「サムライマラソン」出演 小関裕太さん「恋に破れて戦いに…」

インタビュー

 日本初のマラソン大会といわれる「安政遠足あんせいとおあし」を描いた映画「サムライマラソン」が22日(金)、全国公開されます。舞台は幕末。安中藩(現・群馬県安中市)の藩主が、藩士を鍛えるために遠足を開催。すると、藩の取りつぶしを狙う刺客が藩士不在の城に襲いかかり、遠足はいつのまにか、藩の存亡をかけた戦いへと変貌していきます。幕府から刺客として送り込まれる若い侍・三郎を演じた小関裕太さんに、本格時代劇への思いや撮影エピソードを聞きました。

―――小関さんは現代もののイメージがありますが、本格時代劇へのオファーがあったときの感想を聞かせてください。

 僕は歴史が大好きなんです。きっかけは中学2年の時に出会った先生で、教えていただいたのが幕末の歴史でした。僕の大好物の時代を描いた作品に出演できるなんて、すごく楽しみだと思いました。

―――ハリウッドなど世界で活躍しているバーナード・ローズ監督との撮影はいかがでしたか。

 ローズ監督はイギリスの方なんですが、昔の日本を描くときの着眼点が面白かった。日本人の多くは侍の所作や言葉遣い、刀のさばき方などの様式美にかっこよさを感じますよね。例えば、敵と斬り合って、刀をさやに「カチャ」と収めると同時に、相手がバサッと倒れる……みたいな。この映画には、「カチャ」の瞬間がまったくないんです。僕が想像するサムライのイケてるシーンはほとんどなくて、代わりに監督のリスペクトする「武士道」の根源的なものが描かれていると思います。

(c)“SAMURAI MARATHON 1855”FILM Partners

―――小関さんは若き侍、三郎を演じました。監督から三郎役についてアドバイスはありましたか。

 撮影前に監督とディスカッションしたんです。三郎の人物設定は「家柄が良くて、純粋な青年」というものでした。その純粋な青年がなぜ、刺客になったのか。映画では描かれませんが、説得力のある理由を考えるように監督に言われました。監督にある考えを話すと、「理由として薄いな」と言われて。それから毎日、考えていました。ときには、刺客の頭目・隼役の木幡竜さんや、助監督も交えて話し合いました。「この映画に前日たんがあったとしたら」をテーマにアドリブで演じたこともあります。それで、たどり着いたのが、「三郎は命がけの恋に破れて、戦いに身を投じた」というものでした。

―――失恋のせいで刺客になった?

 本気で好きになった人に振られて、自分の何もかもを壊してしまいたくなった。家も身分も捨てて、荒くれどもの仲間になって、命を張ってでも自分を変えたいと思ったんです。

 撮影が始まったら、今度は「自由にやって」と言われました。選択肢が多すぎて迷ってしまって。派手に動くのがいいのか、静かに動くのがいいのか。誰も教えてくれないし、何をやっても、それが正解かどうかわかりません。例えば、初めての戦闘シーン。三郎は剣術にもけていて、自信家でもあった。でも、実際に武器を手にして、人の命を奪う段になったら震えが止まらなくて躊躇ちゅうちょしてしまう――など、一つ一つ手探りの状態で演技しました。「自由」の中の「不自由」をひしひしと感じ、そこが難しくもあり、楽しくもありました。

山の中でじっくりと作品と向き合う

―――乗馬のシーンもありましたが、初めてですか。

 乗馬は初めてでした。この映画のために、乗馬や殺陣を1か月半くらい練習しました。馬は下手な乗り方すると、お尻の皮が破れて血だらけになるんです。慣れるまで、痛かったです。ちょうど、「春待つ僕ら」というバスケットボールを題材にした映画の準備期間と重なっていたので、夜中に公園でバスケを1時間くらい練習して、そのあと木刀を振っていました。

「この映画で練習してから、乗馬が趣味になりました」

―――「春待つ僕ら」はアメリカ帰りの天才バスケット選手の役。ヘアスタイルも金髪で、時代劇とは真逆の青春映画でした。気持ちの切り替えが難しかったのでは。

 そうでもなかったです。「サムライマラソン」は山形県の山の中に籠もりっきりで撮影したので、じっくりと作品に向き合うことができました。早朝に集合して撮影がスタートすると、ほとんどリハーサルもなくて。テストからカメラを回して撮り続け、1日ワンシーン、ワンカットの日もありました。撮影を終えたら宿に帰って、その日を振り返って反省して考え抜く。翌朝、新たな気持ちで撮影にまた臨む。そんな毎日を繰り返していました。

―――通常の日本映画に比べると、撮影の仕方に余裕を感じます。

 準備に半年をかけ、撮影期間は2か月くらいでした。日本の映画の撮り方と、スタンスが違うんです。例えば、「かつらをつけて衣装を着てメイクをしたら、撮影が終わるまでスタッフは役者に近づいてはいけない」というルールがありました。メイク直しもないし、スタッフはひと言も発することができない。監督と役者が向き合って、淡々と撮影していくんです。カメラも監督が回していました。

―――ワダ・エミさんの衣装も印象的でした。

 ワダさんの衣装はちょっととがった感じでしたね。革製の素材がすごくよくて、刺しゅうも丁寧に施されています。衣装さんが指を痛めながら、苦労して刺しゅうしてくれたんです。役ごとにワダさんの手描きのイラストがあって、三郎の衣装のイラストは僕の顔でした。

「この時代に生まれてよかった」と思える瞬間に出会いたい

―――今年24歳、年男だと聞きました。2019年の抱負は。

 「猪突ちょとつ猛進」ですね。12歳の時、NHK教育テレビの「天才てれびくんMAX」に出演して、「僕はイノシシ年、だから年男! 猪突猛進! 僕は前進! がんばりま~す」って言ったんです。12年たって、同じ目標を掲げたいです。それから、もっと発言に説得力がある、言葉に重みのある人になりたいですね。

―――ブログで2025年の大阪万博を語っていましたが、熱い思いがすごく伝わりました。

 1970年の大阪万博の熱狂に心ひかれるんです。SNSもネットもない時代で、限られた情報の中で、日本中が一つになって盛り上がっていた。日本だけじゃなくて、全世界の人が興味を持って注目していた。それって、すごいことだと思うんです。2025年にも、この時にしか表現できないエンターテインメントがあるはず。それは、AI(人工知能)かもしれないし、もっと新しい技術かもしれない。25年は僕が30歳の年なんで、もっとステキな万博が見たいし、「この時代に生まれてよかった」と思えるような瞬間に出会いたいです。

(聞き手:メディア局編集部・後藤裕子、撮影:金井尭子)

【映画情報】

「サムライマラソン」
 行きはマラソン、帰りはいくさ

 時は幕末。迫る外国の脅威に備え、安中藩主・板倉勝明は藩士の心身鍛錬を目的に、十五里(約58キロメートル)の山道を走る大会を開催することに。優勝者の望みは何でもかなえられると聞き、それぞれの願いを胸に侍たちは遠足に臨む。だが、遠足を謀反の動きと見なした幕府の大老は、藩主暗殺の刺客団を送り込む。ただ一人、藩の危機を知った藩士・唐沢甚内は、暗殺を阻止するために走り出す─―。

監督:バーナード・ローズ
出演:佐藤健、小松菜奈、森山未來、染谷将太
青木崇高、木幡竜、小関裕太、深水元基、カトウシンスケ、岩永ジョーイ、若林瑠海/竹中直人
筒井真理子、門脇麦、阿部純子、奈緒、中川大志 and ダニー・ヒューストン
豊川悦司、長谷川博己
配給:ギャガ(c)“SAMURAI MARATHON 1855”FILM Partners
公式サイト
2月22日(金)から全国で公開

小関裕太(こせき・ゆうた)
俳優

 NHK『天才てれびくんMAX』(2006~08年)のテレビ戦士として活躍するなど、子役として俳優活動をスタートさせる。以降、舞台は『ミュージカル・テニスの王子様』(11~12年)、『FROGS』(13年)、『わたしは真悟』(17)など。テレビドラマは『ビター・ブラッド』(14年)、『ごめんね青春!』(14年)、『ホテルコンシェルジュ』(15年)、『恋がヘタでも生きてます』(17年)、『特命刑事 カクホの女』(18)、『ゼロ 一獲千金ゲーム』(18年)、『半分、青い。』(18年)など。映画は『Drawing Days』(15年)、『ドロメ』(16年)、『覆面系ノイズ』(17年)、『ちょっとまて野球部!』(18年)、『曇天に笑う』(18年)、『わたしに××しなさい!』(18年)、『春待つ僕ら』(18年)などで活躍。