蒼井優さん、竹内結子さん初共演、「長いお別れ」で“姉妹”体感

インタビュー

 認知症のため徐々に記憶を失っていく父親と家族の7年間の日々を描いた映画「長いお別れ」が、31日に全国公開されます。仕事も恋愛もうまくいかずに思い悩む妹の芙美と、アメリカでの暮らしになじめず、夫や息子との関係にも苦悩を抱える姉の麻里。厳格な父・昇平が認知症になったと母に告げられた二人が、思わぬ出来事の連続に戸惑いながらも家族の絆を深めていく姿を、ユーモアを込めて描いた作品です。姉妹役の蒼井優さんと竹内結子さんに、「家族」への思いなどについて聞きました。

姉の麻里が会話のリズム作る

――お二人は今回が初共演ですが、お互いの印象は?

竹内さん なんだか初めてという感じがするような、しないような……。お互いに出演作を見ていたせいかな。

蒼井さん 竹内さんの知り合いと私の知り合いが食事会を開いてくれたことがあって、その時にお会いしているんですよね。だから私は「どうなるんだろう」といった不安はなくて、安心して撮影に入ることができました。

竹内さん 私はもう、「(蒼井さんに)ついていきます!」って感じでした。役柄上でも実際の年齢でも、私の方がお姉さんなのですが、台本などを読んでいて、この作品は妹の芙美の方がしっかりしていると思いました。お父さんの面倒を見るのも、実質的なことは芙美がやってくれていて、姉の麻里は、たまにアメリカから戻ってきて、伝えたいことを言いたい放題話して、またアメリカに帰っていく(笑)。

――姉妹の会話のシーンの撮影中、中野量太監督から「姉の麻里さんがリズムを作ってほしい」と言われたそうですが。

竹内さん この姉妹の会話には独特のテンポがあるんです。女同士の姉妹の会話って、遠慮がないというか、結構きつく当たったりすることがあると思うんですけど、中野監督は、麻里と芙美にはもっとふんわりとしたやりとりを求めているなという印象を受けましたね。

――竹内さんが会話のリズムを作って、蒼井さんがついていくといった感じだったのですか。

蒼井さん ついていく気満々でした。竹内さんは、監督がおっしゃったことに飛び込んでいくスピードがすごく速いんです。私は「いきたいのにいけない」みたいになってしまうので。竹内さんが「いきます!」と言って飛び込んでくださるので、私はそれについていくだけでした。

竹内さん 優ちゃんの肝の据わったところが、まさに芙美そのもので頼もしい妹でした。お芝居をしていて、「うん、私たち、姉妹なんだな」という体感がありました。

父の「7年後」の姿に衝撃

――父・昇平役の山崎努さん、母・曜子役の松原智恵子さんらと演じた家族は、まるで本当の家族のような空気感がありました。どのようにして「家族」を作り上げていったのですか。

竹内さん 最初のリハーサルが大きかったと思います。7年前の父の誕生会と、7年後の父の誕生会という設定でそれぞれのリハーサルを行ったのですが、7年後のお父さんの変わりようがあまりにも衝撃的だったんです。もちろん、山崎さんのお芝居があってこそでしたが、「ああ、私たちはこういうことに向き合うのか」と。そこに至るまでの7年間、家族がどんな思いで過ごしてきたのか、とても想像しやすくなりました。

蒼井さん 松原さんと竹内さんのおかげで、認知症の夫・父と向き合う「女家族」のイメージが作りやすかった。私は、お父さん役の山崎さんと絡むシーンが多かったのですが、山崎さんは、カメラには映らないようなちょっとしたことで、アドリブのお芝居を仕掛けてこられるんですよ。たとえば、芙美とお父さんが二人で歩いて家に帰るシーンで、本番前のテストでは、左の方向に曲がっていったのに、本番では、右の方向に曲がるエネルギーを私に送ってくるんです(笑)。でも、そういったことで山崎さんとは親子の関係を確かめていけたと思います。

©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

――「家族とは何か」を考えさせられる作品です。お二人にとって、「理想の家族像」とは?

竹内さん 私自身、麻里のような経験はしていないので、この作品を通じて、家族に対する見方が変わるのかなと思ったんです。今思うのは、理想の家族像というのは一つではないということですかね。今回の父のように、時間の経過とともに親が変化していくとしたら、ショックを受けることもあるだろうけれど、悲観的にならずに、少しずつ「お別れ」をしているのだと考えると、受け入れ難くはないのかなと。家族って変わっていくものだから、家族が変わるのに伴って自分も変わっていけたら理想的かなと感じました。

蒼井さん 家族って何なのか、私にはまだよく分からないけれど、(出演映画「家族はつらいよ」の)山田洋次監督は「家族って、本当に面倒くさいけれど、まあ悪くない」っておっしゃるんです。その考え方がすごく好きで。完璧な家族なんてないのだから、いろんなことをちょっとずつあきらめながら、家族の中で面白いところ、いとおしいところを見つけていけばいいのかなと思います。それに家族って、並んで一緒に歩いているようなものだから、意外とお互いに向き合って見ていない気がするんです。私は恥ずかしいから、記念日じゃないと思っていることを家族に言えないから、記念日にはちゃんと言葉を伝えられたらいいかなと。

――今年の母の日には、お母さんに言葉を伝えましたか。

蒼井さん 「ありがとう」と言いました。

竹内さん いいな、それ。私も心がけよう。母の日には、メッセージカードも付けずに、よく眠れるパジャマを贈って「以上!」だったから(笑)。

蒼井さん うちの両親は「やっぱり言葉がほしい」ですって。でも、日常では恥ずかしくて言えない。

無理を自分に課さない

――今回の作品は、食卓などに出される料理も重要な要素で、おいしそうに見える演出が随所に施されていました。お二人は、料理へのこだわりは?

竹内さん 私が幼かった頃、竹内家では、どんな食事にも必ずみそ汁が付いていました。カレーライスにもみそ汁、鍋物にもみそ汁。

蒼井さん 毎日おみそ汁を取るのは、体にいいんですってね。

竹内さん おかげで健康に育ちました(笑)。

――今もそうなのですか?

竹内さん 今は違います。鍋物の時はジャスト鍋物だけで勝負しています(笑)。

蒼井さん 私は、両親が大阪出身なのですが、小さい頃、土曜日はだいたい家でたこ焼きパーティーをしていました。学校が早く終わって家に帰ると、同じマンションに住んでいる同級生の親御さんが先に来ていて、同級生たちもランドセルを背負ったまま集まって、みんなでたこ焼きを食べるんです。こだわりと言えば、たこ焼きやお好み焼きの生地には少しだけ牛乳を入れること。ちょっと味がまろやかになるんです。それから我が家では、生地は前日に作っておくのが鉄則。当日に「たこ焼き食べたい」と言っても、絶対に作ってもらえなかった(笑)。

――元号が令和に変わりました。これから取り組んでみたいことはありますか?

竹内さん 令和の時代は「無理しない」を心掛けたいです。よく新年のインタビューで「今年、チャレンジしたいことは?」と聞かれて、「バンジージャンプをやってみたい」と答えたりするわけです。でも、実際にバンジーを体験した友人から話を聞いて、「これはやっちゃいけないやつだ」と分かって、言ったことを後悔するんです。無理そうなことは自分に課さないようにしたいですね。

蒼井さん ボーっとしたまま、5月1日に令和を迎え、今もボーっと令和の時代を生きています(笑)。思うのは、30歳を超えて、もうちゃんとした大人になったのだから、若い子たちに変なものを残したくないということ。私は映画界にいるから、将来、若い役者さんに「先輩たちが頑張らなかったから、今の私たちはこんなふうになってしまったんだよね」なんて言われないようにしたいですね。
(聞き手:読売新聞メディア局 田中昌義、撮影:金井尭子)

蒼井 優(あおい・ゆう)
俳優

 1985年生まれ、福岡県出身。2001年に『リリイ・シュシュのすべて』のヒロイン役で映画デビュー。『フラガール』(06年)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞したほか、『おとうと』(10年)と『東京家族』(13年)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。映画公開待機作に『宮本から君へ』(19年秋公開予定)、『ロマンスドール』(公開予定)がある。

竹内 結子(たけうち・ゆうこ)
俳優

 1980年生まれ、埼玉県出身。96年に女優デビュー。映画『黄泉がえり』(2003年)、『いま、会いにゆきます』(04年)、『春の雪』(05年)、『サイドカーに犬』(07年)では数々の映画賞で主演女優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『ストロベリーナイト』(13年)、『クリーピー 偽りの隣人』(16年)、『旅猫リポート』(18年)、『コンフィデンスマンJP』(19年)など。映画『決算!忠臣蔵』(19年11月22日公開)が公開待機中。

長いお別れ』 
5月31日(金)全国ロードショー

監督:中野量太
出演:蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山﨑努、北村有起哉、中村倫也、杉田雷麟、蒲田優惟人ほか
脚本:中野量太、大野敏哉
原作:中島京子『長いお別れ』(文春文庫刊)
主題歌:優河「めぐる」
企画:アスミック・エース、Hara Office
配給・制作:アスミック・エース