俳優の斎藤工さん 壮大な悩みと、ミニマムな悩みのはざまで

インタビュー

 読売新聞のCMに出演する俳優の斎藤工さん(37)にCM撮りの当日、大手小町の小坂佳子編集長がインタビューしました。俳優業だけでなく、映画監督としても活躍する斎藤さん。CM出演の意気込みとともに、映画人としての悩みも話してくれました。斎藤さんの動画とともにお届けします。

新聞で自分の琴線に触れるものに近づく

――今日の撮影はいかがでしたか。

 (撮影にあたっては)ずっと新聞を広げている姿で過ごしていました。新聞は、映画のスクリーンに似ている。新聞紙面に詰まっていることは、他人事のようでいて、自分に向かっているものが書かれた大きなキャンパスかもしれない。情報があふれた時代だからこそ、自分の琴線に触れるものは何かと、情報に自ら近づいていくことが新聞を読むことじゃないか、と思いました。

――どんなニュースに関心がありますか。

 僕の場合は、スポーツの現在進行形のものに目が行きます。勝敗がわかっていても、人間ドラマが描かれている記事が多いから、読みたくなってしまう。最近はラグビーの記事にも関心があります。新聞って、あまり関心がなかったジャンルの記事でも、何か心にひっかかるなあと思うものに出会えるのが魅力。何かの値上げの記事でも、農作物の記事でも、景色やニオイがイメージできる瞬間があります。もちろん人によって違うけど、心の琴線に触れるということは、そこに「自分」を発見するんです。

自国の現実を捉え、映画・ドラマに

――なるほど。映画作りもされていますが、新聞を読むことは、映画作りにも関係がありますか。
 世界の映画監督たち、カンヌやベネチア映画祭に出てくるような世界的なクリエーターたちが何を描いているかというと、自分の国でいま起きていること、自分の半径数メートル以内で起きている世界の真実を、映画の世界に落とし込んでいるんです。(是枝裕和監督の)「万引き家族」の(カンヌ国際映画祭での)受賞もそうだと思うんですけど。いま自分の住んでいる国で何が起きているかということをしっかりと、捉える。捉えることができると、この先どうなっていくかということも、自分なりに見えてくる。ニュースの中には、目を覆いたくなるような凄惨せいさんなものもあります。でも、それを映画やドラマにすることで、だれかの救いになることもあるだろう。それが僕らの責務の一つだと思います。

映画人としての悩み 一人の男性としての悩み

――大手小町にはお悩み相談というコーナーがあるのですが、斎藤さんは何か悩んでいることはありますか?

 悩みですか。壮大なものと、ミニマムなもの、どちらでしょうか。

――では、それぞれに一つずつ。

 壮大な方は、(話すと)敵を作ることが多いんですが……。僕が監督をした長編映画「blank13」が昨年、劇場公開されて商業展開していきました。それで痛感したんですけれども、監督という職業はまったく不憫ふびん。食べていけないんです。昨年、インディーズ映画「カメラを止めるな!」がヒットしました。役者さん、監督さんに還元されるような良い前例であってほしいと思うんですけど、現実には、日本の今までの謎なシステムに吸収されてしまっています。僕は、映画作りはもっと欧米のように組合を作ったりしないと、この職業にあこがれる若い世代が、どんどん減ってしまうと思うくらい。

――ミニマムなものでは?

 こちらはちょっと情けないんですけどね……。僕は仕事で(衣装が用意されることが多くて)、自前の靴下をはく時間が意外と少ないんです。トータルすると1日1時間もはかない。夜、家に帰って(靴下を脱いだら)そのまま洗濯機に突っ込めばいいんでしょうけれど、つい連投してしまうんです。洗うタイミングがわからなくって。もちろん、湿度の高い時期はいろんなもの宿っちゃうんで、さすがに僕も、気味悪いと思って洗うんですけど。

――あはは。では、「大手小町」で読者の意見を聞いてみましょうか。

 まあ、昔はパンツもひっくり返して、はいていましたからね。本当に。

自分のテリトリーから出る機会が必要

――もし1か月休暇がとれたら何をしますか?

 僕は海外に行きたいです。行ったことない国が多いので。最近気づいたんですけど、小学校のときの夏休みって、長かったじゃないですか。それが、大人になるにつれ、休みが短く感じられるようになって、時間の加速度の恐怖とたたかっている。あれは、未知のものが多かったから。自分のテリトリーから出て、未知のところに身を置くと、加速を軽減できるんじゃないかなと信じています。映画をみるというのも、そうなんです。一瞬のように無駄にする2時間にしたくないという思いで、だれかの疑似体験をしてブレーキをかけたいんだと思うんです。海外行くたびに思うんですけど、夏休みのころみたいだなって。

――今日は、貴重なお話をありがとうございました。

 斎藤工(さいとう・たくみ) 俳優、映画監督。1981年、東京生まれ。2001年にモデル活動を経て俳優デビュー。以降、「団地」(監督・阪本順治/2016年)、「去年の冬、きみと別れ」(監督・瀧本智行/2018年)、「のみとり侍」(監督・鶴橋康夫/2018年)や「臨床犯罪学者 火村英生の推理」(NTV/主演/2016年)、連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK/2018年)などの数多くの映画、TVドラマに出演。公開待機作に日仏シンガポール合作映画「家族のレシピ」(主演/監督・エリック・クー)、「麻雀放浪記2020」(主演/監督・白石和彌)、「MANRIKI」(企画、プロデュース、主演/監督・清水康彦)など。昨年公開の初長編監督作「blank13」は国内外の映画祭で8冠を獲得、高評価を得た。白黒写真家としても活動しており、2018年パリのルーブル美術館にて展示された白黒写真が銅賞を受賞。被災地や劇場体験が難しい地域や途上国の子供たちに映画を届ける移動映画館プロジェクト「cinēma bird」主宰や、権利フリーの映画「映画の妖精フィルとムー」の企画・ストーリー原案・脚本・キャラクター命名・声の出演で製作に携わるなど、活動は多岐にわたる。