杏さん「子どもたちのために夢のある作品を」

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 少女が冒険を通じて成長していく姿を描いたアニメ映画「バースデー・ワンダーランド」(原恵一監督)が、4月26日に公開されます。この映画で、主人公のアカネと冒険の旅を共にする叔母・チィの声を演じたのが、女優の杏さんです。女優として、母親として、どんな思いで役に臨んだのでしょうか。作品や、仕事と子育ての両立について話を聞きました。

2度目の出演で感じた原監督作品の魅力

――原恵一監督は、アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001年)などを手がけたことで知られています。杏さんは、「百日紅さるすべり〜Miss HOKUSAI〜」(2015年)以来、2度目の原監督作品への出演となりました。今回、オファーがあった時は、どんな気持ちでしたか。

 作品の内容がすてきだなと思ったのはもちろんですが、原監督と以前、一度お仕事をした上で、また私を選んでくださったというのは、何物にも代えがたいうれしさがありました。原監督の作品は、「クレヨンしんちゃん」も含めて、作品ごとに時代や世界観、絵柄が全く違っています。それぞれに異なる世界観を創り出す原監督や、アニメの世界は本当にすごいと改めて感じました。

――「バースデー・ワンダーランド」は、誕生日の前日に、アカネが救世主として異世界「幸せ色のワンダーランド」に乗り込む冒険劇です。アカネの成長を見守る叔母・チィは、杏さんを想定して「あてがき」されたキャラクターだそうですね。

 アニメって、自分と全く外見が違うものに声をあてられるのが魅力だと思います。でも、チィは「もしかしたら、実写化しても自分がやれるかも……」と思うくらい、年代や背格好が近かったので、普通のお芝居をするような気持ちで挑みました。役作りもそんなに意識せず、現場で監督の要望を聞きながら、その場で調整していくという感じでした。

――原監督からはどんな話があったのですか。

 チィは出番もそうですが、セリフがかなり多いんです。たぶん一番多いんじゃないかな。「(セリフの)分量が多いから大変だとは思うけど、すごく重要な立ち位置だから」と、おっしゃっていただきました。

――「それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星」(2018年)のクルン役など、声優の仕事も増えてきていますね。声優の経験を積むなかで、変わってきたことはありますか。

 やればやるほど難しいなという部分がまだまだ大きいですね。ドラマや映画と比べて、アフレコはすごくコンパクトで、1日、2日で終わっちゃう。そのスピード感は、作品に一気に入れる部分もある一方、少し寂しいなとも思います。でも毎回、とても楽しいので、本職の方がたくさんいらっしゃる中で声高に言うのはおこがましいですが、これからも声優の仕事をやっていきたいなと思っています。

――劇中で描かれている雄大な自然などの映像美に見入ってしまいました。

 アフレコの時はまだを作っている段階なので、モノクロの場面もあるような状態。けれど、完成品を見てみると、すごく色鮮やかで、音も大きく圧倒されました。その色や音が、作品の大きな魅力だと思っています。やはりこれは、劇場で味わっていただきたいですね。

――大人も子どもも楽しめる作品ですね。それぞれへのおすすめポイントは?

 見たこともない景色や、「こんなことができたらいいな」という魔法みたいな出来事があふれている作品です。そういうところは、お子さんだけでなく、大人も童心に帰って見ることができるのかなあ。あとは、やはりアカネとチィという、大人と子どもの両方がいるので、大人はチィに、子どもはアカネに、それぞれ感情移入して楽しむことができると思います。

――「魔法みたいな出来事」といえば、消極的な性格だったアカネが「前のめりのいかり」という特別な力を持つネックレスによって、なにかに挑戦する場面が何度かありました。作中で、「こんなことができたらいいな」「これが欲しいな」と思ったことはありましたか。

 最終的には、ネックレスの力ではなく、アカネ本人の心で前に進んだんですね。私は、水面に浮かんだ花についている滴をかぶると、水の中で息ができるようになるシーンがすごくうらやましかったです(笑)。

新しいことに臆さず飛び込んで

――性格などの面でも、チィと似ているなあと思う部分はありますか。

 共通点ではないかもしれませんが、新しいことに臆さず飛び込んでいけるというのは、目指したい女性像ではあります。

――少女の成長を描いた物語ですが、ご自身がお母さんの目線で見ていていかがでしたか。

 異世界に飛ばされる物語って、子どもばかりだったり、子ども一人だけだったりするストーリーが多く、チィのような「保護者付き」という作品を見たことがありませんでした。アカネとチィは親戚だから、近からず遠からず、でも友達でもない――そんな関係がすごく面白いなと思っています。

 チィは自由奔放にしているけれど、やはり心の中では常に「何かあったらアカネを守ろう」と、親御さんに対する責任を大人として当たり前に感じていた部分はあるんだろうなあ、と思いました。

――チィのような大人は、意外と子どもの周りにいないなと感じます。1歳と2歳の3人のお子さんを育てている杏さんが、母親の立場で見たときに、チィのような大人は、子どもにとってどんな存在なのでしょうか。

 親以外で何かを話せたり、一緒に過ごせたりする存在って、すごくすてきだなあと、アカネとチィを見ていて思いました。

――映画の冒頭で、アカネが友人とのSNSでのトラブルに悩むシーンもありました。きっと、子どもたちも家族には言いづらい悩みを抱えているのでしょうね。

 「そっか、今は小学生でも携帯電話を持ってやりとりしているんだな」って改めて気づかされました。それが当たり前のように描かれているので、これは子どもたちにとって、わりと自然な風景なんでしょうね。

 だからこそ、親とは違う大人とのふれあいの時間というのは、親としてはあった方がいいなと思います。親に言えないことも、もしかしたらほかの大人には言えるかもしれないし。そんな存在は大切にしたいですね。

――好奇心旺盛なチィですが、杏さんも読書好き、歴史好きで、多趣味な印象があります。仕事と趣味、子育てのバランスはどのようにとっていますか。

 毎日、本当に悩みながら、という感じです。子育てで一日があっという間に過ぎてしまいます。自分のやりたいことや自分のペースというのは最優先でなくなるので、毎日悩んでいるって感じですね。

作り手として作品に関わりたい

――今後、挑戦してみたいことを教えてください。

 家事・育児をしなければいけないという前提はあるけれど、この映画のような夢のある作品は、子どもたちのためにも残したいと思いますし、作り手として関わっていきたいという思いはあります。今後もいい作品と出会い、携わっていきたいですね。

(取材・文/メディア局編集部・安藤光里、写真/金井尭子)

(あん)
女優

 1986年、東京都出身。15歳からモデルとして活動、2007年に女優デビュー。代表作に、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13~14年)、「花咲舞が黙ってない」シリーズ(14、15年)など。現在、TBS「世界遺産」にて、ナレーションを務める。原監督作「百日紅~Miss HOKUSAI~」(15年)では、アニメ声優初挑戦にして主人公のお栄を演じた。

バースデー・ワンダーランド」4月26日(金)より全国ロードショー

【ストーリー】 誕生日の前日、自分に自信がないアカネの目の前に突然現れたのは、謎めいた大錬金術師ヒポクラテスとその弟子のピポ――「私たちの世界を救って欲しいのです!」と必死で請う2人。そしてアカネが無理やり連れて行かれた世界は――骨董屋の地下室の扉の先から繋がっていた<幸せな色に満ちたワンダーランド>! ふしぎな動物や人の住む世界から、色が消えてしまう……その世界の救世主にされたアカネが大冒険の果てに下した、人生を変える決断とは?
 一生に一度きりの、スペシャルでワンダーな誕生日が始まる—-!

▼公開情報
┃タイトル:『バースデー・ワンダーランド』
┃公開表記:4月26日(金) 全国ロードショー
┃配給表記:ワーナー・ブラザース映画
┃著作表記:(C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

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