤使に任命された。16年1⽉にはデビュー10周年にして初のベストアルバム『BEST POSITIVE』をリリース。17年から東京都議会議員を務める。