人間関係に疲れた時は……「流されない女」の漫画7選~前編~

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(c)コナリミサト(秋田書店)2017

 日常生活では、会社の上司や友人などの理不尽な言動に振り回され、モヤモヤを感じることもしばしば。そんな時には、周りの人たちに流されず、マイペースでたくましく生きるヒロインを描いた漫画に力をもらえるはずです。コミックに詳しい編集者と書店員に、おすすめの作品をあげてもらいました。前編は、本とコミックの情報誌「ダ・ヴィンチ」編集部のコミック記事担当・有田奈央さん、後編は、女性のための書店「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」(東京・日比谷)の当山とうやま明日彩あずささんが、作品とその魅力を紹介します。

 有田さんは、4作品について推薦文を寄せてくれました。

新しい自分になるための「ラッキーアイテム」

なぎのおいとま」コナリミサト著(秋田書店)

 「空気は読むものじゃなくて 吸って吐くものだ」――

 主人公・凪の言葉に思わず何度もうなずいてしまったのは、きっと私だけではないはず。『凪のお暇』は、現代日本に暮らす女性が、一度や二度や三度はのみ込んできた、嫌なんだけど生きていくためには必要な(と思い込んでいた)アレコレから、トライ・アンド・エラーを重ねながら「お暇」していく、実に爽快な物語なのだ。

(c)コナリミサト(秋田書店)2017

 女性の生き方に多様性が生まれたとはわかっていても、それまでの固定観念がなくなったわけじゃない。他人は他人、自分は自分と割り切れない。生き苦しさの根っこにあったのは、意識しないうちに自分で作り上げてしまった常識。今を生きる私たちが抱きがちな悩みにぶち当たる凪の姿は、実にリアル! 

 会社では同僚女性にマウントを取られ、彼氏にはモラハラを受け、メンヘラ製造機男に引っかかってしまう……というふうに、明日は我が身と思わせるようなネタとストーリーに引き込まれ、感情移入してしまう。そしていつの間にか、わたしたちは凪の「これから」に夢を見るのだ。自分をがんじがらめにしていた常識を打ち捨てていく凪のように、自分も強くなりたいと。

 令和に元号が変わり、新しい時代がやってきた今だからこそ、新しい自分になるチャンス! 「凪のお暇」はそのきっかけをくれる、ラッキーアイテムなのだ。

「がんばる自分」への特効薬

「はぐちさん」くらっぺ著(祥伝社)

(C)くらっぺ/祥伝社フィールコミックス

 「流されない=自分をしっかり持つこと」だけではない。それを教えてくれるのが、このゆで卵のような形をした不思議な生き物の「はぐちさん」。

(C)くらっぺ/祥伝社フィールコミックス

 毎日毎日がんばって流されないように生きているけれど、こらえきれず流されてしまう瞬間は誰にだってやってくる。そんな時、はぐちさんは、理由など聞きもせず、ご飯を用意してくれたり、お風呂を沸かしてくれたり、まったく関係のない話題で気分転換させてくれたりするのだ。あなたはそのまんまでいい、とでもいうように。逃げ出したくなったり、心が折れそうになったり、弱っている時こそ、優しい見守りが「がんばる自分」への特効薬になる。

 「無理すると なんにでもなれんねん」「無理をしてあんなに大きくなったのはすごいですが そのせいで死んでしまった」「死んでしまったら とても切ないでしょう?

 はぐちさんの言葉は、もう一度自分らしくがんばろうと立ち上がるパワーをくれる。基本は4コママンガということもあり、短時間でさらっと読めるボリューム感は、支えが欲しいときにぴったりサイズ。「読むエナジードリンク」(と勝手に呼んでいます)の効き目、ぜひ試してみて。

自分を見つめなおしたいときに

「違国日記」ヤマシタトモコ著(祥伝社)

(C)ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

 流されなくなるための手段の一つに、日記をつけることがあるのかもしれない。

 ある日突然、一つ屋根の下に住むことになった、35歳小説家の叔母・槙生と、15歳女子中学生のめい・朝。朝の両親が交通事故で亡くなったことをきっかけに、二人は共同生活を送りはじめるが、それまで一度しか顔を合わせたことはなく、人付き合いが得意といえない二人はどこかぎこちない。ところが手探りながらも距離を縮め、互いのことを知っていくシーンのいたるところで、ハッとする言葉がちりばめられているのだ。

 「日記は 今 書きたいことを書けばいい 書きたくないことは書かなくていい ほんとうのことを書く必要もない」「たとえ二度と開かなくても いつか悲しくなったとき それがあなたの灯台になる

(C)ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

 簡単そうで難しい、「自分の本当の気持ちを知る」こと。他人に流されることよりも、本当に悲しいのは自分自身に流されることなのかもしれない。多忙な日々で自分をおろそかにしがちな方に、自己を見つめ直す大切さを教えてくれる一作。

かつて女の子だったあなたに読んでほしい

「さよならミニスカート」牧野あおい著(集英社)

さよならミニスカート・牧野あおい(集英社)

 全世界の女の子、かつて女の子だった大人の女性だけではなく、そのパートナーにも読んでほしい作品。THE少女マンガな絵柄のため、胸キュン恋愛ストーリーなのかな~と思ったあなた、すぐにHPを見ていただきたい。異例の編集長声明からわかるように、そのビジュアルに反して、描かれる内容は実に重く、考えさせられるものだ。

 主人公・高校1年生の仁那が身にまとうのはスラックススタイルの制服。そう、彼女はスカートを履くことをやめていたのだ。仁那はかつて人気アイドルとして活動をしており、ある日の握手会で男性ファンから刃物で切り付けられてしまう。その事件がきっかけで男性恐怖症に陥り、自分が「女子」であることすら嫌悪し、トラウマにおびえながら日常生活を送ることになる。

 「スカートは あんたらみたいな男のために 履いてんじゃねえよ」という仁那のセリフからわかるように、「女子であること」「かわいらしさは誰のものか」「無遠慮な性差別」と考えさせられるテーマではあるが、物語の軸は傷ついた少女が苦しみながらも成長していく王道展開! ミステリー仕立てのストーリーラインのため、しっかりとした読み応えながら鬱々うつうつしさは控えめ。仁那が意志を貫き、幸せな日々を取り戻すその日まで、応援していきたい。

◇ ◇ ◇

 雨の多いこの季節。「外出するのも面倒くさい…」そんな時に、ぜひ読んでみてはいかがでしょう。後編では、女性のための書店「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」の当山さんにおすすめを聞きます。

【有田さんのおすすめはこちら】

凪のお暇
はぐちさん
違国日記
さよならミニスカート(電子書籍)